訪問看護

乳幼児加算が1,400円になった——小児の訪問看護利用者は12年で3.5倍、受けている事業所は4割台

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乳幼児加算が1,400円になった——小児の訪問看護利用者は12年で3.5倍、受けている事業所は4割台

Summary

2026年度の診療報酬改定で、訪問看護基本療養費の乳幼児加算のうち超重症児等以外の区分が1,300円から1,400円に引き上げられました。医療保険で訪問看護を利用する小児は、2011年の2,850人から1万17人へ増えています。一方、小児の訪問看護を実施している事業所は4割台という調査があります。100円の引き上げが何を変えるのか、受け入れが進まない理由と合わせて整理します。

目次7項目
  1. 01利用者は12年で3.5倍
  2. 02受けている事業所は4割台
  3. 03なぜ受けられないのか
  4. 04乳幼児加算の中身
  5. 05保育園と学校という課題
  6. 06受けるかどうかを決めるときに
  7. 07100円が意味すること

2026年度の診療報酬改定で、訪問看護基本療養費の乳幼児加算が見直されました。超重症児等以外の区分について、1,300円から1,400円への引き上げです。

100円。1回の訪問あたりの金額です。

当メディアでは2026年度改定について、管理療養費の細分化、実施時間の記録、同一建物の区分、機能強化型4の新設などを扱ってきました。小児に関わる改定を取り上げるのは、この記事が最初になります。それ自体が、この分野の扱われ方を表しているのかもしれません。

利用者は12年で3.5倍

まず、どれだけの子どもが訪問看護を使っているかを確認します。

訪問看護療養費実態調査をもとにした集計では、医療保険での小児、0歳から14歳の訪問看護利用者数は1万17人でした。2011年の2,850人と比べると、12年で3.5倍を超えています。

背景にあるのは医療の進歩です。新生児集中治療室などに長期入院した後、人工呼吸器や胃ろうを使い、たんの吸引や経管栄養といった医療的ケアが日常的に必要な子どもが、自宅で暮らせるようになりました。こうした子どもを医療的ケア児と呼びます。全国で約2万人と推計されています。

2021年には医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律が施行され、支援体制の強化が国の方針になりました。

受けている事業所は4割台

では、訪問看護ステーションのうち、どれだけが小児を受けているか。

日本在宅ケア学会誌に掲載された調査があります。全国の訪問看護事業所4,972か所にファクスでアンケートを送り、2,023か所から回答を得たもので、回収率は40.7%です。

このうち、小児の訪問看護を実施している事業所は882か所、43.6%でした。小児の訪問看護利用者数は4,272人で、0歳から6歳未満が55.1%、6歳から18歳未満が44.9%。都道府県別では神奈川県、東京都、愛知県の順に多くなっています。

利用者のうち医療的ケア児は72.4%。そのうち運動機能が座位までの子どもが88.9%、歩行可能な子どもが11.1%でした。医療的ケアを必要としない小児も27.6%います。

医療的ケアの内容は、経管栄養、吸引、気管切開の順に多く、そのほか機械による排痰ケア、浣腸、人工肛門の管理が挙げられています。

回答した事業所に限った数字であり、回答しなかった事業所を含めれば割合は変わる可能性があります。それでも、小児を受けている事業所が全体の一部にとどまることは読み取れます。

なぜ受けられないのか

理由はいくつかあります。

経験の問題があります。訪問看護に従事する看護師の多くは、成人の病棟からの転職です。小児科や新生児集中治療室の経験がある看護師は限られます。子どもの体は小さく、薬の量も機器の設定も成人とは違います。経験のない看護師が1人で訪問するには、相応の準備が要ります。

当メディアで既卒看護師の教育を扱った際、独り立ちまでの同行訪問の設計が事業所によってばらつくことを指摘しました。小児の場合、その同行をどれだけ確保できるかが、受け入れの可否を左右します。経験のある看護師が事業所にいなければ、同行そのものが組めません。

時間の問題もあります。小児の訪問では、ケアに加えて家族への説明と相談の時間が必要になります。母親が医療的ケアのほとんどを担っている家庭が多く、その負担をどう支えるかが訪問の中身に含まれます。1件あたりの滞在時間が長くなれば、1日に回れる件数は減ります。

そして体制です。医療的ケア児は状態が急に変わることがあります。24時間の対応が前提になる場合、当メディアで扱ったとおり、オンコールの負担がそのまま増えます。看護職員が平均5.4人という規模の事業所で、小児にも対応できる看護師が1人しかいなければ、その人にオンコールが集中します。

乳幼児加算の中身

改定された乳幼児加算を確認します。

訪問看護基本療養費の乳幼児加算は、乳幼児への訪問看護を行う場合に算定するものです。2026年度改定では、超重症児等以外の区分の評価が1,300円から1,400円に引き上げられました。

引き上げ自体は、小児への訪問を評価する方向の変更です。ただ、1回の訪問で100円です。週2回、月8回訪問するなら月800円。年間で9,600円になります。編集部の試算です。

受け入れていない事業所が、この100円で受け入れを始めるかといえば、難しいでしょう。受け入れられない理由が、経験と体制にあるからです。

とはいえ、すでに受けている事業所にとっては収入が増えます。小児を多く抱える事業所ほど効果が出ます。方向としては、受けている事業所を支えるものだと読めます。

保育園と学校という課題

小児の訪問看護には、成人にはない論点があります。子どもが通う場所への対応です。

医療的ケア児が保育所や学校に通うには、その場に医療的ケアを行える人が必要です。自治体が看護師を配置する仕組みがあり、地域の病院や訪問看護ステーションへ委託することも可能とされています。

ただ、受け入れが進んでいない自治体もあります。施設の整備が対応していないことを理由に挙げる市町村が、医療的ケア児のいる市町村で49.2%、いない市町村で66.4%という調査結果があります。

訪問看護ステーションの側から見れば、この業務は通常の訪問とは性格が異なります。学校に看護師を派遣すれば、その時間はステーションの訪問には出られません。委託の条件や単価が合わなければ、引き受けにくい話になります。

在宅で医療的ケアを受ける子どもの家族が、育児や発達、家族の状況について相談する先として挙げたのは、入院・通院先の医療機関の職員に次いで、訪問看護ステーションの職員でした。訪問看護は、すでに相談先として位置づけられています。

受けるかどうかを決めるときに

小児の受け入れを検討する事業所が確認すべきことを整理します。

事業所に小児の経験がある看護師がいるか。いなければ、誰が最初の訪問を担い、どう学ぶか。地域の小児科の医療機関や、すでに小児を受けている事業所との関係を作れるか。

1件あたりの訪問時間をどう見込むか。成人と同じ時間設定では収まらない可能性があります。当メディアで訪問件数の地域差を扱った際、1日に回れる件数が収支を決めることを書きました。小児を受けるなら、その前提を変える必要があります。

オンコールをどう組むか。対応できる看護師が限られるなら、その人への集中をどう避けるか。

そして、加算の算定を漏らさないこと。乳幼児加算のほか、医療的ケア児には複数の加算が関わります。条件を確認しておく価値があります。

100円が意味すること

乳幼児加算の100円は、小さな変更です。ただ、改定のたびに小児に関する項目が動いているかどうかは、この分野が制度のなかでどう扱われているかを示します。

利用者が12年で3.5倍に増え、法律もできて、それでも受けている事業所は4割台にとどまる。増えているのは需要のほうです。

2027年度の介護報酬改定に向けた議論が進んでいますが、小児の訪問看護は主に医療保険の領域であり、次の診療報酬改定は2028年度です。当メディアで追っている介護の議論とは、時間軸が違います。

その間も、退院して自宅に帰る子どもは増えていきます。

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執筆者

HokanPress編集部

医療・看護・介護の多職種チーム

訪問看護・在宅医療の現場に携わる多職種チーム

HokanPress編集部は、訪問看護・在宅医療の現場に実際に携わる多職種チームで構成されています。看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士、介護支援専門員(ケアマネジャー)が所属。それぞれの専門分野で培った臨床経験と専門知識をもとに、医療・看護・介護従事者の実務に役立つ情報を発信しています。記事は必ず該当分野の有資格者が執筆または監修し、公的統計データや学会発表・厚生労働省の公表資料など、信頼性の高い情報源に基づいて作成しています。

保有資格: 看護師 / 理学療法士 / 作業療法士 / 言語聴覚士 / 医療ソーシャルワーカー / 管理栄養士 / 介護支援専門員

※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています

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