訪問看護の 医療費は 6,785億円、 1年で 18.5%増—— 国民医療費全体の 伸びの 12倍。 大阪は 住民1人あたり1万円超、 秋田の 4.2倍

Summary
令和6年度の国民医療費で、訪問看護医療費(医療保険の訪問看護療養費と基本利用料)は6,785億円、前年度から18.5%増えた。国民医療費全体の伸び1.5%の12倍で、診療の種類別で最も高い伸び率。4年で2.1倍になり、介護保険の訪問看護の約1.7倍の規模に。住民1人あたりでは大阪府が1万円を超え、秋田県の4.2倍だった。
目次6項目
令和6年度の国民医療費のうち、訪問看護医療費は6,785億円だった。前年度の5,727億円から1,058億円増え、伸び率は18.5%になる。国民医療費全体の伸びは1.5%なので、訪問看護はその12倍の速さで伸びたことになる。
国民医療費は、その年度に病気やけがの治療にかかった費用を推計した統計で、厚生労働省が10月30日に公表した。ここでいう訪問看護医療費は、訪問看護療養費と基本利用料の合計、つまり医療保険の訪問看護の費用だ。介護保険の訪問看護費は、国民医療費には含まれない。
国民医療費に占める訪問看護の割合は1.4%にすぎない。それでも、診療の種類別に見た伸び率は、ほかのどの項目よりも高かった。
4年で2.1倍
訪問看護医療費の推移は次のとおりだ。
| 年度 | 訪問看護医療費 | 前年度比 |
|---|---|---|
| 2020(令和2) | 3,254億円 | +19.3% |
| 2021(令和3) | 3,929億円 | +20.7% |
| 2022(令和4) | 4,633億円 | +17.9% |
| 2023(令和5) | 5,727億円 | +23.6% |
| 2024(令和6) | 6,785億円 | +18.5% |
毎年2割前後の伸びが5年続き、2020年度から2024年度の4年で2.1倍になった。国民医療費全体は同じ期間に42兆9,665億円から48兆8,100億円へ増えたが、伸び率は年に1.5〜4.8%の範囲にとどまっている(2020年度は3.2%の減少)。
伸び率は、診療の種類別で最も高い
令和6年度の診療の種類別の伸び率を並べると、訪問看護だけが突出している。
| 診療の種類 | 令和6年度 | 構成割合 | 前年度比 |
|---|---|---|---|
| 医科診療医療費 | 34兆8,941億円 | 71.5% | +1.0% |
| 歯科診療医療費 | 3兆4,059億円 | 7.0% | +3.4% |
| 薬局調剤医療費 | 8兆5,742億円 | 17.6% | +1.4% |
| 入院時食事・生活医療費 | 7,718億円 | 1.6% | +3.8% |
| 訪問看護医療費 | 6,785億円 | 1.4% | +18.5% |
| 療養費等 | 4,854億円 | 1.0% | +2.3% |
| 総数 | 48兆8,100億円 | 100.0% | +1.5% |
医科診療のうち入院外(外来)の医療費は、前年度より0.9%減っている。外来が減り、入院が2.8%増えるなかで、在宅の訪問看護は18.5%伸びた。
医療保険の訪問看護は、介護保険の1.7倍の規模
訪問看護は、医療保険と介護保険の両方で提供される。介護保険の側は、介護給付費等実態統計で金額が分かる。
令和6年度の介護給付費等実態統計で、介護給付の訪問看護(介護予防訪問看護を除く)の費用額は4,064億円だった(10月7日の記事)。同じ令和6年度で比べると、医療保険の訪問看護医療費6,785億円は、介護保険の約1.7倍になる。
2つの統計は集計の仕方が違う。国民医療費は年度(4月〜翌年3月)の推計で、介護給付費等実態統計は審査した月(令和6年5月審査分〜令和7年4月審査分)で1年を区切る。目安として比べる数字だ。
介護保険の訪問看護は、令和7年度に前年度から7.1%伸び、その伸びはほぼすべて利用者数の増加によるものだった(同じ10月7日の記事)。医療保険の訪問看護は、それを大きく上回るペースで増えている。
住民1人あたりは大阪が1万円超、秋田の4.2倍
国民医療費は、都道府県別の金額も公表している。患者の住所地で集計した数字だ(各種の調査の割合を使った推計値)。訪問看護医療費を総人口で割って、住民1人あたりの額を出すと、地域差が大きい。
| 都道府県 | 訪問看護医療費 | 総人口 | 住民1人あたり |
|---|---|---|---|
| 大阪府 | 905億円 | 875万7千人 | 10,335円 |
| 和歌山県 | 77億円 | 88万人 | 8,750円 |
| 愛知県 | 570億円 | 746万人 | 7,641円 |
| 岐阜県 | 137億円 | 191万6千人 | 7,150円 |
| 福岡県 | 363億円 | 509万2千人 | 7,129円 |
| (全国) | 6,785億円 | 1億2,380万2千人 | 5,481円 |
| 新潟県 | 59億円 | 209万9千人 | 2,811円 |
| 秋田県 | 22億円 | 89万7千人 | 2,453円 |
大阪府の住民1人あたりの額は全国の約1.9倍で、最も低い秋田県の4.2倍になる。大阪府の訪問看護医療費905億円は、全国の13%あまりを占める。
大阪府は、訪問看護ステーションの数でも全国で最も多い。全国訪問看護事業協会の調査では、2026年4月1日時点で稼働しているステーションは大阪府が2,456か所で、東京都の1,865か所、愛知県の1,374か所を上回る(都道府県別の訪問看護ステーション数)。
なぜ大阪で医療保険の訪問看護がこれほど使われているのかは、この統計からは分からない。利用者の病気の内訳や、住まいの形などを重ねて見る必要がある。
医療保険の訪問看護に、国の目が向いている
医療保険の訪問看護の利用者は、主な病気で見ると「精神及び行動の障害」が47.4%を占める(8月27日の記事)。2026年6月の診療報酬改定では、高齢者向け住まいなどに住む人への頻回の訪問看護を1日単位で評価する包括型訪問看護療養費が新設され、精神科訪問看護の同一建物の数え方も見直された。
費用の伸びについては、国も調べ始めている。中医協は10月28日、訪問看護ステーションの医療保険の分の収支を調べる「訪問看護経営実態調査」を新しく行う案を示した。調査の対象月は2027年6〜7月で、結果は2027年11月に報告される予定だ(10月28日の記事)。
医療費全体が年1.5%しか伸びない中で、2割近く伸びる項目は目立つ。訪問看護の報酬を見直すときに、今回の数字も議論の材料の一つになると考えられる。
出典
- 厚生労働省「令和6(2024)年度 国民医療費の概況」
- 結果の概要(表4 診療種類別国民医療費)
- 統計表(第4表 診療種類別の年次推移、第7表 都道府県別)
- 推計方法の概要(訪問看護医療費の定義)
- 厚生労働省「令和6年度 介護給付費等実態統計の概況」
- 全国訪問看護事業協会「令和8年度 訪問看護ステーション数 調査結果」
※本稿は、令和6年度国民医療費の概況(2026年10月30日公表)をもとにまとめました。住民1人あたりの額と倍率は、公表された金額と人口から計算しています。
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執筆者
訪問看護ステーション経営者・救急看護認定看護師
大学病院 救命救急センター 5年 / 手術室 2年 / 大手訪問看護ステーション 5年 / 訪問看護ステーション設立・代表
小学生の頃から訪問看護師を志し、大学病院の救命救急センター・手術室で急性期医療の現場経験を積む。救急看護認定看護師の資格を取得後、大手訪問看護ステーションでの勤務を経て独立。現場と経営の両視点から、医療従事者に実践的な情報を届けます。
保有資格: 看護師免許 / 救急看護認定看護師 / BLSプロバイダー / ICLSプロバイダー
※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています


