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【2026年改定】D to P with N 本格評価始動、訪問看護遠隔診療補助料2,650円の経営インパクト | HokanPress
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【2026年改定】D to P with N 本格評価始動、訪問看護遠隔診療補助料2,650円の経営インパクト 2026年4月28日 (更新: 2026年4月28日 ) · 約10分で読めます
Summary
2026年6月施行の診療報酬改定で、訪問看護師が同席するオンライン診療(D to P with N)が初めて本格的に評価される。1日あたり2,650円の訪問看護遠隔診療補助料が新設され、訪問看護ステーションの収益構造に大きな転換点が訪れる。経営者として今すぐ取るべき準備と、競争優位を築くための戦略を整理する。
2026年改定の答申内容が公表され、訪問看護業界に過去10年で最大級の構造変化が訪れることが明らかとなった。中でも経営的インパクトが大きいのが、D to P with N(Doctor to Patient with Nurse)の本格評価である。訪問看護師が利用者宅でオンライン診療を補助した際に、1日あたり2,650円(265点)の訪問看護遠隔診療補助料が新設される。経営者として、この改定をどう活かすかが、ステーションの今後数年の競争優位を左右する。
D to P with Nとは何か
まず、用語の整理から始めたい。
D to P with Nとは、医師(Doctor)が患者(Patient)を診療する際に、患者の傍に看護師(Nurse)が同席する形態のオンライン診療を指す。具体的には以下のような流れで実施される。
訪問看護師が利用者宅を訪問する。医師は遠隔地から、タブレットなどを通じてオンラインで診療を行う。看護師は、利用者の傍で身体所見の補助、バイタルサインの測定、医師への詳細情報の伝達、医師の指示に基づく診療の補助行為を実施する。
通常のオンライン診療では、画面越しでは把握しきれない情報(匂い、皮膚の質感、細かな表情の変化等)が見落とされやすい。また、高齢者にとってタブレット操作は容易ではない。D to P with Nは、看護師の介在によってこれらの弱点を補い、対面診療に近い質を確保できる仕組みである。
改定の主なポイント
訪問看護遠隔診療補助料の新設
最も注目すべき変更は以下のとおり。
名称: 訪問看護遠隔診療補助料
算定額: 1日あたり2,650円(265点)
算定主体: 訪問看護ステーション
算定要件: 医師がD to P with Nによりオンライン診療を行う際、訪問看護師が利用者宅で診療補助を実施した場合
これは訪問看護ステーション側が独立して算定できる新しい収益源である。従来、D to P with Nに関与しても訪問看護ステーションは報酬を得られなかったが、この改定で初めて正式に評価される形となる。
検査・処置・注射の実施料の新設
D to P with Nの中で看護師が以下の医療行為を実施した場合、別途実施料が算定可能となる。
各種検査(血液検査、尿検査等の採取・送付)
処置(創傷処置、褥瘡管理等)
注射(皮下注射、筋肉注射、点滴等)
ただし、これらの実施料は医療機関側の算定となり、訪問看護ステーションでは算定できない点に注意が必要だ。
在宅患者訪問看護・指導料との併算定
D to P with N実施中も、C005【在宅患者訪問看護・指導料】、C005-1-2【同一建物居住者訪問看護・指導料】を算定できることが明確化される。これにより、訪問看護料金とD to P with N補助料の二本立てで収益を確保できる構造となる。
ただし、訪問看護・指導の実施時間を十分に確保する必要があり、オンライン診療補助だけで訪問が終わる運用は認められない。
経営インパクトの試算 具体的な数字で見てみたい。私が経営する訪問看護ステーションの利用者を例に、D to P with Nを活用した場合の収益増を試算した。
ケース試算: 利用者30名、うち10名がD to P with N対象 D to P with N対象となる利用者像は、以下のような方々である。
通院困難な慢性疾患患者
在宅看取り期の方
認知症で受診の負担が大きい方
精神疾患で外出が困難な方
専門医のセカンドオピニオンが必要な方
仮に、30名の利用者のうち10名が月2回のD to P with Nを実施するとして計算する。
訪問看護遠隔診療補助料: 2,650円 × 10名 × 月2回 = 53,000円
利用者数が60名規模、対象者が20名となれば、年間約128万円の追加収益となる。看護師1名分の人件費の3か月分相当だ。
ICT環境整備コスト
タブレット端末: 5万〜10万円 × 必要台数
安定した通信環境(モバイルWi-Fi等): 月額3,000〜5,000円
ビデオ通話環境(必要に応じて高品質マイク・カメラ): 1万〜3万円
訪問看護記録システムの連携設定: 5万〜15万円
総額として、初期投資30万〜80万円、月額ランニングコスト1万〜3万円程度が見込まれる。
年間64万円の収益増があれば、初年度で投資回収可能な水準だ。
経営者として今すぐ取るべき5つの準備 改定の施行は2026年6月。準備期間は限られている。経営者として今すぐ着手すべきことを整理する。
1. 連携医療機関の探索と交渉 D to P with Nを実施するには、オンライン診療を行う医師との連携が前提となる。連携先候補として考えられるのは以下である。
在宅医療を行う診療所
地域の総合病院の在宅医療部門
訪問診療を行う医療法人
専門医を擁する大学病院・専門病院
経営者として、地域内の在宅医療機関と早期に接触し、D to P with Nの連携協定を結ぶ動きが重要だ。早期に連携先を確保したステーションが、地域内で先行優位を築ける。
2. ICT環境の整備計画 施行までに、以下の環境整備を完了させる必要がある。
訪問看護師全員へのタブレット支給
通信環境の安定化(訪問先の電波状況確認)
ビデオ通話アプリの選定・導入(医療用Webex、医療用Zoom等)
訪問看護記録システムとの連携
特に通信環境は、訪問先によって電波状況が大きく異なる。事前に主要訪問先での通信テストを実施することが望ましい。
3. スタッフ研修の実施 D to P with Nに関わる訪問看護師には、新たなスキルが求められる。
医師に正確な情報を簡潔に伝えるスキル
ビデオ通話画面で見える範囲を意識した患者情報共有
ICT機器の操作スキル
利用者・家族への機器操作説明能力
トラブル発生時の対応
これらを既存スタッフに習得させる研修プログラムを、改定までの数か月で構築する必要がある。
4. 利用者・家族への説明体制 D to P with Nを開始するには、利用者・家族の同意が必須となる。説明事項は以下のとおり。
D to P with Nの概要と意義
通常の対面診療との違い
プライバシー保護の取り組み
緊急時の対応
費用負担
説明用パンフレットの作成、同意書のフォーマット整備が必要だ。
5. 対象利用者のリストアップ 自ステーションの利用者の中で、D to P with Nの対象となり得る方をリストアップする。具体的には以下の条件に該当する方だ。
通院に大きな負担がある(高齢、認知症、移動困難等)
主治医がオンライン診療に対応している、または対応意向がある
利用者・家族がデジタル機器の活用に同意できる
月2回以上の医師による状態確認が必要
リストアップ後、優先的に主治医・利用者と相談を進めることで、施行直後からスムーズに算定開始できる。
競争優位を築くための戦略視点 D to P with N対応は、単に新たな収益源というだけではない。中長期的な経営戦略として捉えるべき要素がある。
戦略視点1: 地域医療における存在感の向上 D to P with Nに対応できるステーションは、地域の医療機関から選ばれる存在となる。連携先のクリニック・病院から「うちと組んでくれませんか」と打診される機会が増える。
地域包括ケアシステムにおける訪問看護ステーションの存在感が、これまで以上に高まる構造だ。
戦略視点2: 高度医療への対応力強化 オンライン診療を通じて、看護師が専門医とリアルタイムでつながれる環境ができる。これにより、これまで対応が難しかった以下のような利用者にも対応できる。
専門医のセカンドオピニオンが必要なケース
急性期病院から退院後も専門医のフォローが必要なケース
希少疾患で地域に専門医がいないケース
特に、地方在住者や離島居住者にとって、専門医アクセスの改善は大きな価値となる。
戦略視点3: 看護師の専門性向上 D to P with Nを実施する看護師には、医師との対話を通じて高度な医療知識が蓄積される。これは看護師の成長機会であり、結果としてステーション全体の看護の質向上につながる。
教育機会の充実は、看護師の定着率向上にも寄与する。
戦略視点4: 採用・ブランディング上の差別化 「D to P with N対応のステーション」というポジションは、看護師採用市場でも訴求力を持つ。ICTを活用した先進的な訪問看護に従事できる職場として、若手看護師から選ばれやすくなる。
採用競争が激化する中、こうした差別化要素は経営的にも大きな意味を持つ。
想定される運用上の課題 ここまでメリットを中心に述べてきたが、現場で予想される課題も整理しておきたい。
課題1: 医師側の対応意欲 D to P with Nを実施するには、連携先医師の協力が前提となる。一部の医師には「対面診療を重視したい」「オンライン診療への抵抗感がある」という方もいる。
連携先医師の意向を確認し、オンライン診療に前向きな医療機関を優先的に選ぶ判断が必要となる。
課題2: 通信トラブル時の対応 訪問先での通信障害は避けて通れない問題だ。地下、山間部、マンションの一部の階など、電波状況が不安定な場所が存在する。
事前のテスト、複数キャリアのモバイルルーター準備、通信トラブル時の対応マニュアル整備が不可欠だ。
課題3: 看護師の業務負担増 D to P with Nの実施には、通常の訪問業務に加えて、機器操作、医師との情報共有、利用者・家族へのフォローが加わる。1訪問あたりの業務時間が長くなる傾向がある。
報酬は増えるが、看護師の負担も増える。スタッフへの十分な説明と、業務負担に見合う処遇改善も検討すべきだ。
課題4: 利用者・家族の理解 特に高齢の利用者にとって、画面越しの診療は心理的なハードルがある。「やはり先生に直接来てほしい」という声も予想される。
D to P with Nのメリット(専門医アクセス、迅速な対応、通院負担軽減等)を丁寧に説明し、納得して選択していただく姿勢が重要となる。
改定までのスケジュール 施行(2026年6月1日)までの準備期間を逆算すると、以下のようなスケジュールが現実的である。
連携医療機関の選定と協定締結
ICT環境の整備完了
スタッフ研修の実施
利用者・家族への説明開始
対象利用者のリスト化
改定施行
D to P with N算定開始
算定漏れがないかの確認
運用上の課題を洗い出し
運用の安定化
対象利用者の段階的拡大
効果測定(収益、看護の質、利用者満足度)
必要に応じた追加研修
このスケジュールから逆算すると、今(2026年4月時点)から動き始めても、ぎりぎり間に合うペースだ。
まとめ D to P with Nの本格評価は、訪問看護にとって過去10年で最大の機会である。1日2,650円の新設算定は、年間数十万から数百万円の収益増を生む可能性がある。同時に、地域医療における訪問看護の役割を構造的に高める制度変更でもある。
ただし、ICT投資、スタッフ研修、連携先医療機関の確保——準備すべきことは多い。今この瞬間から動き出せるかどうかが、施行後の競争力を決める。
経営者として、改定を「対応すべき制度変更」として受け身で捉えるのではなく、「事業を発展させる戦略的機会」として能動的に活用していただきたい。先行して動くステーションが、これからの地域医療における中核的な存在となる。
2026年6月まで残り1か月余り。今やるべきことを、今日から始めていただきたい。
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執筆者
宮木
訪問看護ステーション経営者・救急看護認定看護師
大学病院 救命救急センター 5年 / 手術室 2年 / 大手訪問看護ステーション 5年 / 訪問看護ステーション設立・代表
小学生の頃から訪問看護師を志し、大学病院の救命救急センター・手術室で急性期医療の現場経験を積む。救急看護認定看護師の資格を取得後、大手訪問看護ステーションでの勤務を経て独立。現場と経営の両視点から、医療従事者に実践的な情報を届けます。
保有資格: 看護師免許 / 救急看護認定看護師 / BLSプロバイダー / ICLSプロバイダー
※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています