訪問看護遠隔診療補助料は 1日2,650円——へき地限定が 外れ、 介護保険側は 月1回314単位

Summary
2026年度の診療報酬改定で、訪問看護遠隔診療補助料が新設されました。医師がオンラインで診療し、看護師が利用者宅で同席する形を、訪問看護ステーション側が算定できます。1日につき2,650円。改定前はへき地・離島に限られ、ステーション側の報酬もありませんでした。定期訪問のなかで行う場合は算定できず、介護保険の利用者には別の取扱いが疑義解釈で示されています。線引きを整理します。
目次8項目
医師がオンラインで診療し、その場に訪問看護師が同席する。この形をD to P with Nと呼びます。医師、患者、そして看護師の頭文字です。
2026年度の診療報酬改定で、この訪問を訪問看護ステーション側が算定できる項目が新設されました。訪問看護遠隔診療補助料、1日につき2,650円です。
これまでとの違いは二つあります。制度上、へき地や離島に限定されていた地域の要件が外れました。そして、訪問看護ステーション側に報酬がありませんでした。看護師が同席しても、ステーションの収入にはならなかったということです。
当メディアで物価対応料を扱った際にこの項目に触れましたが、詳しく取り上げるのは今回が最初になります。
算定できる場面、できない場面
線引きが細かいので、順に確認します。
まず、定期的な訪問看護のなかでオンライン診療の補助を行う場合。これは算定できません。通常どおり訪問看護療養費を算定します。すでに訪問している時間のなかで医師とつないだ、という形です。
算定できるのは、定期的な訪問看護とは別に、オンライン診療の補助だけのために利用者宅を訪問した場合です。訪問看護計画書に予定されていない訪問、ということになります。
もう一つの分岐が、誰が訪問したかです。オンライン診療を行う医師が自院の看護師に指示して訪問させた場合は、医療機関がC005-1-3の訪問看護遠隔診療補助料を算定します。訪問看護ステーションの看護師が訪問した場合は、ステーションが訪問看護遠隔診療補助料を算定します。
同じ利用者、同じ診療補助について、医療機関と訪問看護ステーションの両方が算定することはできません。判断の基準は、どこの看護師が訪問したかです。
有料老人ホームでの取扱い
同一建物に関わる規定もあります。
同一の患家、または有料老人ホーム等でその形態から建物全体を同一の患家とみなすべきものにおいて、看護師等が2人以上の患者の診療の補助を行った場合、2人目以降の患者については訪問看護遠隔診療補助料を算定せず、初診料・再診料・外来診療料のいずれかと特掲診療料のみを算定することとされています。
ただし例外があります。2人目以降の各患者の診療に要した時間が1時間を超えた場合は、訪問看護遠隔診療補助料を算定し、その旨をレセプトの摘要欄に記載します。
当メディアで同一建物の扱いを繰り返し扱ってきましたが、新設の項目にも同じ考え方が入っています。1回の訪問で複数の利用者に対応できる場合は、その効率を評価から差し引くという方向です。
介護保険の利用者はどうなるか
ここが、あまり知られていない部分です。
訪問看護遠隔診療補助料は医療保険の項目です。では、介護保険で訪問看護を利用している人にオンライン診療の補助を行った場合はどうなるか。
疑義解釈で、次期介護報酬改定までの間の取扱いが示されています。訪問看護指示書の有効期間内で、訪問看護計画書に予定された訪問看護がない場合のオンライン診療の補助については、訪問看護費のうち所要時間20分未満の区分を算定します。指定訪問看護ステーションの場合は314単位、病院または診療所の場合は266単位。介護予防訪問看護費では、それぞれ303単位と256単位です。
いずれも算定は月1回に限られます。
また、計画に基づく訪問看護の実施時にオンライン診療の補助も行った場合は、計画的な訪問看護に要した時間に補助の時間を合算した時間区分の訪問看護費を算定します。
医療保険が1日2,650円、介護保険が月1回314単位。金額の水準も、算定の頻度も違います。自事業所の利用者がどちらの保険かによって、扱いが変わります。
指示書がない利用者の場合
もう一つ、疑義解釈が示している場面があります。
連携する保険医療機関からの依頼を受けて、訪問看護指示書の交付がない利用者に対し、訪問看護計画書に基づく指定訪問看護以外の場面でオンライン診療の補助を行った場合です。
在宅で療養している、または緊急に診療を要する患者で通院が困難な人に対し、医師が看護師等の同席のもとで診療を行う必要があると判断し、患者の同意を得て看護師等が訪問した場合。このときは、保険医療機関がC005-1-3の訪問看護遠隔診療補助料を算定し、医療機関とステーションの間で合議のうえ費用を精算します。
ステーションが直接請求するのではなく、医療機関が算定して分ける形です。連携先の医療機関と、事前に取り決めておく必要があります。
物価対応料との関係
実務上の注意点です。
訪問看護遠隔診療補助料を算定する日には、訪問看護物価対応料を算定できません。当メディアで扱ったとおり、物価対応料は月の初日の訪問で60円、2日目以降で20円です。金額の差は大きく、どちらを取るかで迷う場面はありませんが、請求ソフトの設定にこの併算定不可が反映されているかは確認が必要です。
どういう場面で使うか
制度としては整いましたが、実際にどう使うかは事業所ごとに考えることになります。
想定されているのは、通院が困難な利用者について、医師が直接診る必要があるものの往診までは組めない場面です。皮膚の状態を見てもらう、薬の調整を相談する、症状が変わったときに判断を仰ぐ。看護師が同席していれば、医師の指示で創部を触って見せることも、聴診器を当てて音を伝えることもできます。
当メディアで離職の構造を論じた際、訪問看護師が辞める理由の共通項の一つを判断の孤独と整理しました。利用者宅で一人で医学的な判断を求められることが、この仕事の負担の中心にあります。その場で医師とつながれる手段が増えることには、報酬とは別の意味があります。
ただし、算定できるのは定期訪問とは別に訪問した場合です。その日の訪問予定に1件追加することになるため、時間の余裕がなければ組めません。当メディアで訪問件数の地域差を扱った際に書いたとおり、1日に回れる件数には上限があります。
事業所が確認すること
導入を検討するなら、確認する順番があります。
連携している医療機関がオンライン診療を行っているか。訪問看護遠隔診療補助料は、医師がオンライン診療を行うことが前提です。医療機関側に体制がなければ成立しません。
利用者の保険が医療保険か介護保険か。算定できる項目と頻度が変わります。
そして、どの場面で使うかを医療機関と事前に決めておくこと。指示書のない利用者については、医療機関が算定して合議で精算する形になります。その取り決めを後からするのは難しくなります。
使われるかどうかは、これから
改定前のD to P with Nは、地域が限定され、ステーション側の報酬もなく、実施する事業所はほとんどなかったとされています。
今回、その二つが変わりました。地域の限定が外れ、ステーションが算定できる項目ができた。ただ、医療機関側の体制と、ステーション側の訪問の余力という条件は残ります。
日本看護協会の実態調査では、情報共有にICTを使っていない訪問看護事業所が28.3%ありました。郵送とメールとファクスだけ、という事業所です。オンライン診療の補助という新しい形が、どこまで広がるか。次の改定に向けた議論では、算定回数が一つの材料になります。
当メディアで特定行為研修を扱った際、加算はあるのに医師の手順書がなければ算定できない構造を指摘しました。この項目も、医療機関側が動かなければ算定に至りません。制度が整うことと、使われることの間には距離があります。
関連記事
執筆者
医療・看護・介護の多職種チーム
訪問看護・在宅医療の現場に携わる多職種チーム
HokanPress編集部は、訪問看護・在宅医療の現場に実際に携わる多職種チームで構成されています。看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士、介護支援専門員(ケアマネジャー)が所属。それぞれの専門分野で培った臨床経験と専門知識をもとに、医療・看護・介護従事者の実務に役立つ情報を発信しています。記事は必ず該当分野の有資格者が執筆または監修し、公的統計データや学会発表・厚生労働省の公表資料など、信頼性の高い情報源に基づいて作成しています。
保有資格: 看護師 / 理学療法士 / 作業療法士 / 言語聴覚士 / 医療ソーシャルワーカー / 管理栄養士 / 介護支援専門員
※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています


