医療制度
【施行直前】訪問看護の疑義解釈5公表|包括型療養費の人員配置・ベースアップ評価料の重要ポイント整理
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Summary
厚生労働省は2026年5月8日、診療報酬改定に関する疑義解釈(その5)を公表した。包括型訪問看護療養費の人員配置基準、ベースアップ評価料の運用詳細が明確化され、6月1日施行に向けた最終確認が進んでいる。経営者として今すぐ押さえるべき変更点と、現場運用への影響を整理する。
2026年5月8日、厚生労働省は2026年度診療報酬改定に関する疑義解釈(その5)を公表した。これは6月1日施行を目前に控えた、医療現場からの「疑問」(疑義)への厚生労働省の公式回答である。
訪問看護に関わる主な内容は、包括型訪問看護療養費の人員配置基準、ベースアップ評価料の運用詳細、その他の新設加算の取り扱いだ。施行直前期の最終確認資料として、訪問看護経営者・管理者が必ず目を通すべき内容となっている。
私自身、経営者として10年余り運営してきた経験から言えば、改定施行直前期の疑義解釈こそが、現場運用の成否を分ける情報源である。本記事では、5月8日の疑義解釈(その5)のポイントを整理し、経営者として今すぐ取るべき対応を考察する。
疑義解釈とは
まず、疑義解釈という制度について確認しておきたい。
制度の位置づけ
GemMedの解説によれば、疑義解釈は以下のように位置づけられている。
2026年度診療報酬改定については、2月13日に中央社会保険医療協議会で答申が行われ、3月5日には新点数表や施設基準の告示等が行われるとともに、関連通知が発出されている。改定の姿が明らかになってきているが、その分、細部について医療現場からさまざまな「疑問」(疑義)が出される。疑義解釈は、こうした医療現場の疑問に厚労省が回答を行うものである。
つまり疑義解釈は、改定の本文や告示文書では明示されていない細部について、厚生労働省が公式に解釈を示す文書である。算定の可否を判断する際の重要な根拠となる。
疑義解釈の発出スケジュール
2026年度改定の疑義解釈は、以下のスケジュールで発出されてきた。
- 疑義解釈(その1): 3月中旬
- 疑義解釈(その2): 4月上旬
- 疑義解釈(その3): 4月中旬
- 疑義解釈(その4): 4月下旬
- 疑義解釈(その5): 5月8日
- 今後も五月雨式に追加発出予定
施行が近づくにつれて、より具体的な疑義解釈が積み重なる構造となっている。経営者として、これらすべてを継続的にフォローする必要がある。
経営者・管理者が押さえるべき理由
疑義解釈は、単なる「補足情報」ではない。実地指導や監査の際に、厚生労働省の解釈と異なる算定をしていれば、返還指導の対象となる可能性がある。
経営者として、疑義解釈を見落としていたために、後から返還指導を受けるケースは少なくない。施行前に確認できる情報は、確実に押さえておくことが、リスク管理の基本となる。
疑義解釈(その5)の主要ポイント
ここから、5月8日に公表された疑義解釈(その5)の訪問看護に関わる主要ポイントを整理する。
ポイント1: 包括型訪問看護療養費の人員配置基準
包括型訪問看護療養費は、2026年6月1日に新設される画期的な算定方式である。同一建物に居住する利用者への訪問看護を、効率的な仕組みで評価する制度設計だ。
疑義解釈(その5)では、この包括型療養費の人員配置基準について、さらに明確化が行われた。
第一に、夜間対応を行う看護職員の数の計算方法が明示された。包括型訪問看護療養費を算定する利用者数が30人以下の場合は「常時1名以上」、31人から80人の場合は「常時2名以上」、81人以上の場合は「50人ごとに1人を加えて得た数」以上の配置が必要となる。
第二に、夜間対応看護職員と他業務の兼務の可否が示された。包括型訪問看護療養費を算定する利用者への指定訪問看護の実施に影響を与えない範囲であれば、建物内の包括型訪問看護療養費を算定しない他の利用者への指定訪問看護に従事することは可能だ。
ただし、建物外の利用者への指定訪問看護実施等との兼務はできない。これは経営の柔軟性を一定程度認めつつも、夜間対応の確実性を担保する設計となっている。
第三に、看護職員の負担軽減・処遇改善に資する体制整備が要件として明示された。これは、単に人数を揃えればいいという話ではなく、看護師が安心して働ける環境作りまで含めた要件である。
ポイント2: ベースアップ評価料(II)の36区分の運用
ベースアップ評価料(II)は、2026年6月から18区分から36区分に拡大される。きめ細かく賃金改善実績を評価する制度設計だ。
疑義解釈(その5)では、36区分の運用について、現場で疑問が多かった点が明確化された。
第一に、区分の選択タイミングについて。ステーションの賃金改善実績に基づいて、最も適合する区分を選択することになるが、年度途中での区分変更の可否、選択ミスの修正方法などが整理された。
第二に、評価料(II)の対象職員の範囲。「主として医療に従事する職員」の解釈が、さらに具体化された。看護師、准看護師、保健師、助産師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士に加えて、補助的事務職員の取り扱いも整理されている。
第三に、2/3ルールの実装方法。ベースアップ評価料収入の3分の2以上を基本給または月例手当に充当する義務について、具体的な実装方法が示された。賃金改善計画書での記載例、給与台帳での区別方法、実績報告書の証明方法など、実務上の疑問が解消されつつある。
ポイント3: 訪問看護物価対応料の算定取り扱い
5月8日の疑義解釈では、新設される訪問看護物価対応料の算定実務についても、いくつかの点が明確化された。
第一に、同一日に複数回訪問した場合の取り扱い。1日に同一利用者へ複数回訪問した場合、物価対応料はどう算定するかが整理された。
第二に、包括型訪問看護療養費との関係。包括型を算定する利用者については、物価対応料2(20円)が適用されることが改めて確認された。
第三に、レセプト記載方法の具体例。請求実務上の記載方法、計算方法の具体例が示された。
ポイント4: 訪問看護医療DX情報活用加算
訪問看護医療DX情報活用加算(月1,000円)の算定要件について、さらに具体的な解釈が示された。
第一に、「セキュリティが確保された電子的な方法」の具体例。個人の無料メッセージアプリは要件を満たさず、セキュリティ対策が講じられた連携システムが必要となる。
第二に、医師側の入力義務の有無。医師側での入力は必須ではなく、医師が電子カルテに入力した内容を看護師が閲覧できる体制でも要件を満たし得る。これは医師の業務負担への配慮として重要なポイントだ。
第三に、グループチャットへの担当スタッフの参加方法。管理者だけでなく、訪問担当スタッフがグループチャットに参加して、訪問前に情報確認できる仕組みが推奨される。
ポイント5: 機能強化型訪問看護管理療養費の要件
機能強化型訪問看護管理療養費1〜4型について、要件の解釈が一部明確化された。
第一に、ターミナルケア実績のカウント方法。「年間20件以上」「年間5件以上」といった実績要件について、何をもって「ターミナルケア実績」とカウントするかの基準が示された。
第二に、医療依存度の高い利用者の範囲。「特掲診療料の施設基準等別表第7・第8該当者」のカウントに含める条件が明確化された。
第三に、研修要件の運用。看護職員の研修要件について、オンライン研修の取り扱い、年間研修時間のカウント方法などが整理された。
経営者として今すぐ取るべき対応
5月8日の疑義解釈を踏まえて、経営者として今すぐ取るべき対応を整理する。
対応1: 疑義解釈の原文確認
まず、厚生労働省のウェブサイトで疑義解釈(その5)の原文を確認することが最優先である。GemMedをはじめとする業界メディアの解説記事は参考になるが、最終的な判断根拠は原文となる。
- 自ステーションが算定する予定の加算
- 不明点が残っていた事項の解釈
- 過去の自己解釈との整合性
- 体制届の内容との整合性
5月8日の発出から、すでに2週間以上が経過している。まだ確認していない経営者は、今日にも確認すべき内容だ。
対応2: 体制届の見直し
ベースアップ評価料、介護職員等処遇改善加算の体制届はすでに提出済みのステーションが多いだろう。5月8日の疑義解釈を踏まえて、提出内容に修正が必要な箇所がないか確認する。
- 自治体への問い合わせ
- 体制届の修正提出
- 賃金改善計画の見直し
- スタッフへの説明資料の更新
特に、ベースアップ評価料(II)の36区分選択について、疑義解釈で明確化された解釈と、自社の選択が整合しているか確認する必要がある。
対応3: 包括型療養費を算定するかの判断
包括型訪問看護療養費の人員配置基準が明確化されたことで、自ステーションがこれを算定するかの判断材料が揃った。
- 同一建物利用者の人数規模
- 夜間対応看護職員の確保見込み
- 看護職員の負担軽減・処遇改善体制
- 既存の運営体制との整合性
経営者として、包括型を算定するメリットとデメリットを冷静に比較し、自ステーションにとって最適な判断を下す必要がある。
対応4: 訪問看護医療DX情報活用加算の準備
訪問看護医療DX情報活用加算の算定には、セキュリティが確保された連携システムの整備が必要となる。
- 連携先医療機関との連携システム
- 主治医との情報共有の仕組み
- ケアマネジャーとの連携
- 多職種カンファレンスのオンライン化
- スタッフのICTリテラシー研修
これらの整備には数か月の時間がかかる場合もある。6月1日施行から逆算すれば、5月中に体制整備を完了させる必要がある。
対応5: スタッフへの最新情報の共有
疑義解釈で明確化された内容は、現場スタッフにも共有する必要がある。
- 自ステーションが算定する加算の最新ルール
- 訪問記録の記載方法の変更
- 連携先との情報共有方法
- スタッフ自身の処遇への影響
5月のうちに、全スタッフに対する説明会を開催することが望ましい。30分から1時間程度の時間で、改定の全体像と自ステーションの対応方針を伝える機会を設けるべきだ。
6月1日施行に向けた最終チェックリスト
ここで、6月1日施行に向けた最終チェックリストを整理する。経営者として、施行までの残り期間で確認すべき事項のリストである。
体制届関連
- ベースアップ評価料(I)(II)の届出完了確認
- 介護職員等処遇改善加算の体制届完了確認
- 24時間対応体制加算の体制継続確認
- 機能強化型訪問看護管理療養費の届出継続確認
- 訪問看護医療DX情報活用加算の届出準備
賃金関連
- 賃金改善計画書の最終確認
- 給与システムでの新ルール反映確認
- 6月支給給与での反映準備
- スタッフへの賃金改善通知
システム関連
- レセプトソフトのアップデート確認
- 新加算の自動算定設定
- 訪問記録システムの記載項目変更
- 連携システムのセキュリティ確認
運用関連
- 訪問記録の記載方法の標準化
- 算定根拠資料の保存方法の整備
- スタッフ研修の実施完了
- 連携先(医師、ケアマネ等)への新ルール周知
リスク管理関連
- 体制届の写し保存
- 賃金改善計画書の保存
- 疑義解釈の原文保存
- 算定根拠資料の整理方法確立
これらすべてを5月末までに完了させることが、6月1日からの円滑な算定開始の前提となる。
疑義解釈を見落とすことの経営リスク
ここで、疑義解釈を見落とすことの経営リスクについて整理しておきたい。
リスク1: 不適切算定による返還指導
疑義解釈の内容を反映せずに算定を続けると、後の実地指導で「不適切算定」と判断される可能性がある。
- 過去の請求分の返還
- 加算金の支払い
- 信頼性低下
- 場合によっては指定取消
返還額が大きい場合、ステーションの経営継続を脅かすほどの影響となる。
リスク2: スタッフの不信
疑義解釈の内容を理解せずにスタッフに説明していると、後で「あの時の説明と違う」という不信感を生む可能性がある。
スタッフの信頼は、経営者の最も大切な資産の一つである。疑義解釈の最新情報を踏まえた、正確な説明を心がける必要がある。
リスク3: 利用者・ご家族への説明不足
加算の取り扱いが変わると、利用者・ご家族の自己負担額にも影響する場合がある。疑義解釈で明確化された内容を踏まえて、利用者・ご家族への説明を適切に行う必要がある。
リスク4: 連携先との認識違い
主治医、ケアマネジャー、訪問介護員などの連携先との間で、加算算定の認識に違いがあると、利用者ケアの質に影響する可能性がある。疑義解釈を踏まえた最新情報を、連携先と共有することが必要となる。
疑義解釈の継続フォローの仕組み作り
疑義解釈は、今後も五月雨式に追加発出される。経営者として、継続的なフォローの仕組みを作ることが、長期的な経営の質に直結する。
仕組み1: 定期的な情報収集の習慣化
経営者として、週に一度は厚生労働省のウェブサイトを確認する習慣を持つ。
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」のページ
- 厚生労働省「介護保険最新情報」
- 中央社会保険医療協議会の議事資料
- 業界専門メディアの解説記事
これを毎週金曜日の午後など、定期的なルーティンに組み込むことが、見落とし防止につながる。
仕組み2: 情報の社内共有体制
経営者だけが情報を把握しているのではなく、管理者・主任クラスのスタッフとも共有する体制を作る。
- 月次経営会議での疑義解釈レビュー
- 重要情報の即時シェア(Slack、LINE等)
- 月次の制度変更まとめドキュメントの作成
- 顧問税理士・社労士との定期相談
組織として情報感度を高めることが、リスク管理の基盤となる。
仕組み3: 外部リソースの活用
経営者一人ですべての情報を追うのは、現実的に困難である。外部リソースを活用することも有効な選択肢となる。
- 顧問税理士(医療・介護に強い専門家)
- 社会保険労務士(訪問看護専門)
- 経営コンサルタント
- 業界団体(全国訪問看護事業協会等)
- 業界専門メディア(HokanPress他)
これらを組み合わせて、自ステーションに最適な情報収集体制を作ることが、経営の質を高める。
仕組み4: 同業者との情報交換
地域の同業ステーション経営者との情報交換も、極めて有効な手段である。
「うちはこの疑義解釈をこう解釈した」「うちの体制届はこう書いた」という情報交換が、自社の判断の精度を高める。
ただし、競争関係にある同業者との情報交換には限界もある。信頼関係を築ける相手を、複数持つことが重要となる。
経営者として持つべき視点
最後に、疑義解釈と向き合う経営者として持つべき視点を整理する。
視点1: 「制度を理解する経営者」が勝つ
訪問看護経営において、制度の正確な理解は、経営の差別化要因となる。
制度を曖昧にしか理解していない経営者は、加算の取りこぼし、返還リスク、運営の非効率性を抱え続ける。一方、制度を正確に理解している経営者は、適切な算定で収益を最大化し、運営の効率性を高められる。
5月8日の疑義解釈のような情報を、いち早く正確に理解することが、経営の競争力に直結する。
視点2: 「分からない」をそのままにしない
疑義解釈を読んでも、解釈に迷う場面は必ずある。その時、「分からない」をそのままにしないことが重要だ。
- 厚生労働省への問い合わせ(各地方厚生局)
- 顧問税理士・社労士への相談
- 業界団体への確認
- 同業者経営者との議論
「分からない」を放置すると、必ず後で経営課題として表面化する。早期に解決する姿勢が、長期的な経営安定につながる。
視点3: スタッフを巻き込む
疑義解釈の理解は、経営者一人の仕事ではない。管理者、主任クラス、事務担当者を巻き込むことで、組織全体の理解レベルが上がる。
- 多角的な視点での解釈
- 現場運用への落とし込みがスムーズ
- スタッフの制度理解度向上
- 組織としての一体感
経営者として、知識を独占するのではなく、組織で共有する姿勢が重要となる。
視点4: 中長期視点でのリスク管理
5月8日の疑義解釈は、目の前の制度対応である。同時に、中長期視点でのリスク管理も意識する必要がある。
- 2027年改定での変更可能性
- 2029年改定での評価方法の変化
- 業界全体のトレンド変化
- 経営戦略の見直し
目の前の制度対応に追われながらも、3年後、5年後の視点を持ち続けることが、経営者の責務である。
まとめ
2026年5月8日に公表された疑義解釈(その5)は、6月1日施行を目前に控えた、訪問看護経営者にとって極めて重要な情報源となる。包括型訪問看護療養費の人員配置基準、ベースアップ評価料の運用詳細、訪問看護医療DX情報活用加算の要件、機能強化型訪問看護管理療養費の解釈——どれも経営に直接影響する内容である。
経営者として、疑義解釈の原文確認、体制届の見直し、スタッフへの情報共有、6月1日施行への最終準備を、5月末までに確実に完了させることが求められる。
施行直前期の今、確認すべきことを確認し、対応すべきことを対応する。当たり前のことの積み重ねが、結果として経営の質を高める。残り少ない準備期間を、着実に活用していただきたい。
訪問看護業界は、2026年改定を機に大きな転換点を迎える。経営者として、この転換点を自ステーションの成長機会として活かすか、混乱の中で立ち止まるかは、まさに今の準備にかかっている。
HokanPressでは、訪問看護経営に影響する制度変更について、引き続き最新情報を発信していく。
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執筆者
宮木
訪問看護ステーション経営者・救急看護認定看護師
大学病院 救命救急センター 5年 / 手術室 2年 / 大手訪問看護ステーション 5年 / 訪問看護ステーション設立・代表
小学生の頃から訪問看護師を志し、大学病院の救命救急センター・手術室で急性期医療の現場経験を積む。救急看護認定看護師の資格を取得後、大手訪問看護ステーションでの勤務を経て独立。現場と経営の両視点から、医療従事者に実践的な情報を届けます。
保有資格: 看護師免許 / 救急看護認定看護師 / BLSプロバイダー / ICLSプロバイダー
※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています