訪問看護は 「倒産しない 業種」ではなく 「倒産統計に 載らない 業種」 ——介護事業者倒産176件の 裏で、 廃止届886件が 示すもの |産業分類が 隠す訪問看護の 退出

Summary
介護事業者の倒産は2025年に176件と過去最多を更新し、2026年上半期はデイサービスが過去最多の水準にあります。しかしこの統計に訪問看護は含まれていません。産業分類上、訪問看護は「老人福祉・介護事業」ではなく「医療業」に属し、病院や診療所を対象とする医療機関の倒産統計にも入りません。一方、厚生労働省の分科会資料は2024年度の廃止届886件、休止届355件を示しています。訪問看護は倒産しないのではなく、統計の外で退出しています。数字を重ねて構造を読み解きます。
介護事業者の倒産が、過去最多を更新し続けています。
東京商工リサーチの集計によると、2025年の介護事業者(老人福祉・介護事業)の倒産は176件で、2年連続の最多更新でした。内訳は訪問介護が91件、デイサービスなどの通所・短期入所が45件、有料老人ホームが16件。2026年に入ってもデイサービスの倒産は1月から5月で27件に達し、上半期として過去最多の水準にあります。
この統計を見て、訪問看護の経営者は何を思うでしょうか。訪問看護の名前は、どこにも出てきません。訪問介護91件、通所45件、有料老人ホーム16件。訪問看護は0件ではなく、集計の対象外です。
訪問看護は倒産しない業種なのか。それとも倒産が見えない業種なのか。数字を重ねて確認します。
産業分類が、訪問看護を統計の外に置いている
まず、なぜ訪問看護が介護事業者の倒産統計に出てこないのかを確認します。
東京商工リサーチの介護事業者倒産は、日本標準産業分類の「老人福祉・介護事業」を対象に集計されています。訪問介護、通所介護、有料老人ホーム、グループホームなどはここに含まれます。
一方、訪問看護ステーションは産業分類上「医療業」のなかの「看護業」に位置づけられています。介護保険の指定を受け、売上の約9割が介護保険から出ていても、分類は医療業です。したがって介護事業者の倒産統計には入りません。
では医療業の統計に出てくるのかというと、そうでもありません。東京商工リサーチの「医療機関」倒産は、病院・クリニック・歯科医院を対象としており、2026年上半期は38件で上半期として2番目の高水準でした。この38件にも訪問看護ステーションは含まれていません。
つまり訪問看護は、介護事業者の籠にも医療機関の籠にも入らない位置にあります。倒産が起きても、業界の倒産動向として報じられる統計には現れない。これが第一の構造です。
廃止届886件、休止届355件
倒産統計に出てこない訪問看護の退出は、別の場所に記録されています。
2026年6月29日の介護給付費分科会に厚生労働省が提出した資料は、訪問看護ステーションの指定・廃止の状況を示しました。2024年度の廃止届受理数は886件、休止届は355件。翌年4月1日時点の指定数は19,314か所です。
廃止と休止を合わせると1,241件。指定数に対する割合は約6.4%にあたります(編集部の試算)。この数字は5年前の2020年度の廃止541件・休止240件から、いずれも1.6倍前後に増えています。


