訪問看護の 運営指導チェックリスト|厚労省マニュアルの 確認項目21と、 医療保険で 2026年6月に 増えた 確認点【Excel無料】

Summary
運営指導で行政が見る項目は、厚労省の運営指導マニュアルで決まっています。訪問看護の確認項目21と確認文書を一覧にし、頻度・通知・対象期間、監査に切り替わる4つの場合、医療保険の個別指導の選ばれ方と指導後の措置・自主返還、不正請求の例、2026年6月に運営基準に加わった条文まで、一次資料で整理しました。
目次9項目
運営指導で行政が見る項目は、あらかじめ決まっています。
厚生労働省の「介護保険施設等運営指導マニュアル」(令和4年3月策定・令和6年7月改訂)は、サービスの種類ごとに、行政が確かめる「確認項目」と、そのために見る「確認文書」を別添で示しています。訪問看護は21項目です。マニュアルによれば、確認項目以外の項目は特段の事情がない限り確認せず、確認文書以外の文書は原則として求めません。
ですから、チェックリストを自作する必要はありません。国が示した一覧を、そのまま自己点検に使えば足ります。
このページでは、21項目を「見られること」と「そろえておく書類」に分けて一覧にしました。あわせて、医療保険(訪問看護療養費)の運営基準に2026年6月に加わった確認点も載せています。同じ内容を記入式にしたExcelの自己点検表を、運営指導セルフチェック表として無料で配布しています(登録は不要です)。
運営指導の基本: いつ、どの期間の、何を見られるか
運営指導(以前の実地指導)の進め方は、マニュアルに次のように書かれています。
| 項目 | マニュアルの定め |
|---|---|
| 頻度 | 原則として、指定の有効期間(6年)内に少なくとも1回以上。地域の状況や必要に応じて回数を増やすこともできる(毎年次、新規指定時、更新時、報酬改定時など) |
| 通知 | 実施予定日のおおむね1月以上前までに通知する。通知には、根拠規定と目的、日時と場所、担当者、事業所側の出席者、準備すべき書類、当日の進め方が書かれる |
| 見る期間 | 運営指導を行う年度の前年度から直近(おおむね1月程度前まで)の実績 |
| 書類 | 基本は原本を想定。ただし、写しなどの二次資料でも差し支えない |
| 集団指導 | 運営指導とは別に、毎年度1回以上。動画配信などの方法もある |
「6年に1回」は最低限の回数です。新規指定のときや報酬改定のあとに来ることもあります。
事前の通知がない場合もあります。緊急時など、すぐに状況を確かめる必要があるときは、開始時に文書で通知して運営指導を行えます。市町村が高齢者虐待を認めた場合や、虐待などで利用者の生命・身体に危害が及んでいる疑いがある場合は、運営指導ではなく監査(立入検査等)になり、事前の通告はありません。
運営指導は、次の3つの指導から成ります。
| 指導 | 何を見るか | 方法 |
|---|---|---|
| 介護サービスの実施状況指導 | 個別サービスの質(下の表①の7項目) | 実地で確認する |
| 最低基準等運営体制指導 | 質を確保するための体制(下の表②の14項目) | 現場に行かなくても確認できる部分は、オンライン会議システムなどでも行える |
| 報酬請求指導 | 届け出た各種加算の算定と請求の状況 | 加算の算定要件にかかる文書などで確認する |
チェックリスト① 個別サービスの質(7項目)
条番号は「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)のものです。第8・11・13・16・19条と第30〜37条の2は、訪問介護の規定を第74条で訪問看護に準用しています。
| 確認項目(条) | 見られること | そろえておく書類 |
|---|---|---|
| 内容及び手続の説明及び同意(第8条) | 利用申込者または家族に説明し、同意を得ているか。重要事項説明書の内容に不備はないか | 重要事項説明書(同意を得たことが分かるもの)、利用契約書 |
| 心身の状況等の把握(第13条) | サービス担当者会議などに参加し、利用者の心身の状況の把握に努めているか | サービス担当者会議の記録 |
| 居宅介護支援事業者等との連携(第64条) | サービス担当者会議などを通じて、居宅介護支援事業者などと密接に連携しているか | サービス担当者会議の記録 |
| 居宅サービス計画に沿ったサービスの提供(第16条) | 居宅サービス計画(ケアプラン)に沿って提供しているか | 居宅サービス計画、訪問看護計画(同意を得たことが分かるもの) |
| サービスの提供の記録(第19条) | 提供日と内容、利用者に代わって支払を受ける費用の額などを記載しているか。提供した具体的なサービス内容を記録しているか | 居宅サービス計画、サービス提供記録 |
| 指定訪問看護の具体的取扱方針(第68条) | 緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等をしていないか。行う場合は切迫性・非代替性・一時性の3要件をすべて満たしているか。態様と時間、そのときの心身の状況、緊急やむを得ない理由を記録しているか | 身体的拘束等の記録(ある場合) |
| 訪問看護計画書及び訪問看護報告書の作成(第70条) | 利用者の希望、主治の医師の指示、心身の状況などを踏まえているか。療養上の目標と具体的な内容を書いているか。ケアプランに基づいているか。利用者・家族への説明、同意、交付をしているか。報告書を作成しているか | 主治の医師の指示とケアプランに基づく訪問看護計画(同意を得たことが分かるもの)、訪問看護報告書 |
チェックリスト② 体制(14項目)
| 確認項目(条) | 見られること | そろえておく書類 |
|---|---|---|
| 従業者の員数(第60条) | 員数は適切か。必要な資格を持っているか | 勤務体制一覧表・勤務実績表、タイムカードなどの勤怠記録、資格証の写し |
| 管理者(第61条) | 常勤専従か。他の職務と兼務している場合、兼務の体制は適切か | 雇用形態が分かるもの、勤務体制一覧表・勤務実績表、勤怠記録 |
| 受給資格等の確認(第11条) | 被保険者資格、要介護認定の有無、認定の有効期限を確かめているか | 介護保険番号や有効期限などを確かめた記録 |
| 利用料等の受領(第66条) | 利用者からの費用の受け取りは適切か。領収書を発行しているか | 請求書、領収書 |
| 緊急時等の対応(第72条) | 緊急時に速やかに主治の医師へ連絡し、指示を求めるなどの措置を講じているか | 運営規程、サービス提供記録 |
| 運営規程(第73条) | 8つの重要事項を定めているか(事業の目的と運営の方針/従業者の職種・員数・職務の内容/営業日と営業時間/訪問看護の内容と利用料などの額/通常の事業の実施地域/緊急時等の対応方法/虐待の防止のための措置/その他運営に関する重要事項) | 運営規程 |
| 勤務体制の確保等(第30条) | 事業所の従業者がサービスを提供しているか。研修の機会を確保しているか。セクハラ・パワハラによる就業環境の悪化を防ぐ方針を明確にしているか | 勤務体制一覧表・勤務実績表、雇用形態(常勤・非常勤)が分かるもの、研修の計画と実績、ハラスメント防止の方針 |
| 業務継続計画の策定等(第30条の2) | 感染症と非常災害の業務継続計画(BCP)を策定し、必要な措置を講じているか。周知・研修・訓練を定期的にしているか。定期的に見直しているか | 業務継続計画、研修の計画と実績、訓練の計画と実績 |
| 衛生管理等(第31条) | 感染症対策の委員会をおおむね6月に1回以上開き、結果を周知しているか。指針を整えているか。研修と訓練を定期的にしているか | 委員会の開催状況と結果、指針、研修・訓練の実施状況と結果 |
| 秘密保持等(第33条) | 個人情報の利用について、利用者と家族から同意を得ているか。退職者を含め、従業者が秘密の保持を誓約しているか | 個人情報の利用に関する同意書、従業者の秘密保持誓約書 |
| 広告(第34条) | 虚偽や誇大な広告になっていないか | パンフレット・チラシ、ウェブ広告 |
| 苦情処理(第36条) | 苦情の受付窓口を置くなどの措置を講じているか。苦情の内容などを記録し、保存しているか | 苦情の受付簿、苦情への対応記録 |
| 事故発生時の対応(第37条) | 市町村、家族、居宅介護支援事業者などに連絡しているか。事故の状況と採った処置を記録しているか。賠償すべき事故は速やかに賠償しているか | 連絡の状況が分かるもの、処置の記録、損害賠償の実施状況が分かるもの |
| 虐待の防止(第37条の2) | 委員会を定期的に開いて結果を看護師等に周知しているか。指針を整えているか。研修を定期的にしているか。これらを実施する担当者を置いているか | 委員会の開催状況と結果、指針、研修の計画と実績、担当者を置いていることが分かるもの |
チェックリスト③ 報酬請求指導: 加算と減算
報酬請求指導は、届け出た加算の算定要件を満たしているかを、要件にかかる文書で確かめる指導です。
ここには注意点があります。2024年7月の改訂で、マニュアルの別添2「各種加算等自己点検シート」と別添3「各種加算・減算適用要件等一覧」が削除されました。いまの運営指導マニュアルには、加算を点検するための表が付いていません。加算は、告示と通知の算定要件に照らして、事業所が自分で点検することになります。
編集部では、次の3点を自己点検の対象にしています(別添の確認項目ではなく、告示に基づいて編集部が加えたものです)。
| 点検すること | 手元に置く書類 |
|---|---|
| 届け出ている加算(緊急時訪問看護加算、特別管理加算、看護体制強化加算、サービス提供体制強化加算など)の算定要件を満たす記録と体制があるか。人員や実績が変わったときに変更の届出をしているか | 届出の控え、各加算の要件を示す記録 |
| 介護職員等処遇改善加算(2026年6月サービス提供分から訪問看護も対象)の計画書を作り、全職員に周知して届け出ているか。加算額以上の賃金改善をして記録しているか | 処遇改善計画書、賃金改善の実績が分かる給与台帳など |
| 同一建物の利用者への訪問の減算を正しく適用しているか。業務継続計画未策定減算・高齢者虐待防止措置未実施減算に当たっていないか | 利用者の居住建物の一覧、業務継続計画と虐待防止の各文書 |
加算ごとの要件と根拠の条文は、加算辞典で確かめられます。介護職員等処遇改善加算、同一建物居住者に係る減算、業務継続計画未策定減算、高齢者虐待防止措置未実施減算も個別のページがあります。
請求で特に気をつけたいのは、時間です。マニュアルは不正請求の例として、サービスの所要時間で単位数が決まっている場合に、実際に提供した時間に対応する単位数を超えて請求することを挙げています。訪問看護費は所要時間で区分されているので、記録の訪問時間と請求の区分が合っているかは、運営指導の前に必ず突き合わせておきたい点です。
運営指導が監査に切り替わる4つの場合
マニュアルは、運営指導を中止してただちに監査に変える必要がある場合として、次の4つを挙げています。違反や不正が明らかな場合だけでなく、その「疑い」がある場合も含みます。
| 場合 | マニュアルの例 |
|---|---|
| 人員・設備・運営基準に従っていない状況が著しい、またはその疑い | 同じ誤りが数多く見られる、長期にわたる、確認文書の不備などで確認項目が確認できない、虚偽の報告や答弁が疑われる |
| 介護報酬の請求に不正、またはその疑い | 架空請求など、請求する根拠のない請求 |
| 不正の手段による指定、またはその疑い | 申請書の内容と指定後の実態が違う。勤務する予定のない人を勤務するように装って申請した |
| 高齢者虐待等、またはその疑い | 虐待や、適切な手続きを経ていない身体的拘束等 |
チェックリストを使う意味は、ここにあります。「確認文書の不備などで確認項目が確認できない」ことは、それ自体が監査に切り替わる理由として挙がっています。また、保存しておくべき文書が無いなど不明な点が見つかると、対象期間より前にさかのぼって確かめることになり、その場合は監査が必要だとマニュアルは書いています。
書類が足りないと気づいたときに、あとから作って間に合わせるのは逆効果です。虚偽の報告が疑われること自体が、監査に変わる理由になります。足りないものは足りないと把握し、いつまでにどう整えるかを決めておくほうが、指導の場では説明がつきます。
一方で、単なる誤りであれば扱いは違います。制度の理解不足による算定の誤りは不正請求とは区別され、自己点検をしたうえで過誤調整をするよう指導されます。運営指導で改善を求められる事項は、文書で根拠を示して指導されます。
医療保険(訪問看護療養費)の側で見られること
ここまでは介護保険の運営指導です。医療保険で訪問した分は、別の仕組みの指導の対象になります。
医療保険には、介護保険の運営指導マニュアルにあたる訪問看護向けの確認項目の一覧が見当たりません(厚労省と地方厚生局の公表資料を編集部が確認した範囲)。確認のよりどころは「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準」(平成12年厚生省令第80号)の各条と、訪問看護療養費の算定要件です。
