訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)は、 必要な 賃上げ額から 逆算して 区分を 選ぶ——賃金改善算定基礎額・医療保険の 利用者割合・ 【A】の 計算手順

Summary
訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)は、(Ⅰ)だけでは賃上げの原資が足りないステーションのための上乗せです。区分は自由に選ぶのではなく、職員の月額賃金総額から出す「賃金改善算定基礎額」と医療保険の利用者割合をもとに【A】を計算し、別表2に当てはめて決めます。届出手続き通知に沿って、計算の材料・式・計算例・2027年5月までの上限・区分の見直しを整理します。
目次8項目
訪問看護ベースアップ評価料は、2026年6月の改定で(Ⅰ)が月1回780円から1,050円(継続的に賃上げしているステーションは1,830円)に引き上げられました。(Ⅰ)の単価と今後の引き上げは「訪問看護ベースアップ評価料、2027年6月にさらに引き上げ」で整理しています。
この記事で扱うのは、もう一つの(Ⅱ)です。(Ⅱ)は、(Ⅰ)だけでは職員の賃上げの原資が足りないステーションのための上乗せで、区分1から区分36まであります。どの区分を届け出るかは自分で選ぶものではなく、必要な賃上げ額から逆算した【A】という数で決まります。その計算の手順を、厚生労働省の届出手続き通知に沿って整理します。
(Ⅱ)を算定できるステーション
(Ⅱ)を届け出るには、次の要件をすべて満たす必要があります(届出手続き通知 別添 届出基準13(3))。
- (Ⅰ)を届け出ていること
- (Ⅰ)で算定される金額の見込みが、「賃金改善算定基礎額 × 医療保険の利用者割合」の5割未満であること
- 常勤換算2人以上の対象職員が勤務していること(「基本診療料の施設基準等」別表第6の2に掲げる地域のステーションを除く)
- 社会保険診療等に係る収入金額の合計が、総収入の100分の80を超えること
2つ目が中心の要件です。職員の賃金の規模に比べて医療保険の利用者が少なく、(Ⅰ)の収入だけでは賃上げに足りない場合に、(Ⅱ)で差を埋める仕組みです。
計算に使う3つの材料
① 賃金改善算定基礎額
対象職員の月額賃金総額に、別表1の数を掛けて合計した額です。
| 職種 | 2026年6月〜2027年5月 | 2027年6月〜 |
|---|---|---|
| 対象職員(看護補助者・事務職員を除く)の月額賃金総額に掛ける数 | 1.29 × 3.2% | 1.29 × 6.4% |
| 看護補助者・事務職員の月額賃金総額に掛ける数 | 1.29 × 5.7% | 1.29 × 11.4% |
- 月額賃金は、基本給等と、時間外手当など月ごとに変動して支払われる手当の合計です。賞与や期末・勤勉手当は含みません
- 原則として、届出をする月の直近1か月の総額を使います(その年度の賃金改善をすでに始めている場合は、始める前の月の総額)
- 「令和7年度医療機関等における賃上げ・物価上昇に対する支援事業」の補助金による部分は含めません
- 対象職員は、ステーションに勤務する職員です(専ら管理者の業務に従事する者・業務委託により勤務する者を除く。事業主・役員も含まない)
② 医療保険の利用者割合
直近3か月の1月あたりの、医療保険の訪問看護の利用者数を、医療保険と介護保険の利用者数の合計で割った割合です。同じ月に医療保険と介護保険の両方で訪問看護を受けた人は、医療保険の利用者として数えます。
③ (Ⅰ)の見込み額と、(Ⅱ)の算定回数の見込み
どちらも、訪問看護管理療養費(月の初日の訪問)または包括型訪問看護療養費を算定する実利用者数の直近3か月の平均から出します。(Ⅰ)の見込み額は、継続的賃上げの1,830円を算定するステーションでも、1,050円で計算します(注3・注5の額を算定する場合は、注1・注4の額で計算するとされているため)。
【A】の式と区分の決め方
材料がそろったら、次の式で【A】を出します。
【A】=(賃金改善算定基礎額 × 医療保険の利用者割合 × 0.5 − (Ⅰ)の見込み額)÷ (Ⅱ)の算定回数の見込み
【A】は、(Ⅰ)で足りない分を、(Ⅱ)の1回あたりの額に直した数です。これを別表2に当てはめて区分を決めます。
| 【A】 | 区分 | 1回の額 |
|---|---|---|
| 0を超える | 区分1 | 30円 |
| 45以上 | 区分2 | 60円 |
| 75以上 | 区分3 | 90円 |
| 以降、【A】が30増えるごとに1区分上がる | … | 30円ずつ増える |
| 525以上 | 区分18 | 540円 |
| 555以上 | 区分19 | 570円 |
| … | … | … |
| 1,065以上 | 区分36 | 1,080円 |
ここで注意が必要なのは、区分19から区分36は2027年6月以降に算定するとされている点です(告示 区分番号07 注6)。2027年5月までは、【A】がどれだけ大きくても、算定できるのは区分18(540円)までです。
計算例
次の条件のステーションで計算してみます(数字は説明のための例です)。
- 対象職員(看護補助者・事務職員を除く)の月額賃金総額:600万円
- 事務職員の月額賃金総額:40万円
- 医療保険の利用者割合:50%
- 訪問看護管理療養費(月の初日)を算定する実利用者:月平均50人
| 手順 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 賃金改善算定基礎額 | 600万円 × 1.29 × 3.2% + 40万円 × 1.29 × 5.7% | 247,680円 + 29,412円 = 277,092円 |
| 基礎額 × 利用者割合 × 0.5 | 277,092円 × 50% × 0.5 | 69,273円 |
| (Ⅰ)の見込み額 | 50人 × 1,050円 | 52,500円(69,273円を下回るので、(Ⅱ)を算定できる) |
| 【A】 | (69,273円 − 52,500円) ÷ 50回 | 335.5 |
| 区分 | 315以上345未満 | 区分11(1回330円) |
この場合、(Ⅱ)は月50回 × 330円 = 16,500円になります。
同じステーションで医療保険の利用者割合が70%なら、【A】は889.6となり、別表2では区分30に当たります。しかし2027年5月までは区分18が上限のため、届け出られるのは区分18(1回540円・月27,000円)です。
継続して賃上げしているステーションは、1回の額が上乗せされる
令和8年3月31日時点で(Ⅱ)を届け出ていたステーションや、令和6年3月時点と比べて一定水準以上のベースアップを行ったステーションは、2026年6月以降、区分ごとの額が上乗せされます(告示 区分番号07 注7)。たとえば区分11は330円に代えて480円、区分18は540円に代えて1,040円です。区分の決め方(【A】と別表2)は同じです。
区分を見直すとき
- 対象職員の数、または3か月ごとの(Ⅰ)の算定回数が、届け出た時点から1割以上変動した場合は、区分を計算し直します。区分が変わる場合は、計算した月のうちに地方厚生(支)局長に届け出て、翌月から新しい区分で算定します
- 2026・2027年度は点数の構造が変わるため、新規の届出時と毎年6月1日時点で算定できるよう届け出ることとされています
収入の使い道と報告
(Ⅱ)で得た収入は、対象職員のベースアップ等と、それに伴う賞与・時間外手当・法定福利費等の増加分に充てます。恒常的に夜間を含む交替制勤務の職場の夜勤手当は、毎月決まって支払われる手当として基本給等に含めて差し支えないとされています。評価料で改善する項目以外の賃金の水準を下げてはいけません。
毎年8月には、前年度の「賃金改善実績報告書」と、算定している年度の「賃金改善中間報告書」の2本を提出します。→ 報告書2本の実務
まとめ
(Ⅱ)の区分は、【A】=(賃金改善算定基礎額 × 医療保険の利用者割合 × 0.5 − (Ⅰ)の見込み額)÷ (Ⅱ)の算定回数 で決まります。届出の前に、直近1か月の月額賃金総額と、直近3か月の利用者数をそろえることから始めます。2027年5月までは区分18が上限です。2027年6月からは別表1の数が2倍(3.2%→6.4%など)になり、区分19以上も算定できるようになるため、届け出ている区分を確認し直す必要があります。
加算の要件の全体は、加算辞典の訪問看護ベースアップ評価料で、告示・通知の条文の位置とあわせて確認できます。
出典: 「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」(平成20年厚生労働省告示第67号)区分番号07、「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(保発0305第19号)第10、「訪問看護ステーションの基準に係る届出に関する手続きの取扱いについて」(保医発0305第9号)別添 届出基準13・別表1・別表2・別紙様式11
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執筆者
医療・看護・介護の多職種チーム
訪問看護・在宅医療の現場に携わる多職種チーム
HokanPress編集部は、訪問看護・在宅医療の現場に実際に携わる多職種チームで構成されています。看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士、介護支援専門員(ケアマネジャー)が所属。それぞれの専門分野で培った臨床経験と専門知識をもとに、医療・看護・介護従事者の実務に役立つ情報を発信しています。記事は必ず該当分野の有資格者が執筆または監修し、公的統計データや学会発表・厚生労働省の公表資料など、信頼性の高い情報源に基づいて作成しています。
保有資格: 看護師 / 理学療法士 / 作業療法士 / 言語聴覚士 / 医療ソーシャルワーカー / 管理栄養士 / 介護支援専門員
※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています


