訪問看護記録の 保存期間は 2年か 5年か。 医療保険は 国の 基準で 2年、 介護保険は 自治体の 条例で 5年の 地域も

Summary
訪問看護記録の保存期間は、医療保険では国の基準(平成12年厚生省令第80号 第30条)で「完結の日から2年間」です。介護保険も国の基準は2年ですが、基準を定める自治体の条例で5年としている地域があります。兵庫県や川崎市は5年、東京都は2年です。保存期間を数え始める日の定め方も自治体ごとに違うため、指定権者の条例の確認が欠かせません。
目次6項目
訪問看護記録書は何年保存すればよいのか。この問いには、一言では答えられません。医療保険の基準では「2年」です。介護保険も国の基準では「2年」ですが、介護保険の基準は自治体が条例で定めていて、「5年」としている自治体があります。さらに、保存期間を数え始める日も、自治体によって定め方が違います。
1人の利用者が医療保険と介護保険の間で切り替わることもある訪問看護では、同じ記録書に2つのルールがかかることがあります。本稿では、根拠になる規定と自治体の実例を整理します。
医療保険:国の基準で「完結の日から2年間」
医療保険の訪問看護(訪問看護療養費)については、「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準」(平成12年厚生省令第80号)の第30条が記録の整備を定めています。
第30条第2項は、利用者への指定訪問看護に関する次の記録を整備し、「その完結の日から二年間」保存するよう求めています。
| 号 | 記録 |
|---|---|
| 一 | 訪問看護記録書 |
| 二 | 訪問看護指示書 |
| 三 | 訪問看護計画書 |
| 四 | 訪問看護報告書 |
| 五 | 市町村・都道府県への情報提供に関する書面 |
| 六 | 市町村等との連絡調整に関する記録 |
この省令は厚生労働省が定めるもので、全国一律に適用されます。第30条は2026年6月1日施行の改正(令和8年厚生労働省令第21号)で一部改正されていますが、現行の条文でも保存期間は「二年間」のままです。
介護保険:国の基準は2年、ただし実際のルールは自治体の条例
介護保険の訪問看護についても、国の基準である「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)は、記録の保存期間を「その完結の日から二年間」としています。
ただし介護保険では、事業所の人員や運営の基準を、指定権者である都道府県・指定都市・中核市が条例で定める仕組みになっています。2012年前後に各自治体が条例をつくり、そのときに保存期間を国の基準より長くした自治体がいくつもあります。
確認できた例は次のとおりです。
| 自治体 | 保存期間 | 確認した資料 |
|---|---|---|
| 兵庫県 | 5年 | 兵庫県「訪問看護・介護予防訪問看護の手引き」(2024年6月)。「書類保存年限を省令基準の2年から5年とする」 |
| 栃木県 | 原則5年(一部の記録は2年) | 栃木県「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例」(令和3年栃木県条例第23号)第4条。省令第73条の2第2項の「2年間」を「5年間(第5号、第7号及び第8号に掲げる記録にあっては、2年間)」に読み替え |
| 川崎市 | 5年 | 川崎市「記録の整備・保存」。国の省令は2年だが、市の条例では5年とし、運営規程や契約書で5年未満としている事業所は改めるよう求めている |
| 東京都 | 2年 | 東京都福祉局「運営指導における主な指摘事項について(第1部 運営編)」。訪問看護の記録を「当該利用者の契約終了の日から2年間保存」 |
同じ訪問看護の記録でも、兵庫県や川崎市のステーションは5年、東京都のステーションは2年保存することになります。栃木県のように、記録の種類によって5年と2年を分けている自治体もあります。自分の事業所がどのルールに当たるかは、指定を受けた自治体(指定権者)の条例を見ないと分かりません。
数え始める日も、自治体によって違う
保存期間をいつから数えるかも、一律ではありません。国の基準は「その完結の日から」としていますが、医療保険の第30条には「完結の日」の定義が書かれていません。自治体の資料を見ると、起算日の定め方は次のように分かれています。
- 東京都:「当該利用者の契約終了の日から」2年間
- 川崎市:記録の種類ごとに起算日を決めている。計画は「計画が定める目標期間の最終月の翌々々月の1日」、サービスの内容等の記録は「サービスが提供された翌々々月の1日」、その他の記録は作成日の属する月の翌月1日
- 広島市:「完結の日の起算点の解釈」として、記録ごとに起算点を示す表を出している(例:事業者との連絡調整の記録は連絡調整を行った日、苦情や事故の記録は対応が終わった日)
東京都のように「契約終了の日」から数える場合、利用が長く続いている利用者の記録は、何年前のものでも保存し続けることになります。川崎市のように記録ごと・月ごとに起算日を決めている場合は、記録ごとに廃棄できる時期が変わります。
1枚の記録書に2つのルールがかかる
訪問看護ステーションの多くは、医療保険と介護保険の両方の利用者を受け持っています。同じ利用者が、病状によって介護保険から医療保険に切り替わることもあります。
たとえば、介護保険の保存期間を5年とする自治体にあるステーションで考えます。医療保険の利用者の記録は、国の基準では2年で保存の義務がなくなります。介護保険の利用者の記録は、条例に従って5年保存しなければなりません。利用者が途中で医療保険から介護保険に切り替わっていれば、1人の記録の中に、2年でよい部分と5年必要な部分が混ざることになります。
記録を保険の種類ごとに分けて管理し、それぞれの期間で廃棄することは、理屈のうえではできます。ただし実務では、取り違えが起きやすくなります。
事業所が確認しておきたいこと
1. 指定権者の条例で、保存期間と起算日を確認する 都道府県、または指定都市・中核市の条例と、集団指導の資料を確認します。「5年」とする自治体でも、栃木県のように一部の記録を2年のままにしている場合があります。起算日の定め方もあわせて確かめます。
2. 運営規程と利用契約書の記載を条例に合わせる 川崎市は、運営規程や契約書で5年未満と定めている事業所に、5年以上へ改めるよう求めています。国の基準の「2年」を書いたままのひな形を使っていないか確認が必要です。
3. 迷ったら、長い方に合わせて保存する 医療保険の記録だけを2年で廃棄する運用は、管理の手間が増えて取り違えのもとになります。保険の種類にかかわらず、条例で定められた長い方の期間に合わせて保存しておけば、指導の場で保存期間が足りないと指摘されることはありません。
4. 廃棄するときは記録を残す 保存期間が過ぎた記録を廃棄する場合は、いつ、どの記録を、どの方法で廃棄したかを記録しておきます。紙の記録は個人情報を含むため、溶解処理や裁断など、内容が読めなくなる方法で処分します。
5. 病院・診療所の訪問看護は別のルールもある 本稿は訪問看護ステーション(指定訪問看護事業者)の記録を対象にしています。病院や診療所が行う訪問看護では、医師法などの医療機関向けのルールもかかるため、別に確認が必要です。
※本稿は2026年10月時点で確認できた省令の条文と、各自治体が公開している資料をもとに整理しました。条例はその後改正されることがあります。実際の保存期間と起算日は、指定権者の最新の条例・資料で確認してください。表に挙げた自治体以外の状況は確認していません。
出典
- 指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準(平成12年厚生省令第80号)第30条 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa0500&dataType=0&pageNo=1
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999404&dataType=0&pageNo=1
- 兵庫県「訪問看護・介護予防訪問看護の手引き」(2024年6月) https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf27/documents/houmonkango.pdf
- 栃木県「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例」(令和3年栃木県条例第23号) https://www.pref.tochigi.lg.jp/reiki/reiki_honbun/e101RG00001931.html
- 川崎市「記録の整備・保存」 https://www.city.kawasaki.jp/350/cmsfiles/contents/0000105/105693/kirokunoseibi_hozon.pdf
- 東京都福祉局「運営指導における主な指摘事項について(第1部 運営編)」(訪問看護) https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/fukushi/r5_houmonkango_unei
- 広島市「記録の保存に係る『完結の日』の解釈について」 https://www.city.hiroshima.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/011/466/11638.pdf
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執筆者
医療・看護・介護の多職種チーム
訪問看護・在宅医療の現場に携わる多職種チーム
HokanPress編集部は、訪問看護・在宅医療の現場に実際に携わる多職種チームで構成されています。看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士、介護支援専門員(ケアマネジャー)が所属。それぞれの専門分野で培った臨床経験と専門知識をもとに、医療・看護・介護従事者の実務に役立つ情報を発信しています。記事は必ず該当分野の有資格者が執筆または監修し、公的統計データや学会発表・厚生労働省の公表資料など、信頼性の高い情報源に基づいて作成しています。
保有資格: 看護師 / 理学療法士 / 作業療法士 / 言語聴覚士 / 医療ソーシャルワーカー / 管理栄養士 / 介護支援専門員
※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています


