医療制度

訪問看護の介護費+7.1%は利用者数の増加によるもの。1人1月4.9万円は横ばいで、訪問介護は単価が+4.1%

(更新: )·約8分で読めます
訪問看護の介護費+7.1%は利用者数の増加によるもの。1人1月4.9万円は横ばいで、訪問介護は単価が+4.1%

Summary

令和7年度の介護給付費等実態統計では、訪問看護の費用額が前年度から7.1%増えた。延べ受給者数と実受給者数で割って分解すると、伸びのほぼすべては利用者数の増加で説明できる。1人1月当たりの費用は48,790円から48,750円で、横ばいだった。訪問介護はこの逆で、利用者はほとんど増えず、1人1月当たりが4.1%上がった。編集部が統計表から試算した。

目次7項目
  1. 01何を何で割ったか
  2. 02訪問介護は逆の形だった
  3. 03ほかの在宅サービスと並べる
  4. 04介護サービス全体の中での大きさ
  5. 05経営の側から何が読めるか
  6. 06この試算の限界
  7. 07出典

令和7年度の介護給付費等実態統計で、介護保険の訪問看護の費用額は4,354億円だった。前年度の4,064億円から289億円増え、伸び率は7.1%になる。介護サービス全体の伸びは2.3%なので、訪問看護の伸びは全体の3倍に近い。

費用が増えた理由は、大きく2つに分けられる。1つは使う人が増えたこと、もう1つは1人当たりにかかる額が上がったことだ。この2つは、統計表の受給者数で費用額を割れば切り分けられる。結論を先に書くと、訪問看護の費用の伸びは、ほぼすべて利用者数の増加によるものだった。1人1月当たりの費用は前年度とほとんど変わっていない。同じ方法で訪問介護を分解すると、ちょうど逆の形になる。

以下の数値は、厚生労働省の公表した統計表(表2・表6)から編集部が計算した試算である。統計の公表値ではない。

何を何で割ったか

使った数字は3種類ある。

  • 費用額(表6):保険給付に利用者負担を加えた額。年度の累計
  • 延べ受給者数(表2、年間累計):各月の受給者数を1年分足したもの。1人が12か月使えば12と数える
  • 実受給者数(表2):その年度に1回以上サービスを使った人の数。1人は何か月使っても1と数える

費用額を延べ受給者数で割ると、1人1月当たりの費用が出る。延べ受給者数を実受給者数で割ると、1人が1年のうち何か月使ったかが出る。費用の伸びは「実受給者数の伸び」「1人当たりの利用月数の伸び」「1人1月当たりの費用の伸び」の3つに分けられる。

訪問看護(介護給付)令和6年度令和7年度増減
費用額4,064億円4,354億円+7.1%
実受給者数104.9万人110.7万人+5.5%
延べ受給者数833.0万人893.0万人+7.2%
1人当たり利用月数7.94か月8.07か月+1.6%
1人1月当たり費用48,790円48,750円−0.1%
1人1年当たり費用38.8万円39.3万円+1.5%

延べ受給者数の伸び(+7.2%)は、費用額の伸び(+7.1%)とほぼ同じだ。そのため、1人1月当たりの費用は40円下がった。

伸び率を3つに分けると、次のようになる(対数による分解。詳しくは注記を参照)。

  • 実受給者数の増加:約8割
  • 1人当たり利用月数の増加:約2割
  • 1人1月当たり費用の変化:ほぼゼロ(わずかにマイナス)

訪問看護の介護費が増えた理由は、使う人が5.5%増えたことと、1人が使う期間がわずかに長くなったことでほぼ説明できる。1か月に1人が使う額は上がっていない。

訪問介護は逆の形だった

同じ計算を訪問介護にも行った。

訪問介護令和6年度令和7年度増減
費用額1兆2,142億円1兆2,820億円+5.6%
実受給者数161.3万人162.0万人+0.5%
延べ受給者数1,332.2万人1,351.9万人+1.5%
1人1月当たり費用91,140円94,835円+4.1%
1人1年当たり費用75.3万円79.1万円+5.1%

訪問介護の利用者はほとんど増えていない。それでも費用は679億円増えた。伸びの約7割は1人1月当たり費用の上昇によるもので、利用者数の増加による分は1割に満たない。

費用の増加額だけを比べると、訪問介護(+679億円)は訪問看護(+289億円)の2倍を超える。ただし、増え方の中身はまったく違う。訪問看護は利用者が増えて費用が膨らみ、訪問介護は利用者1人当たりの費用が上がって膨らんだ。

訪問介護の1人1月当たり費用がなぜ上がったのかは、この統計表からは分からない。加算を取る事業所が増えたことや、身体介護・生活援助などサービス内容の構成が変わったことが考えられるが、どれも推測にとどまる。確かめるには、請求明細の単位で集計したデータが必要になる。原因の推定は、この記事ではしない。

ほかの在宅サービスと並べる

在宅サービスの主なものを同じ表にまとめた。

サービス費用額実受給者数1人1月当たり費用
訪問看護+7.1%+5.5%−0.1%(48,750円)
介護予防訪問看護+11.2%+9.7%±0.0%(30,979円)
定期巡回・随時対応型+12.1%+9.6%+0.4%(184,993円)
居宅療養管理指導+9.7%+5.2%+2.5%(14,532円)
訪問介護+5.6%+0.5%+4.1%(94,835円)
通所介護+1.7%+0.5%+0.1%(93,162円)

※1人1月当たり費用の括弧内は令和7年度の金額

伸び方は3つのグループに分かれる。

利用者数が増えたグループ:訪問看護、介護予防訪問看護、定期巡回。費用額の伸びと実受給者数の伸びが近く、1人1月当たり費用はほぼ動いていない。

単価が上がったグループ:訪問介護。利用者はほぼ横ばいで、1人1月当たり費用だけが上がった。

両方が伸びたグループ:居宅療養管理指導。利用者が5.2%増え、1人1月当たり費用も2.5%上がった。

通所介護は、利用者数も単価もほとんど変わっていない。

介護予防訪問看護の費用は464億円から516億円に増え、伸び率は11.2%だった。率で見れば訪問看護より高い。ここでも1人1月当たり費用は30,966円から30,979円で、ほとんど変わっていない。介護予防訪問看護も、利用者数の増加で伸びたサービスだ。

介護サービス全体の中での大きさ

介護サービス全体(介護予防を除く)の費用額は、令和6年度から令和7年度にかけて2,628億円増えた。このうち訪問看護の増加分(289億円)は約11%を占める。費用額全体に占める訪問看護の割合は3.5%から3.7%に上がった。

金額で見ればまだ小さいサービスだ。ただし、全体の伸びに対する寄与は、費用額の割合よりも大きい。介護報酬改定の議論でこの種のデータが示されれば、訪問看護は「利用が急に増えているサービス」として見られる。

経営の側から何が読めるか

ステーションの数字に置き換えると、次のように読める。

まず、1人1月当たりの売上は、制度の側から見て2年続けて上がっていない。訪問看護の業界全体の売上は、利用者を増やした分だけ増えている。利用者を増やせなかったステーションの介護保険の売上は、横ばいだったと考えるのが自然だ。この統計はステーションごとの数字を示していないので、あくまで全国の平均の話である。

次に、1人当たりの利用月数がわずかに延びている(7.94か月→8.07か月)。利用者が年度の途中で入院したり亡くなったりして終了する割合が減ったのか、長く続く利用者が増えたのかは、この表からは区別できない。ただ、年間の平均利用月数が延びることは、ステーションの経営にとって新しい利用者を獲得するコストを薄める方向に働く。

3つ目に、1人1月当たりの費用は、2026年6月の期中改定でようやく動く。期中改定で訪問看護にも処遇改善加算(加算率1.8%)が設けられた。令和7年度の統計は2026年3月までのサービス分なので、この改定は入っていない。改定の効果が数字に現れるのは、令和8年度の統計からだ。加算率1.8%がそのまま1人1月当たりの費用を押し上げたとしても、伸び率は2%に届かない。訪問介護の+4.1%と比べれば小さい。

4つ目に、利用者数の増加で伸びるサービスは、どこで利用者が増えているのかが問われる。この統計表からは、利用者の住まいが自宅なのか、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅なのかは分からない。2027年度改定に向けて集合住宅での訪問サービスの議論が進むなかで、訪問看護の利用者数の伸びの中身は今後の論点になり得る。自分のステーションの利用者のうち集合住宅に住む人の割合を、今のうちに数字で把握しておくとよい。

この試算の限界

  • 延べ受給者数と費用額は、審査月をもとにした年度累計(5月審査分〜翌年4月審査分)。実受給者数はサービス提供月をもとにした集計(4月〜翌年3月)。そのため、実受給者数で割った値(1人当たり利用月数、1人1年当たり費用)は、集計期間が1か月ずれた数字どうしの比になる。おおよその目安として読んでほしい
  • 伸び率の内訳(約8割・約2割など)は、伸び率を対数に直して足し算に分けた計算による
  • 介護保険の訪問看護だけを集計している。医療保険の訪問看護(訪問看護療養費)は含まれない。ステーションの売上の多くを占める医療保険の部分は、この分析の範囲外
  • 1人1月当たり費用は全国平均。地域による違い、要介護度の構成、事業所の規模の違いは反映していない
  • 2026年6月の期中改定は含まれない

介護費全体の伸び(12.2兆円)については、関連記事「介護費12.2兆円」で整理している。

出典

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執筆者

宮木

訪問看護ステーション経営者・救急看護認定看護師

大学病院 救命救急センター 5年 / 手術室 2年 / 大手訪問看護ステーション 5年 / 訪問看護ステーション設立・代表

小学生の頃から訪問看護師を志し、大学病院の救命救急センター・手術室で急性期医療の現場経験を積む。救急看護認定看護師の資格を取得後、大手訪問看護ステーションでの勤務を経て独立。現場と経営の両視点から、医療従事者に実践的な情報を届けます。

保有資格: 看護師免許 / 救急看護認定看護師 / BLSプロバイダー / ICLSプロバイダー

※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています

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