訪問看護

訪問看護ステーションへの支給は1施設22万8,000円——窓口が都道府県ごとに違い、受け取り損ねが起きている|賃上げ・物価上昇支援事業

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訪問看護ステーションへの支給は1施設22万8,000円——窓口が都道府県ごとに違い、受け取り損ねが起きている|賃上げ・物価上昇支援事業

Summary

令和7年度の医療機関等における賃上げ・物価上昇支援事業で、訪問看護ステーションへの支給額は1施設あたり22万8,000円と定められました。要件は訪問看護ベースアップ評価料の届出と診療報酬請求の実績です。ただし実施主体は都道府県で、受付期間も窓口も自治体ごとに異なります。東京都は8月7日で締め切り、介護保険の指定を受けたステーションは別事業の対象という注記も付いていました。制度の中身と、いま確認しておくべきことを整理します。

目次6項目
  1. 01要件と、使い道
  2. 02窓口が、都道府県ごとに違う
  3. 03事務を管理者が抱えている事業所では
  4. 04いま確認すべき三つのこと
  5. 05一時金から、恒久制度へ
  6. 06次の補助金に備える

訪問看護ステーションへの支給額は、1施設あたり22万8,000円です。

令和7年度の医療機関等における賃上げ・物価上昇支援事業のうち、診療所等賃上げ支援事業の金額です。厚生労働省が2026年1月26日に実施要綱を公表しました。

当メディアで訪問看護物価対応料を扱った際、月の初日60円、2日目以降20円という加算を試算して、月8回訪問する利用者1人あたり月200円になると書きました。22万8,000円は、その1,000人分以上にあたる金額です。

ただし、この給付金を受け取るための手続きは、都道府県ごとに異なります。そして多くの自治体で、受付はすでに終わっている可能性があります。制度の中身と、いま確認すべきことを整理します。

要件と、使い道

まず制度の内容を確認します。

支給の要件は二つです。2026年3月1日までに訪問看護ベースアップ評価料を届け出ていること。そして、2025年4月1日から申請時点までに診療報酬請求の実績があること。加えて、廃止・廃院していないことが条件になります。

使い道は限定されています。給付金は全額を賃金改善に充てる必要があり、原則として令和7年12月から令和8年5月までの間に、基本給の引き上げ、または毎月決まって支払われる手当による引き上げを実施することとされています。

定期昇給による上昇分、診療報酬による上昇分、他の補助金による上昇分に充てることはできません。ただし、賃上げに伴う法定福利費の事業主負担の増加分に充てることは認められています。

改善幅の数値要件は設定されていません。厚生労働省も日本訪問看護財団も、この点を明示しています。何パーセント以上上げなければならないという決まりはありません。

令和8年6月1日以降は、新たなベースアップ評価料を財源として、給付金で実施した賃金水準の引き上げを維持することが求められます。直ちに賃金表の改正が難しい場合は、令和7年12月から令和8年3月までの最大4か月分を一時金として3月までに支払うことも認められました。5か月分や6か月分の支給はできないとされています。

当メディアで基本給が12年で5,868円しか上がっていないことを扱った際、ベースアップ評価料を原資とした引き上げの多くが毎月の手当として配られていることを紹介しました。この事業も、基本給と毎月の手当のどちらでも構わない設計です。どちらを選ぶかは事業所の判断に委ねられています。

窓口が、都道府県ごとに違う

この事業の実施主体は都道府県です。申請の受付開始日も期限も、各都道府県が決めます。全国一律ではありません。

東京都の場合、Jグランツまたは書面による交付申請兼実績報告を、令和8年6月11日から8月7日までに行う形でした。すでに締め切られています。

さらに東京都の案内には注記があります。訪問看護ステーションのうち介護保険法上の指定を受けている場合は、介護事業所等に対するサービス継続支援事業の対象になるとされ、所管が福祉局高齢者施策推進部に変わります。

訪問看護ステーションの多くは介護保険の指定を受けています。医療分野の窓口を確認した事業所が、そこには自分の該当する事業がない、という状況が起こりうる構造です。

和歌山県も、診療所向けの案内のなかに「訪問看護ステーションにおける物価支援は別事業により実施」と明記しています。大阪府は、診療所・薬局・訪問看護ステーションへの支援として告知しました。

同じ国の事業でありながら、どの部局のどのページを見るかが自治体によって変わります。賃上げ支援と物価支援で所管が分かれることもあります。

事務を管理者が抱えている事業所では

この複雑さが、どこに効くかを考えます。

訪問看護ステーションの看護職員は1事業所あたり平均5.8人です。当メディアで繰り返し扱ってきた数字です。事務専任の職員を置いている事業所は少なく、多くは管理者が請求も労務も届出も抱えています。

当メディアで起業した管理者の困難を分析した査読論文を扱った際、「起業・運営に関わる必須かつ詳密な事務管理」が困難のカテゴリとして抽出されていたことを紹介しました。看護の経験があっても、自治体のサイトから補助金の情報を継続的に拾う習慣は、多くの管理者にとって業務の外にあります。

補助金は、申請しなければ交付されません。制度を知って申請した事業所と、知らなかった事業所の差が22万8,000円になります。この差は、経営の巧拙ではなく情報に到達できたかどうかで生まれます。

当メディアで倒産統計を扱った際、訪問看護は産業分類上、介護事業者の統計にも医療機関の統計にも入らないことを書きました。今回も似た構図があります。医療分野の事業でありながら、介護保険の指定によって介護分野の事業に振り分けられる。どちらの窓口になるかが自治体の判断で変わります。

いま確認すべき三つのこと

受付が終わっている自治体が多いため、これから申請するという段階ではありません。確認すべきことは三つあります。

一つ目は、自事業所が受給したかどうかです。交付決定通知を受け取っているか、入金があったか。複数の事業所を運営する法人では、拠点ごとに申請が必要だった場合があります。一部の拠点だけ漏れていないかを確認する価値があります。

二つ目は、受給した場合の実績報告です。和歌山県の案内では、交付決定通知書の受領および事業完了後、令和8年8月1日までに賃金改善報告書と個票を提出することとされていました。様式も期限も自治体によって異なります。報告を提出していなければ、返還を求められる可能性があります。

三つ目は、令和8年6月以降の賃金水準の維持です。この事業は、給付金で引き上げた水準を6月以降はベースアップ評価料を財源として維持することを前提に設計されています。一時金として支給した事業所は、6月以降の恒常的な引き上げが実際にできているかを確認する必要があります。

なお、自事業所の都道府県の現況は、管轄の自治体に直接お問い合わせください。本記事で取り上げたのは東京都、和歌山県、大阪府の例であり、47都道府県すべての受付状況を確認したものではありません。

一時金から、恒久制度へ

この事業の位置づけも整理しておきます。

厚生労働省は、この緊急的な支援を2026年5月までとし、同年6月に施行された新しい診療報酬体系へ引き継ぐ計画を立てていました。一時金から恒久的な制度への、切れ目のない移行という設計です。

引き継ぎ先がベースアップ評価料であり、2026年度改定では段階的な引き上げも組まれています。当メディアで物価対応料を扱った際、2027年6月に所定額の200%へ引き上げる段階設計を紹介しました。賃金も物価も、2年間で段階的に上げる形になっています。

22万8,000円は単発の補助金ではなく、恒久制度への橋渡しとして設計されたものでした。この橋を渡れなかった事業所は、6月以降の賃金水準の出発点が低いままになります。

次の補助金に備える

令和9年度の概算要求では、介護分野で新たな事業が複数要求されています。当メディアで概算要求の内容を確認した際、在宅系サービス事業所の防犯・カスハラ対策への補助が盛り込まれたことを紹介しました。年末の予算編成で何がどう決まるかは、これからです。

補助金は今後も出ます。そのたびに、同じ問題が起きる可能性があります。

備え方は単純です。管轄する都道府県の担当部局のページを定期的に確認する。医療分野と介護分野の両方を見る。都道府県看護協会や訪問看護連絡協議会、日本訪問看護財団や全国訪問看護事業協会の案内も確認する。今回の事業についても、日本訪問看護財団は概要説明のページを設けて要件と注意点を整理していました。

補助金を確認する作業を、誰がいつ行うか。事業所として決めておくことが、次の給付金を取りこぼさない方法になります。管理者一人に任せている限り、同じことが繰り返されるかもしれません。

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執筆者

HokanPress編集部

医療・看護・介護の多職種チーム

訪問看護・在宅医療の現場に携わる多職種チーム

HokanPress編集部は、訪問看護・在宅医療の現場に実際に携わる多職種チームで構成されています。看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士、介護支援専門員(ケアマネジャー)が所属。それぞれの専門分野で培った臨床経験と専門知識をもとに、医療・看護・介護従事者の実務に役立つ情報を発信しています。記事は必ず該当分野の有資格者が執筆または監修し、公的統計データや学会発表・厚生労働省の公表資料など、信頼性の高い情報源に基づいて作成しています。

保有資格: 看護師 / 理学療法士 / 作業療法士 / 言語聴覚士 / 医療ソーシャルワーカー / 管理栄養士 / 介護支援専門員

※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています

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