訪問看護の 経営実態調査、 国が 新たに 実施へ。 医療保険の 収支を 2027年6〜7月に 調べ、 11月に 結果—— 同一建物と 精神科の 評価の 見直しに つな げる

Summary
厚生労働省は10月28日の中医協総会に、訪問看護ステーションの経営実態調査を新しく行う案を示しました。医療保険の分の収支や経営の実態をつかむためで、2026年度改定の附帯意見(同一建物・包括型の検証、精神科訪問看護の増加)を受けたものです。調査の対象月は2027年6〜7月、結果は11月中旬に報告する予定で、医療経済実態調査と同じ日程です。
目次8項目
厚生労働省は10月28日の中医協総会に、「訪問看護経営実態調査」を新しく行う案を示しました。訪問看護ステーションの医療保険の分の収支や経営の実態をつかみ、今後の診療報酬改定を議論する基礎資料にするための調査です。調査の対象や項目は、これから中医協の調査実施小委員会で詰める予定です。
調査の対象月は2027年6〜7月で、結果は2027年11月中旬に報告する予定です。病院や診療所を調べる医療経済実態調査と同じ日程になります。医療経済実態調査には、これまで訪問看護ステーションが入っていませんでした。
調査の案の中身
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査名 | 訪問看護経営実態調査(新規) |
| 目的 | 指定訪問看護事業所の経営状況等を把握し、今後の診療報酬改定の検討に使う基礎資料を得る |
| きっかけ | 2026年度診療報酬改定の答申についた附帯意見 |
| これから決めること | 調査対象、対象の選び方、調査項目、有効回答率を上げる方法 |
| 決める場 | 中医協の調査実施小委員会 |
| 調査の対象月 | 2027年6〜7月 |
| 結果の報告 | 2027年11月中旬(調査実施小委員会と総会) |
資料は調査の背景として、「医療費の増加傾向が続く中で」医療保険分の収支構造や経営実態を把握することが重要な課題になっている、と書いています。
どれくらいの数の事業所を、どう選ぶのかはまだ示されていません。事務局が論点を出し、小委員会での議論を踏まえて実施案を示す、という進め方です。
きっかけは2026年度改定の附帯意見
2026年度の診療報酬改定の答申には、改定後に引き続き検討する事項として附帯意見がついています。今回の資料は、そのうち訪問看護の2点を挙げています。
- 同一建物居住者への訪問看護の評価を見直し、一連の訪問看護を1日あたりで包括的に評価する仕組みを新しく作ったことなどを踏まえ、「指定訪問看護事業所の経営状況等の把握や今回改定の検証を行った上で、評価の在り方について引き続き検討すること」
- 精神科訪問看護の利用者が増える傾向にあることを踏まえ、利用者の状態や訪問看護の提供内容なども含めて、実態に合った評価の在り方を引き続き検討すること
「1日あたりで包括的に評価する仕組み」は、2026年6月に始まった包括型訪問看護療養費のことです。高齢者向け住まいなどに併設・隣接するステーションが、居住者に頻回の訪問看護を行った場合に1日単位で算定します(10月8日の記事)。1日単位の包括払いの額が見合っているかは、事業所にどれだけ費用がかかっているかが分からなければ判断できません。
精神科訪問看護も、2026年6月の改定で、同じ建物に10人以上住む場合の数え方などが変わりました(9月9日の記事)。医療保険の訪問看護では、利用者の主傷病で最も多いのが「精神及び行動の障害」で、47.4%を占めています(8月27日の記事)。
9月の試行調査は、この本調査の準備だった
厚労省保険局医療課は9月から10月にかけて、無作為に選んだ約300の訪問看護事業所に「訪問看護経営実態等調査検証事業」を行っていました。回答の期限は10月9日でした(10月8日の記事)。
この試行の協力依頼には、結果を「今後の本格調査」に向けて調査や集計の方法を検証する基礎資料にする、と書かれていました。今回の資料は試行に触れていません。ただ、試行で分かった答えにくい項目や回答の集まり方が、小委員会での調査設計に使われると考えられます。これは編集部の見方です。
どの期間の数字を聞かれるか
調べる期間も、まだ決まっていません。
参考になるのが、同じ日程で行う医療経済実態調査です。前回(第25回)の要綱は、調査の時期を「令和7年3月末までに終了する直近2事業年(度)の2年間」としていました。
訪問看護の調査が同じ形になれば、2027年3月末までに終わる2事業年度が対象になります。3月決算の法人なら、2025年度と2026年度の決算です。2026年度には、包括型訪問看護療養費などが始まった6月以降の10か月が入ります。ここも編集部の推測で、決まるのは小委員会の議論の後です。
国の経営調査、医療保険の側にも
訪問看護ステーションの経営や提供の実態を国が調べる調査は、これで次のように並ぶことになります。
| 調査 | 行うところ | 訪問看護についてわかること |
|---|---|---|
| 介護事業経営実態調査 | 厚生労働省 | 介護保険の分の収支。介護報酬の改定に使う |
| 医療経済実態調査 | 中医協 | 対象は病院・一般診療所・歯科診療所・保険薬局で、訪問看護ステーションは入っていない |
| 改定結果の検証調査(2026・2027年度。じほうの報道による) | 中医協 | 2026年度改定の後、訪問看護の提供の実態がどう変わったか |
| 訪問看護経営実態調査(今回の案) | 中医協 | 医療保険の分の収支と経営の実態 |
医療保険の分も含めたステーションの収支は、これまで日本看護協会など関係団体の調査で示されてきました(9月19日の記事)。今回の調査が行われれば、医療保険の訪問看護療養費の水準を、国が集めた収支のデータをもとに議論する土台ができます。
事業所が今から備えたいこと
- 調査票が届いたら答える。 対象の選び方は未定ですが、医療経済実態調査と同じく一部の事業所を選んで調べる形になると考えられます。資料は「有効回答率の向上策」を論点に挙げています。回答が少なければ、結果は実態からずれやすくなります。
- 収入と費用を保険ごとに分けておく。 医療保険(訪問看護療養費)と介護保険(介護報酬)の収入を月ごとに分けて集計し、人件費もおおよそでよいので保険ごとに分けられるようにしておくと、調査票に答えやすくなります。
- 包括型や同一建物の訪問を記録しておく。 包括型訪問看護療養費を算定している、または同じ建物に住む利用者への訪問が多い事業所は、その収入と、訪問にかかった時間・人員を残しておくと、評価の検証に答えられます。
- 精神科訪問看護の中身を記録しておく。 附帯意見は、精神科訪問看護について「利用者の状態」や「提供内容」も含めて評価を考えるとしています。
いずれも、調査のためだけの準備ではありません。どの保険の、どの利用者で利益が出ているのかを知る材料になります。
これからの流れ
案では、調査の中身を10月から調査実施小委員会で話し合います。事務局が対象や項目の実施案を示し、小委員会で内容を了承したうえで、2027年6〜7月に調査します。結果は2027年11月中旬に報告される予定です。
資料は、結果を「今後の診療報酬改定の検討」に使うとしています。診療報酬の改定は2年ごとなので、通常どおりなら次は2028年度です。調査の項目が示されたら、HokanPressでもお伝えします。
出典
- 中央社会保険医療協議会 総会(第660回)資料(2026年10月28日)
- 総-5 訪問看護経営実態調査について(案)
- 総-4 第26回医療経済実態調査について(案)
- 実-1-1 第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)要綱(案)(2024年12月18日)
- 総-10 答申書附帯意見に関する事項の検討の進め方について(案)(2026年4月8日)
- 厚生労働省保険局医療課 事務連絡「訪問看護経営実態等調査検証事業(令和8年9月調査)への協力依頼について」(2026年9月2日)
- じほう「【中医協】在宅医療、訪問看護は2年連続で調査へ 26年度改定の検証」(2026年6月24日)
※本稿は、第660回中医協総会(2026年10月28日)の資料「総-5」「総-4」をもとにまとめました。調査の対象・項目・期間は、これから調査実施小委員会で決まります。
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執筆者
医療・看護・介護の多職種チーム
訪問看護・在宅医療の現場に携わる多職種チーム
HokanPress編集部は、訪問看護・在宅医療の現場に実際に携わる多職種チームで構成されています。看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士、介護支援専門員(ケアマネジャー)が所属。それぞれの専門分野で培った臨床経験と専門知識をもとに、医療・看護・介護従事者の実務に役立つ情報を発信しています。記事は必ず該当分野の有資格者が執筆または監修し、公的統計データや学会発表・厚生労働省の公表資料など、信頼性の高い情報源に基づいて作成しています。
保有資格: 看護師 / 理学療法士 / 作業療法士 / 言語聴覚士 / 医療ソーシャルワーカー / 管理栄養士 / 介護支援専門員
※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています



