訪問看護

訪問看護の27.2%が赤字、12.1%が持ち出しで訪問している——日本看護協会の実態調査651事業所|特別地域加算の算定は2.9%

(更新: ·6分で読めます
訪問看護の27.2%が赤字、12.1%が持ち出しで訪問している——日本看護協会の実態調査651事業所|特別地域加算の算定は2.9%

Summary

日本看護協会が「令和9年度介護報酬改定等に向けた訪問看護実態調査」の報告書を公表しました。651事業所の回答です。2024年度の収支差率は27.2%が赤字。介護保険の利用限度額を超え、利用者負担か事業所の持ち出しで訪問したケースがあった事業所は12.1%。特別地域訪問看護加算を算定しているのは2.9%。9月16日の分科会で三団体が示した要望の根拠が、ここにあります。

目次6項目
  1. 01赤字は27.2%。ただし小さい事業所ほど多い
  2. 02制度の上限を超えている
  3. 03加算は2.9%にしか届いていない
  4. 0488.5%に認定看護師も専門看護師もいない
  5. 05質を測る物差しが現場にない
  6. 06ほかにも数字はある

介護保険の利用限度額を超えて訪問した事業所が、12.1%ありました。

限度額を超えた分は保険から出ません。利用者が自費で払うか、事業所が持ち出すことになります。それでも訪問した事業所が、651のうち79ありました。

日本看護協会が公表した「令和9年度介護報酬改定等に向けた訪問看護実態調査」の報告書です。全国2,000事業所に送り、651件の有効回答を得ました。回収率33.0%。調査は2025年11月から12月にかけて行われ、10月1日時点の状況を尋ねています。

9月16日の介護給付費分科会で、日本訪問看護財団と全国訪問看護事業協会が2027年度改定に向けた要望を述べました。賃金改善分を本体報酬へ、特別地域・中山間地域加算の加算率の見直し、夜間の緊急訪問の算定要件の見直し。その根拠が、この報告書に並んでいます。

赤字は27.2%。ただし小さい事業所ほど多い

2024年度の収支差率を聞いた設問では、赤字にあたる0%未満が27.2%でした。黒字が49.5%、無回答が23.3%です。マイナス20%を下回る事業所も8.4%あります。

無回答を除けば、答えた499事業所のうち177件が赤字。35.5%になります。編集部の試算です。

規模別に見ると傾向がはっきりします。看護職員が3人未満の事業所では41.2%が赤字。7人以上10人未満では20.0%、10人以上15人未満では16.3%まで下がります。

ただ、最も赤字が多かったのは3人未満ではありませんでした。3.5人以上4人未満の層で44.7%です。

指定の要件は常勤換算2.5人。そこをわずかに超えたところに、最も苦しい層がいます。人を増やした分の人件費を、訪問件数で回収できていない。調査はその理由まで聞いていませんが、数字はそう読めます。

この調査での看護職員数は平均6.1人、中央値5人でした。

制度の上限を超えている

冒頭の12.1%に戻ります。

2025年7月から9月の3か月間で、介護保険の利用限度額を超えて頻回または長時間の訪問が必要になり、利用者負担または事業所の持ち出しで訪問した。そうしたケースがあった事業所が79ありました。

医療保険側も同じです。特別訪問看護指示書の有効期間は14日。それを超えて頻回または長時間の訪問が必要になり、やはり利用者負担か持ち出しで訪問した事業所が10.8%、70事業所ありました。

どちらも1割を超えています。

利用者の状態を見ると、介護保険側は「その他」が63.3%で突出していました。急性増悪が22.8%、難治性皮膚潰瘍が17.7%、がん以外の終末期が15.2%と続きます。

「その他」が6割。用意された選択肢に当てはまらない事情で、限度額を超えている。何が起きているのかは、この調査からは分かりません。

医療保険側は違いました。急性増悪とがん以外の終末期がそれぞれ35.7%、難治性皮膚潰瘍が31.4%。14日では足りない状態像が、はっきり出ています。

2026年度改定は、訪問の回数と時間に線を引く方向で動きました。20分未満は算定できない。前回訪問から2時間未満の短時間訪問は合算する。不適切な頻回訪問への対応です。

一方でこの調査が示したのは、逆側の実態でした。足りない。だから持ち出す。それが1割を超える事業所で起きています。

加算は2.9%にしか届いていない

9月16日の要望に、特別地域加算と中山間地域等における小規模事業所加算の加算率見直しが入っていました。

算定状況はこうです。特別地域訪問看護加算が2.9%。中山間地域等における小規模事業所加算が1.7%。中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算が3.2%。

