訪問看護

訪問看護の看護師の基本給、1年で2,913円増——病院の7,261円の4割、差は1.6万円に広がる|日本看護協会の緊急調査

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訪問看護の看護師の基本給、1年で2,913円増——病院の7,261円の4割、差は1.6万円に広がる|日本看護協会の緊急調査

Summary

日本看護協会が10月27日に公表した緊急調査で、訪問看護事業所の正規看護職員の基本給は2026年8月に平均258,237円、前年より2,913円増でした。病院は7,261円増の274,754円です。賃上げした訪問看護事業所は73.2%と病院を上回る一方、賃上げ率は「1〜2%未満」が最多。ベースアップ評価料と処遇改善加算をどちらも算定していない事業所は13.0%でした。

目次9項目
  1. 01調査の概要
  2. 02事業所の73.2%が賃上げ、上げ幅は「1〜2%未満」が最多
  3. 03基本給は訪問看護が+2,913円、病院が+7,261円
  4. 04年齢別でも、すべての年齢層で病院を下回る
  5. 05加算は「両方」が60.6%、「どちらも取っていない」が13.0%
  6. 06看護職員の約8割が賃金に「不満」
  7. 07訪問看護ステーションが確かめたいこと
  8. 08これからの流れ
  9. 09出典

日本看護協会は10月27日、「看護職員の賃上げに関する緊急調査」の結果を公表しました。2026年9月に、病院・訪問看護事業所・介護保険施設などで働く看護職員と、病院・訪問看護事業所の管理者に聞いたWeb調査です。

訪問看護事業所で正規雇用(フルタイム)で働く看護職員の基本給は、2026年8月に平均258,237円でした。前年同月より2,913円増えています。病院で働く看護職員は7,261円増えて274,754円です。訪問看護の増え幅は病院の約4割にとどまり、病院との基本給の差は、1年で12,171円から16,517円に広がりました。

事業所の側では、2026年度に賃金を引き上げた訪問看護事業所は73.2%と、病院の68.7%を上回りました。ただし、賃上げ率は「1〜2%未満」という回答が最も多くなっています。

調査の概要

項目内容
調査期間2026年9月1日〜9月14日
方法Webアンケート
看護職員調査38,736人(うち訪問看護事業所1,896人、病院34,452人、介護保険施設・事業所2,388人)
訪問看護調査(所長などの管理者)1,925事業所
病院調査(看護部長などの看護管理者)3,908施設

回答した人や事業所を集計した調査です。全国のすべての事業所の平均をそのまま表すものではない点に注意が必要です。

事業所の73.2%が賃上げ、上げ幅は「1〜2%未満」が最多

2026年度の賃上げ訪問看護事業所(1,925)病院(3,908)
賃金を引き上げた73.2%(前年度56.6%)68.7%(前年度58.6%)
変更なし19.7%23.8%
賃金を引き下げた0.5%0.9%
わからない・未定6.6%6.6%

賃金を引き上げた事業所に、何を引き上げたかを聞いた結果です(複数回答)。

引き上げた内容訪問看護事業所(1,365)病院(2,686)
ベースアップ(定期昇給以外の基本給の増額)70.3%76.2%
定期昇給・人事考課による昇給37.4%40.8%
決まって支払われる手当の増額24.0%19.6%
賞与(一時金)の増額19.6%11.7%
非正規・パート労働者の賃金増額17.9%19.2%
夜勤手当・オンコール手当の増額10.8%13.9%
新卒者の初任給の増額1.8%9.7%

訪問看護は病院と比べて、手当や賞与で上げた割合が高く、ベースアップの割合はやや低くなっています。訪問看護のベースアップは前年度より8.9ポイント増えました。

賃上げ率を答えた事業所の分布は次のとおりです。

2026年度の賃上げ率訪問看護事業所(901)病院(1,703)
5%以上18.4%13.0%
4〜5%未満9.9%12.5%
3〜4%未満13.4%19.1%
2〜3%未満19.3%18.6%
1〜2%未満25.9%20.3%
1%未満13.1%16.6%

協会は、2026年度の診療報酬改定で示された賃上げの目標水準3.2%にも、臨時の介護報酬改定で示された「介護従事者を対象に幅広く月1万円(3.3%)の賃上げ」にも、半数以上の病院・訪問看護事業所が届いていないとしています。

比べる相手として、協会は東京商工リサーチの調査(2026年8月)を挙げています。民間企業の2026年度の賃上げ実施率は大企業で93.8%、中小企業で82.3%、賃上げ率5%以上は大企業で41.4%、中小企業で42.6%でした。

基本給は訪問看護が+2,913円、病院が+7,261円

正規雇用(フルタイム)の看護職員の平均です。2025年8月と2026年8月の両方の金額に答えた人が対象で、どちらかの年に休暇・休職中だった人や、この1年に転職した人は除かれています。同じ人たちの1年間の変化と読めます。

訪問看護事業所病院介護保険施設・事業所
対象の人数809人18,424人947人
平均年齢43.5歳38.2歳47.1歳
基本給(2025年8月)255,323円267,494円250,429円
基本給(2026年8月)258,237円274,754円251,707円
基本給の増加+2,913円+7,261円+1,279円
税込給与総額(2025年8月)363,483円383,571円346,533円
税込給与総額(2026年8月)375,189円400,885円354,100円

基本給の伸びは、訪問看護が約1.1%、病院が約2.7%です。税込給与総額は、訪問看護が11,706円(約3.2%)、病院が17,314円(約4.5%)増えました。

訪問看護では、税込給与の増え方に比べて、基本給の増え方が小さくなっています。税込給与には手当や時間外勤務の分が含まれます。給与が増えた訪問看護の看護職員に理由を聞くと(複数回答・990人)、「ベースアップ」が50.2%、「時間外勤務や夜勤回数・オンコール対応回数の増加」が29.4%でした。給与の増加の一部は、働く量が増えた結果だということです。

反対に、給与が減った訪問看護の看護職員(83人)の理由で最も多かったのは、「時間外勤務や夜勤回数、オンコール対応回数の減少」の49.4%でした。「ベースダウン(基本給の引き下げ)」も8.4%ありました。

訪問看護の平均年齢は病院より5歳ほど高いため、平均どうしの比較には年齢の違いも混ざっています。そこで年齢別に見ます。

年齢別でも、すべての年齢層で病院を下回る

2026年8月の基本給の平均です(訪問看護の20〜24歳は、回答者が少ないため示されていません)。

年齢病院訪問看護事業所差
25〜29歳237,001円235,178円1,823円
30〜34歳251,353円231,897円19,456円
35〜39歳270,090円235,314円34,776円
40〜44歳285,570円260,714円24,856円
45〜49歳305,042円260,466円44,576円
50〜54歳323,118円276,835円46,283円
55〜59歳346,964円288,426円58,538円
60〜69歳326,289円283,941円42,348円

すべての年齢層で訪問看護の基本給は病院を下回り、差は年齢が上がるほど大きくなる傾向です。税込給与総額でも、すべての年齢層で訪問看護が病院を下回っています。

1年間の変化では、訪問看護の30歳以上は基本給が2,040円〜7,803円増えた一方、25〜29歳は3,377円減っていました。年齢別に分けると人数が少なくなるため、幅をもって見る必要があります。

加算は「両方」が60.6%、「どちらも取っていない」が13.0%

訪問看護の賃上げの財源には、医療保険の訪問看護ベースアップ評価料と、介護保険の介護職員等処遇改善加算があります。訪問看護事業所の算定状況は次のとおりです。

算定状況(1,925事業所)割合
両方算定している60.6%
訪問看護ベースアップ評価料だけ算定している17.0%
介護職員等処遇改善加算だけ算定している9.5%
どちらも算定していない13.0%

処遇改善加算を算定している事業所は、合わせて70.1%です。国の統計では、2026年6月時点の訪問看護の算定率は67.6%でした(10月1日の記事)。調べた対象が違うので単純には比べられませんが、近い水準です。

国の「医療・介護等支援パッケージ」の支援事業を受け取っているかも聞いています。「受給している」は、診療所等賃上げ支援事業で31.8%、介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業で36.4%でした。どちらも「無回答・不明」が約3割あるため、協会は参考値としています。訪問看護ステーション向けの診療所等賃上げ支援事業は、1施設22万8,000円です(9月16日の記事)。

看護職員の約8割が賃金に「不満」

訪問看護事業所の看護職員(1,896人)の賃金への満足度は、「不満」が51.1%、「やや不満」が25.3%で、合わせて76.4%です。「満足」は2.2%、「やや満足」は7.9%でした。病院や介護保険施設・事業所とほぼ同じ分布です。

協会は、賃金への不満が大きい人ほど、いまの職場で働き続けたい、看護職として働き続けたいと答える割合が低い傾向があったとしています。調査全体で、賃金に「不満」と答えた人のうち、いまの職場で働き続けたいと「とてもそう思う」「ややそう思う」と答えたのは15.2%でした。

訪問看護の離職率には全国の統計がありません(9月26日の記事)。今回の数字は、訪問看護の職員の定着を考える材料の一つになります。

訪問看護ステーションが確かめたいこと

  • 自分の事業所の賃上げ率。 基本給と手当を分けて、2026年度に何%上がったかを確かめます。目安になるのは、診療報酬改定の3.2%と、臨時の介護報酬改定の月1万円(3.3%)です。
  • 給与の増加が、オンコールや時間外の増加によるものになっていないか。 税込給与が増えていても、基本給が動いていなければ、職員の「上がった実感」にはつながりにくいと考えられます。これは編集部の見方です。
  • ベースアップ評価料と処遇改善加算を、両方取れているか。 片方だけ、またはどちらも取っていない場合は、要件を見直す価値があります。ベースアップ評価料(Ⅱ)の区分の選び方は10月3日の記事、処遇改善加算を「誓約」で始めた事業所がやることは10月1日の記事で整理しています。
  • 若い職員の基本給。 今回の調査では、訪問看護の25〜29歳だけ基本給が下がっていました。採用の際の初任給や、若い職員の昇給の仕組みを見直す手がかりになります。

これからの流れ

協会は、今回の結果をもとに、令和9年度の予算での対応、介護報酬改定での対応、診療報酬の期中改定などを求めて要望・政策提言を進めるとしています。

2027年度の介護報酬改定に向けては、日本訪問看護財団と全国訪問看護事業協会が9月16日の意見交換会で、賃金改善分を本体報酬に組み込むことを求めていました(9月17日の記事)。介護関係17団体も10月6日、毎年の賃金改善を求める要望書を出しています(10月7日の記事)。

処遇改善加算の記事は特集「訪問看護の処遇改善加算」、給料の記事は特集「訪問看護師の給料・年収」、改定の論点は特集「訪問看護の2027年度改定」にまとめています。

出典


※本稿は、日本看護協会のニュースリリース(2026年10月27日)の数字をもとにまとめました。差・割合・伸び率の一部は、リリースの数字から編集部が計算しています。

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執筆者

HokanPress編集部

医療・看護・介護の多職種チーム

訪問看護・在宅医療の現場に携わる多職種チーム

HokanPress編集部は、訪問看護・在宅医療の現場に実際に携わる多職種チームで構成されています。看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士、介護支援専門員(ケアマネジャー)が所属。それぞれの専門分野で培った臨床経験と専門知識をもとに、医療・看護・介護従事者の実務に役立つ情報を発信しています。記事は必ず該当分野の有資格者が執筆または監修し、公的統計データや学会発表・厚生労働省の公表資料など、信頼性の高い情報源に基づいて作成しています。

保有資格: 看護師 / 理学療法士 / 作業療法士 / 言語聴覚士 / 医療ソーシャルワーカー / 管理栄養士 / 介護支援専門員

※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています

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