基本給は、12年で6,000円しか上がっていない——訪問看護師として、賃金のことを考える|訪問看護の年収は病院より低く、2026年6月の処遇改善加算は1.8%

Summary
給与明細を開くとき、少しだけ身構える——訪問看護師として賃金のことを、現場の視点で率直に綴ります。日本看護協会の調査では、病院看護職員の基本給は12年間でわずか6,000円弱の増加。訪問看護師の年収は病院より約26万円低いという事実もあります。2026年6月、訪問看護に初めて処遇改善加算1.8%がつきました。でも、その1.8%は本当に一人ひとりの手取りに届くのか。検証可能なデータに、現場の実感を重ねました。
「12年間で、6,000円弱」。 その数字を初めて見たとき、私は、驚くよりも先に、どこか納得している自分に気づきました。看護師の基本給が、この12年でそれだけしか上がっていない。給与明細を開くたびに感じていた、あの言葉にならない引っかかりの正体を、数字がひとつ、静かに言い当ててくれたような気がしたのです。
お給料は釣り合っているのだろうか、と、いつも心のどこかで考えてしまいます。今日は、その「釣り合わなさ」についての記事です。
「上がらない」には、裏づけがあった
日本看護協会が2025年6月に公表した「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」。そこに、目を疑うような数字がありました。
病院で働く看護職員の基本給月額は、2012年から2024年までの12年間で、わずか5,868円しか増えていなかったのです。率にして、約2.3%。給与の総額で見れば、手当などによって2万9,936円ほど増えてはいるものの、それはあくまで手当による上乗せであって、「基本給」という給与の土台そのものは、この12年間、ほとんど動いていませんでした。
12年です。その間に、物価は確実に上がりました。私たちの仕事の幅も、求められる医療の水準も、担う責任も、間違いなく重くなりました。それなのに、土台の数字は、6,000円弱。
この事実を知ったとき、私は驚いたというより、どこか「ああ、やっぱり」と納得してしまって、その納得が、少し悲しかったのを覚えています。給与明細を見るたびに感じていたあの小さな違和感は、気のせいではなかった。同じことを、全国のたくさんの看護師が、それぞれの明細の前で感じていたのだと思うと、その静かな広がりに、胸が詰まるような気持ちになりました。
訪問看護師の賃金は、さらに低いところにある
そして、もう一つ。この調査は、私たち訪問看護師にとって、さらに考えさせられる数字を示していました。
訪問看護ステーションで働く、正規フルタイムの看護師の年収は、平均で549万8,716円。同じ調査での病院勤務の看護師の平均576万2,314円と比べると、およそ26万円、低い金額でした。同じ看護師の資格を持ち、むしろ医師や先輩がすぐそばにいない環境で、ひとりで判断を求められる場面の多い訪問の現場で、賃金はこうして、下がるのです。
理由の一つは、夜勤手当なのだと思います。病院で働く看護師の収入には、夜勤の手当が含まれています。夜勤の負担は決して軽いものではありませんが、その分、給与には反映される。一方、訪問看護には、基本的に夜勤はありません。
けれど、その代わりに私たちが背負っているものがあります。オンコールです。
夜、枕元にスマートフォンを置いて眠ります。鳴らないでほしいと思いながら、でも、鳴ったらすぐに出られるように、心のどこかは起きている。そういう夜が、私たちにはあります。実際に電話が鳴って、暗い道を車で向かう夜もあります。手当という目に見える形にはなりにくいけれど、24時間、誰かの容態に責任を持っているという感覚は、病院で働いていた頃と、何も変わらないと思うのですが。


