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訪問看護の処遇改善加算、「誓約」で始めた事業所が3月末までにやること——賃金改善・実績報告・返還を避ける確認リスト

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訪問看護の処遇改善加算、「誓約」で始めた事業所が3月末までにやること——賃金改善・実績報告・返還を避ける確認リスト

Summary

訪問看護の処遇改善加算は、令和8年度に限り、要件を「誓約」で満たしたことにして算定を始められます。誓約した取組の期限は令和9年3月末、結果は令和9年7月31日(通常の場合)が期日の実績報告書で報告します。厚生労働省の通知とQ&Aをもとに、特例要件・加算Ⅳに準ずる要件それぞれでやること、毎月の賃金改善、返還を避けるための確認を整理しました。

目次10項目
  1. 01まず、計画書で「何を誓約したか」を確かめる
  2. 02①特例要件で申請した場合:「加入」ではなく「利用」が必要
  3. 03②加算Ⅳに準ずる要件で申請した場合:3つを3月末までに
  4. 04毎月の賃金改善:確認する5つのこと
  5. 05実績報告:令和9年7月31日(通常の場合)
  6. 06まだ算定していない事業所は、年度の途中からでも
  7. 07医療保険分には掛からない
  8. 08令和9年度以降は、改定の議論で決まる
  9. 09年度末までの確認リスト
  10. 10出典

訪問看護の処遇改善加算は、2026年6月のサービス提供分から算定できるようになりました。加算率は1.8%です。対象になった経緯と制度の全体像は、訪問看護が処遇改善加算の対象になった経緯の記事で整理しました。

本記事は、その次の段階を扱います。算定を始めた事業所が、年度末までに何をしておかなければならないかです。

令和8年度に限り、訪問看護は要件を「誓約」で満たしたことにして、算定を始められます。誓約は「期限までに必ずやる」という約束です。期限は令和9年3月末で、結果は実績報告書で報告します。約束を果たさなければ、算定の要件を満たさないことになります。厚生労働省の通知は、算定要件を満たさない場合、すでに支給した加算の返還や、加算の取消しができると定めています(通知7)。

以下、厚生労働省の通知とQ&Aをもとに、確認することを順に整理します。

まず、計画書で「何を誓約したか」を確かめる

訪問看護は、通知の別紙1表1-5に掲げられたサービスです。訪問リハビリテーション、居宅介護支援・介護予防支援と同じ区分で、賃金改善に加えて、次のどちらかの要件を満たす必要があります(通知3⑵)。

要件中身令和8年度の扱い
①令和8年度特例要件ケアプランデータ連携システムを利用している、または法人が社会福祉連携推進法人に所属している利用を誓約すれば、申請時点から満たしているものとして扱う
②処遇改善加算Ⅳの取得に準ずる要件キャリアパス要件Ⅰ・キャリアパス要件Ⅱ・職場環境等要件の3つをすべて満たすそれぞれ整備を誓約すれば、申請時点から満たしているものとして扱う

どちらの要件でも、誓約した場合の期限は令和9年3月末です。提出した処遇改善計画書(別紙様式2)を開き、どちらの要件で申請したか、どの項目を誓約したかを確認してください。申請を担当した人と、年度末に報告を書く人が同じとは限りません。誓約の中身は、早めに共有しておくと安心です。

①特例要件で申請した場合:「加入」ではなく「利用」が必要

ケアプランデータ連携システムを使う道を選んだ事業所は、次の3点を確認します。

  • 加入だけでは足りません。 Q&Aは、特例要件を満たすには加入だけでなく利用が必要で、実績報告書に利用実績を書くとしています(Q&A問8-2)。
  • 利用の証拠を残します。 一律の資料提出は求められませんが、指定権者から求められたら速やかに出せるよう、根拠資料を用意します。Q&Aが例として挙げているのは、使用画面のスクリーンショットです。データの送信または受信の記録が分かるように撮ったものに限るとされています。根拠資料の保存期間は2年間です(Q&A問8-4)。
  • 同等のシステムでもかまいません。 厚生労働省が、ケアプランデータ連携システムと同等の機能とセキュリティを持つと認めたシステムも対象です。令和8年3月13日時点で4つのサービスが挙げられており、最新の認定状況は厚生労働省のホームページで確認するよう案内されています(Q&A問8-1)。

データをやり取りする以上、連携先の居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)側でもシステムを使っている必要があります。導入するかどうかの判断材料は、ケアプランデータ連携システムの記事で整理しています。

②加算Ⅳに準ずる要件で申請した場合:3つを3月末までに

こちらを選んだ事業所は、次の3つを令和9年3月末までに整え、実績報告書で報告します(通知3⑵②)。

キャリアパス要件Ⅰ:任用の要件と賃金体系を書面にする

  • 職位・職責・職務内容に応じた任用の要件(賃金に関するものを含む)を定める
  • それに応じた賃金体系を定める(一時金など臨時に支払うものは除く)
  • 就業規則などの根拠規程を書面で整え、全職員に周知する

常時雇用する人が10人未満など、就業規則の作成義務がない事業所は、就業規則の代わりに内規などを整備・周知する形でもかまいません。

キャリアパス要件Ⅱ:研修の計画を立てて実施する

職員と意見を交換しながら、資質向上の目標と、次のどちらかに関する具体的な計画を立て、研修を実施するか、研修の機会を確保します。計画は全職員に周知します。

  • 計画に沿った研修機会の提供や技術指導(OJT・OFF-JTなど)と、職員の能力評価
  • 資格取得の支援(研修を受けるための勤務シフトの調整、休暇の付与、交通費や受講料の援助など)

訪問看護であれば、新人の同行訪問(OJT)や外部研修の受講支援を、この計画として書面にしておく形が考えられます。

職場環境等要件:区分ごとに取組を行う

通知の表4は、職場環境等の取組を28項目・6つの区分に分けています。訪問看護など表1-5のサービスは、次のように実施します。

  • 「入職促進に向けた取組」「資質の向上やキャリアアップに向けた支援」「両立支援・多様な働き方の推進」「腰痛を含む心身の健康管理」「やりがい・働きがいの醸成」の5つの区分で、それぞれ1つ以上
  • 「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」で2つ以上

1法人で1事業所だけを運営するような小規模な法人は、生産性向上の区分のうち、協働化の取組(委員会の共同設置、指針・計画の共同策定、物品の共同購入など。表4の㉔)を行っていれば、この区分の要件を満たすものとされています。

表4には、たとえば次のような項目があります。

  • 経営理念や人材育成方針の明確化(①)
  • 上司などによるキャリア面談など、定期的な相談の機会の確保(⑧)
  • 有給休暇を取りやすくする取組(⑪・⑫)
  • 職員の相談窓口の設置(⑬)
  • 業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫(⑳)
  • 介護ソフトやタブレットなどの導入(㉑)
  • ミーティングなどによる職場内のコミュニケーションの円滑化(㉕)

すでに行っている取組が当てはまる場合もあります。まず表4と照らし合わせ、実施したことが分かる記録を残しておきます。

毎月の賃金改善:確認する5つのこと

どちらの要件で申請した場合も、加算の算定額に相当する賃金改善を実施することが前提です。年度の途中で確認しておきたい点を、通知とQ&Aから挙げます。

  1. 加算額以上を賃金改善に充てているか。 賃金改善に伴う法定福利費などの事業主負担の増加分は、賃金改善額に含めることができます(通知2⑵)。
  2. ベースアップを基本にしているか。 新たに算定を始めた加算額に相当する賃金改善は、ベースアップ(賃金表を改めて、基本給か毎月決まって支払う手当を一律に引き上げること)を基本とします。賃金体系の整備途上などでベースアップだけでは足りない場合は、ほかの手当や一時金を組み合わせてもかまいません(通知2⑵)。
  3. 支給時期のパターンを決めているか。 6月分の加算なら、6月中に見込額で払う、7月に払う、介護報酬が振り込まれる8月に払う、の3つのパターンから事業者が選びます。配分の仕方は、あらかじめ労使の合意を得るよう努めることとされています(Q&A問1-8-1)。
  4. 配分が偏っていないか。 賃金改善の対象には、看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・事務職なども含まれ、事業所内で柔軟に配分できます(Q&A問2-1-2)。ただし、一部の職員や一部の事業所に集中させるなど、職務の内容や勤務の実態に見合わない著しく偏った配分は行わないこととされています(Q&A問2-6)。
  5. 賃金水準を下げていないか。 賃金改善の対象とした項目を含め、賃金水準を下げてはいけません。経営の悪化などで引き下げる場合は、労使の合意を得たうえで、特別事情届出書を出す必要があります(通知2⑵・5⑵、Q&A問1-11)。

職員から賃金改善の内容について問い合わせがあれば、書面などで分かりやすく答えることも求められています(通知8⑴)。

賃金改善額を計算するときの基準(加算を算定しない場合の賃金水準)は、Q&A問1-1で定められています。原則として、初めて処遇改善加算や補助金などを受けた年度の、前年度の賃金水準と比べます。計画書を作ったとき、どの年度を基準にしたかを記録に残しておいてください。

実績報告:令和9年7月31日(通常の場合)

令和8年度の実績報告書の提出期日は、通常の場合、令和9年7月31日です。各年度の最終の加算の支払があった月の翌々月の末日までと定められており、令和9年3月分の加算の支払が令和9年5月になるためです(通知4⑶)。

報告に向けて、次の点を押さえておきます。

  • 賃金改善額が加算額を下回ると、返還の対象になります。 ただし、不足分を賞与などの一時金で職員に追加して配れば、返還を求めない扱いとしてもかまわないとされています(Q&A問1-9)。実績報告の前に、加算額と賃金改善額の差を一度計算しておくと、不足を一時金で埋めるかどうかを判断できます。
  • 誓約した取組の結果を書きます。 特例要件ならケアプランデータ連携システムの利用実績、加算Ⅳに準ずる要件なら3つの要件の整備・実施の状況です。
  • 就業規則を改めた場合は、変更届出書もあわせて出します。 職員の処遇に関する就業規則の改訂だけの変更なら、実績報告書を提出する際に、改訂の概要を書いた変更届出書をあわせて届け出ます(通知5⑴⑥)。キャリアパス要件Ⅰのために就業規則を改めた場合は、これに当たると考えられます。提出の要否は指定権者に確認してください。
  • 書類は2年間保存します。 計画書・実績報告書と根拠資料は、2年間の保存が必要です(通知4⑵・⑶)。届出の際に一律の添付は求められませんが、指定権者から求められたら速やかに提示します(通知6・9⑴)。保管する書類として、就業規則などと、労働保険に加入していることが分かる書類(労働保険関係成立届、労働保険概算・確定保険料申告書など)が挙げられています(通知6)。

まだ算定していない事業所は、年度の途中からでも

6月から算定していない事業所も、年度の途中から始められます。必要な届出は次の2つです(通知4⑴・⑵)。

届出期日
処遇改善計画書その年度に初めて算定する月の前々月の末日まで
体制届出(訪問看護などの居宅系サービス)算定を始める月の前月15日まで

たとえば令和9年1月から算定する場合、計画書は令和8年11月末、体制届出は令和8年12月15日が期日になります。ただし通知は、指定権者が計画書の提出期日を延長することを認めているため、実際の期日は事業所の所在地の都道府県・市町村に確認してください。

令和8年度に算定を始めるなら、誓約の仕組みも同じように使えます。ただし誓約の期限は、算定を始めた月にかかわらず令和9年3月末です。

医療保険分には掛からない

処遇改善加算は、介護報酬の1か月の総単位数に加算率を掛けて算定します(通知2⑴)。医療保険の訪問看護療養費には掛かりません。医療保険側の賃上げの仕組みは、訪問看護ベースアップ評価料です。

令和9年度以降は、改定の議論で決まる

ここで見た誓約の扱いは、通知で「令和8年度においては」と定められた取扱いです。令和9年度以降の要件は、2027年度介護報酬改定の議論で決まります。訪問看護に関わる論点は、意見交換会の記事と9月16日の三団体の要望の記事で追っています。

年度末までの確認リスト

時期やること根拠
いま計画書で、申請した要件(特例要件か、加算Ⅳに準ずる要件か)と、誓約した項目を確認する通知3⑵
毎月加算額以上の賃金改善を、決めたパターンで支払い、記録する通知2⑵、Q&A問1-8-1
令和9年3月末まで誓約した取組を終える(連携システムの利用、またはキャリアパス要件Ⅰ・Ⅱと職場環境等要件の整備)通知3⑵
実績報告の前加算額と賃金改善額の差を計算し、不足があれば一時金での追加配分を検討するQ&A問1-9
令和9年7月31日まで(通常の場合)実績報告書を提出する(就業規則を改めた場合は変更届出書も)通知4⑶・5⑴
提出後2年間計画書・実績報告書・根拠資料を保存する通知4⑵・⑶

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執筆者

HokanPress編集部

医療・看護・介護の多職種チーム

訪問看護・在宅医療の現場に携わる多職種チーム

HokanPress編集部は、訪問看護・在宅医療の現場に実際に携わる多職種チームで構成されています。看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士、介護支援専門員(ケアマネジャー)が所属。それぞれの専門分野で培った臨床経験と専門知識をもとに、医療・看護・介護従事者の実務に役立つ情報を発信しています。記事は必ず該当分野の有資格者が執筆または監修し、公的統計データや学会発表・厚生労働省の公表資料など、信頼性の高い情報源に基づいて作成しています。

保有資格: 看護師 / 理学療法士 / 作業療法士 / 言語聴覚士 / 医療ソーシャルワーカー / 管理栄養士 / 介護支援専門員

※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています

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