もう一つ、性格の違いがあります。介護保険の運営指導は、相手の任意の協力を前提とする行政指導だとマニュアルは書いています。これに対し医療保険では、健康保険法第91条が「指定訪問看護事業者及び当該指定に係る訪問事業所の看護師その他の従業者は、指定訪問看護に関し、厚生労働大臣の指導を受けなければならない」と定めています。
2026年6月1日に施行された改正で、この基準に次の条文が加わっています。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 第5条の2 適正な手続の確保 | 厚生労働大臣や地方厚生(支)局長への申請・届出等の手続と、訪問看護療養費の請求の手続を適正に行う |
| 第5条の4 経済上の利益の提供による誘引の禁止 | 利用料に応じた物品の値引きなどの経済上の利益で利用者を誘引しない(第1項)。他の事業者やその従業員に、利用者を紹介する対価として金品を提供しない(第2項) |
| 第5条の5 特定の主治の医師及び特定の事業者等への誘導の禁止 | 特定の医師を主治医にするよう、または特定の事業者・施設(特定施設入居者生活介護や認知症対応型共同生活介護の事業者、介護保険施設、居宅介護支援事業者など)を利用するよう指示等をする対償として、金品その他の財産上の利益を受け取らない |
| 第28条第3項 | 指定訪問看護にかかる安全管理のための体制を確保する |
ほかに、医療保険の側で点検しておきたいのは次の点です。
| 点検すること | 根拠 |
|---|---|
| 訪問看護記録書に、実際の訪問開始時刻と終了時刻を書いているか | 2026年度の診療報酬改定。記録の書き方の変更点 |
| 重要事項を事業所の見やすい場所に掲示し、原則としてウェブサイトにも載せているか | 省令80号第24条 |
| 訪問看護指示書を文書で受けているか。計画書と報告書を主治の医師に提出しているか | 省令80号第16条 |
| 記録書・指示書・計画書・報告書などを、完結の日から2年間保存しているか | 省令80号第30条。介護保険では条例で5年としている自治体もある(保存期間の解説) |
| 届け出ている施設基準(24時間対応体制加算、機能強化型など)の要件を満たし続けているか | 届出の要件。加算辞典 |
医療保険の個別指導: 選ばれ方と、指導のあと
個別指導は、一定の場所に集めるか、ステーションで個別に、面接懇談の形で行われます。原則として、指導月以前の連続した2か月分の訪問看護療養費請求書に基づいて、関係書類を閲覧します。
地方厚生(支)局と都道府県が共同で行う個別指導の対象は、次のステーションです。
- 審査支払機関・保険者・被保険者などから情報提供があり、個別指導が必要と認められた
- 都道府県の介護保険担当部署との連携により、合同の個別指導が必要と認められた
- 前回の個別指導の結果が「再指導」だった、または「経過観察」で改善が認められない
- 監査の結果、戒告または注意を受けた
- 訪問看護療養費請求書の1件当たりの平均額が高い(取扱件数が少ないステーションは除く)
- 正当な理由なく集団指導を拒否した
- その他、特に個別指導が必要と認められた
このほか、同じ事業者が複数の都道府県にステーションを持つ場合などは、厚生労働省も加わる共同指導の対象になります。5番の「1件当たりの平均額」は2025年に基準が具体化され、都道府県の平均を超え、かつステーション数の上位おおむね1%に入る事業所が対象とされています。詳しくは個別指導の対象は1件当たり平均額の上位1%で整理しています。
2番のとおり、介護保険の担当部署と合同で行われる個別指導もあります。2026年4月からは、医療保険と介護保険の指導監査の情報を連携する取り組みも始まっています(行政の目がつながった日)。どちらか一方の保険だけ整えておけばよい、という状況ではなくなっています。
個別指導の結果は、4段階の措置になります。
| 措置 | どういう場合か |
|---|---|
| 概ね妥当 | 指定訪問看護の内容と請求がおおむね妥当で適切 |
| 経過観察 | 適正を欠く部分があるが軽微で、担当者の理解も十分得られ、改善が期待できる |
| 再指導 | 適正を欠く部分があり、もう一度指導しなければ改善の状況を判断できない |
| 要監査 | 監査要綱に定める監査の要件に当たる |
お金の面の措置もあります。個別指導で不当な事項が確認されると、事実を確かめたうえで自主点検を求められます。対象は、原則として指導月前1年以上の全患者分です。自主点検で同じ誤りが見つかれば、指摘された分とあわせて自主返還を求められます。
指摘された1件だけでなく、同じ誤りを1年分さかのぼって全員について洗い出す、ということです。日頃の点検が効いてくるのはここです。
監査になった場合
監査は、不正または著しい不当が疑われる場合などに行われます(健康保険法第94条)。監査のあとの措置は次のとおりです。
| 措置 | どういう場合か |
|---|---|
| 取消処分(指定の取消し) | 故意に不正・不当な行為があった。または重大な過失により不正・不当な行為がしばしばあった |
| 戒告 | 重大な過失により不正・不当な行為があった。または軽微な過失により不正・不当な行為がしばしばあった |
| 注意 | 軽微な過失により不正・不当な行為があった |
故意でなくても、重大な過失があれば処分の対象になりえます。取消処分になると、原則として5年間は再指定されません。管理者の責務に関わる場合、その管理者は5年間、管理者として従事できません。不正・不当の事実が認められた場合は原則として5年間分を返還し、不正請求の返還額には40%の加算金が加えられることもあります(健康保険法第58条第3項)。
不正請求と不当請求の違い
厚生局のテキストは、「不正」をいわゆる詐欺や不法行為に当たるものとし、具体例を挙げています。
| 区分 | テキストの例 |
|---|---|
| 架空請求 | 行っていない指定訪問看護を、行ったものとして請求した |
| 付増請求 | 週2日行った訪問看護を週3日として、1日多く付け増して請求した |
| 振替請求 | 30分未満の精神科訪問看護を、30分以上として精神科訪問看護基本療養費(30分以上)に振り替えて請求した |
| 二重請求 | 自費で行い患者に請求済みの訪問看護を、指定訪問看護としても請求した |
| 重複請求 | 4月分として請求済みのものを、6月分として再び請求した |
| その他 | 看護職員数の標欠。施設基準の要件を満たしていないのに虚偽の届出をした |
これに対して「不当」は、算定要件を満たさないなど、請求の妥当性を欠くものです。テキストの例は、退院時共同指導を行ったのに、その内容を訪問看護記録書に記録しないまま退院時共同指導加算を算定していた、というものです。指導そのものは行っていても、記録が無ければ要件を満たしません。
通知が来たら: 1か月でやること
介護保険の運営指導は、通知から実施日までおおむね1か月あります(医療保険の個別指導は、実施日の1週間から10日前の通知です)。通知の内容と上の表を使って、編集部では次の順で準備することをすすめています。
- 通知の「準備すべき書類」と、上の表①②の確認文書を突き合わせ、書類ごとに担当者を決める
- 対象期間(前年度から直近おおむね1か月前まで)の書類を抜き出し、表の「見られること」に答えられるかを1行ずつ確かめる
- 届け出ている加算ごとに、要件の根拠となる記録を確かめる(表③)
- 訪問時間の記録と請求の区分を突き合わせる
- 足りないもの・直すものを一覧にし、改善の予定日を決める(あとから作って間に合わせない)
- 通知に書かれた出席者と当日の進め方を確認し、説明する人を決める
当日は、分からないことをその場の推測で答えないことです。運営指導の過程で虚偽の答弁が疑われることは、監査に切り替わる理由の一つに挙がっています。確かめてから答える、と伝えれば足ります。
Excelの自己点検表は、この手順で使えるように、確認項目ごとに自己点検・確認日・備考の欄を設けています。介護保険の21項目、医療保険の運営基準の確認点、指定取消しの事由(介護保険法第77条・健康保険法第95条)の3枚構成です。
指導や監査の全体像、不正請求の事例は指導・監査ガイドにまとめています。
よくある質問
Q. 運営指導はどのくらいの頻度で来ますか
原則として、指定の有効期間(6年)内に少なくとも1回以上です。これは最低限の回数で、地域の状況などにより、毎年次、新規指定時、更新時、報酬改定時などに回数を増やすこともできるとされています。これとは別に、集団指導が毎年度1回以上あります。
Q. 運営指導は抜き打ちで来ることがありますか
通常は、実施予定日のおおむね1月以上前に通知されます。ただし、緊急時など速やかな確認が必要な場合は、開始時に文書で通知して行うことができます。高齢者虐待が認められた場合などは、運営指導ではなく、事前の通告なしの監査になります。
Q. どの期間の書類を準備すればよいですか
運営指導を行う年度の前年度から直近(おおむね1月程度前まで)の実績が対象です。その範囲の一部の期間だけを見ることもあります。保存しておくべき文書が無いなど不明な点が見つかると、さらに過去を確かめることになり、監査が必要になるとマニュアルは書いています。
Q. 運営指導で、確認項目以外のことを聞かれることはありますか
マニュアルは、確認項目以外の項目は特段の事情がない限り確認せず、確認文書以外の文書は原則として求めないとしています。ただし、内容に不備があるなどで確認文書から確認項目を確かめられない場合は、ほかの文書の提示を求められることがあります。
Q. 医療保険の個別指導で指摘されると、どこまでさかのぼって返還しますか
個別指導で不当な事項が確認されると、原則として指導月前1年以上の全患者分について自主点検を求められ、同じ誤りが見つかれば、指摘された分とあわせて自主返還を求められます。監査で不正・不当の事実が認められた場合は、原則として5年間分の返還になり、不正請求の返還額には40%の加算金が加えられることもあります(北海道厚生局「集団指導テキスト(令和8年度版)」)。
出典
- 厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」(令和4年3月策定・令和6年7月改訂)本文と別添「確認項目及び確認文書」(103 訪問看護) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/shidou/index.html
- 厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」本文(PDF) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001281524.pdf
- 厚生労働省 介護保険最新情報Vol.1288「「介護保険施設等運営指導マニュアルについて(通知)」の一部改正について」(令和6年7月5日) https://www.mhlw.go.jp/content/001272356.pdf
- 北海道厚生局「集団指導テキスト(令和8年度版)」(訪問看護ステーション向け。7 指導・監査等について) https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/hokkaido/000489343.pdf
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号) https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100037
- 指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準(平成12年厚生省令第80号) https://laws.e-gov.go.jp/law/412M50000100080
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執筆者
医療・看護・介護の多職種チーム
訪問看護・在宅医療の現場に携わる多職種チーム
HokanPress編集部は、訪問看護・在宅医療の現場に実際に携わる多職種チームで構成されています。看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士、介護支援専門員(ケアマネジャー)が所属。それぞれの専門分野で培った臨床経験と専門知識をもとに、医療・看護・介護従事者の実務に役立つ情報を発信しています。記事は必ず該当分野の有資格者が執筆または監修し、公的統計データや学会発表・厚生労働省の公表資料など、信頼性の高い情報源に基づいて作成しています。
保有資格: 看護師 / 理学療法士 / 作業療法士 / 言語聴覚士 / 医療ソーシャルワーカー / 管理栄養士 / 介護支援専門員
※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています


