訪問看護は 14年間、 処遇改善加算の 「対象外」だった ——2026年6月、 ついに 転換|加算率1.8%で 月1万円の 賃上げ原資、 算定の 要件と 実務、 そして 残された 格差

Summary
介護職員等処遇改善加算は2012年度の創設以来、一貫して訪問看護を対象外としてきました。「医療職中心のサービスであり、介護職の処遇改善という趣旨になじまない」という整理です。その構造が2026年6月、ついに転換しました。期中の臨時改定により、訪問看護にも加算率1.8%の処遇改善加算が新設されたのです。14年越しの転換が何を意味するのか。算定の要件と実務、医療保険側との二本立ての整理、そして残された課題を、宮木が解説します。
訪問看護ステーションの経営に関わる制度で、2026年前半に起きた最も大きな転換を一つ挙げるなら、私は迷わずこれを選ぶ。介護職員等処遇改善加算の対象に、訪問看護が加わったことだ。
小さなニュースに見えるかもしれない。加算率はわずか1.8%である。だが、制度の歴史を知る者にとって、意味はまったく違う。処遇改善加算は2012年度の創設以来、14年にわたって訪問看護を対象外とし続けてきた。その壁が、ついに崩れたのだ。
何が決まり、何をすべきで、何が課題として残るのか。順に整理していきたい。
14年間、なぜ対象外だったのか
はじめに、経緯を確認する。介護職員の賃金を引き上げるための処遇改善の加算は、2012年度の介護報酬改定で「介護職員処遇改善加算」として生まれた。その後「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」と拡充を重ね、2024年6月に三つの加算が「介護職員等処遇改善加算」へ一本化されている。
この間、訪問看護は一貫して対象外だった。理由とされたのは「訪問看護は医療職中心のサービスであり、介護職の処遇改善を目的とする加算の趣旨になじまない」という整理である。
だが現場の実態は、その整理では済まなかった。病院の看護師との賃金格差、24時間対応とオンコールの負担、慢性的な人員不足。介護保険のサービスとして同じ地域で働きながら、隣の訪問介護には処遇改善の原資が入り、訪問看護には入らない。業界団体は繰り返し対象への追加を要望してきたが、実現しないまま年月が過ぎた。
2026年6月、何が決まったのか
転換は、通常の改定を待たずに来た。
2026年1月16日、社会保障審議会の介護給付費分科会が、過去最高水準のプラス改定となる期中の臨時改定を答申した。介護分野の職員の処遇を他の職種と遜色のない水準へ引き上げるため、令和9年度の介護報酬改定を待たずに実施するという判断である。厚生労働省の通知にも、その趣旨が明記された。
内容はこうだ。処遇改善加算の対象を介護従事者全体に広げ、訪問看護、訪問リハビリテーション、ケアマネジメントなどにも拡大する。賃上げの幅は月1万円をベースとし、定期昇給を含めて最大で月1万9,000円を目指す。加算率は訪問介護で最大28.7%、訪問看護では1.8%、訪問リハビリテーションで1.5%、居宅介護支援等で2.1%と設定された。
訪問看護と介護予防訪問看護は、2026年6月のサービス提供分から算定できる。4月・5月分は対象外である。加算率1.8%は、介護保険分の基本報酬に各種加算を加えた総単位数に乗じる。