対象地域が限られているので、低いのは当然とも言えます。ただ、19,000を超える事業所のうち、地域加算が届いているのはごく一部だということでもあります。

移動の数字も出ていました。事業所から最も時間がかかる利用者宅まで、訪問手段は自動車が79.6%。移動時間は平均29.8分、距離は片道で平均14.1キロメートル。60分以上かかる事業所が5.3%あります。

片道30分なら、往復で1時間。その日の訪問件数は、それだけで削られます。

当メディアでは以前、燃料費が訪問看護の収支に与える影響は0.13%程度で誤差の範囲だと試算しました。重いのは車両の固定費と事故リスクだと書いています。ただしその前提は、訪問先が半径数キロに収まる地域でした。片道14.1キロが平均であれば、話は変わります。

88.5%に認定看護師も専門看護師もいない

専門性の配置は、想像以上に限られていました。

A課程またはB課程の認定看護師、あるいは専門看護師がいる事業所は11.5%。どちらもいない事業所が88.5%です。特定行為研修の修了者がいる事業所は6.6%でした。

規模の差が大きく出ています。看護職員15人以上では50.0%に認定看護師か専門看護師がいますが、3人未満では5.9%です。

専門管理加算を算定しているのは3.2%、21事業所でした。特定行為研修の修了者がいるのは43事業所。そのうち加算を算定しているのは8事業所にとどまります。

この加算は、医師が手順書を交付した利用者にしか算定できません。修了者を抱えていても、手順書がなければ報酬に反映されない。当メディアで特定行為研修を扱った際に指摘した構造が、数字として出た形です。

機能強化型訪問看護管理療養費は、届出なしが79.4%でした。

質を測る物差しが現場にない

報告書の終盤に、気になる設問があります。ケアの質の評価方法です。

最も多い回答は「定まった評価指標はない」で41.8%。次が自事業所・法人のオリジナル指標で25.7%。全国訪問看護事業協会のガイドラインが14.7%、日本訪問看護財団のガイドが5.5%でした。

何らかの質評価を行っている事業所は70.7%あります。ただ、その多くは共通の指標に基づいていません。

6月の介護給付費分科会で、厚生労働省は訪問看護の論点として「より質の高い訪問看護サービスを効果的・効率的に提供する事業所を適切に評価するためにはどのような方策が考えられるか」を掲げました。2027年度改定の中心にある問いです。

評価するには物差しが要ります。その物差しを、4割の事業所が持っていない。既存のガイドラインを使っているのは、合わせて2割です。

ほかにも数字はある

扱いきれなかったものを、いくつか挙げます。

情報共有にICTを使っていない事業所が28.3%ありました。郵送とメールとFAXだけです。看護職員3人未満では45.1%がそう答えています。

精神科訪問看護の利用者数は平均10.4人。ただし中央値は1人で、標準偏差は25.4。50人以上を抱える事業所が5.1%あります。特化している事業所と、ほとんど受けていない事業所に分かれています。

ターミナルケア加算を算定できなかったケースがあった事業所は8.1%。理由の半数近くが「算定要件を満たす前に在宅看取りとなった」でした。看取りまで付き添って、算定できない。

開設年は2020年から2024年が33.6%を占めます。3分の1が直近5年の開設です。開設主体は営利法人が49.0%、医療法人が23.7%。

同一法人が医療・介護施設を持つ事業所は73.7%。そのうち同一敷地内または隣接する施設があるのは72.5%でした。掛け合わせると、全体の約53%になります。編集部の試算です。

10月から12月にかけて、分科会では個別の単位数と要件が議論されます。そこで何が言われるかは、この651件の回答と無関係ではありません。

自事業所の収支差率はどこに入るか。最も遠い利用者まで何分かかるか。限度額を超えて訪問した月はなかったか。質の評価に何を使っているか。報告書と並べてみると、自分たちの位置が見えます。報告書は日本看護協会のサイトで公開されています。

Share
印刷

執筆者

HokanPress編集部

医療・看護・介護の多職種チーム

訪問看護・在宅医療の現場に携わる多職種チーム

HokanPress編集部は、訪問看護・在宅医療の現場に実際に携わる多職種チームで構成されています。看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士、介護支援専門員(ケアマネジャー)が所属。それぞれの専門分野で培った臨床経験と専門知識をもとに、医療・看護・介護従事者の実務に役立つ情報を発信しています。記事は必ず該当分野の有資格者が執筆または監修し、公的統計データや学会発表・厚生労働省の公表資料など、信頼性の高い情報源に基づいて作成しています。

保有資格: 看護師 / 理学療法士 / 作業療法士 / 言語聴覚士 / 医療ソーシャルワーカー / 管理栄養士 / 介護支援専門員

※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています

関連記事

コメント

読み込み中...

コメントを投稿