訪問看護師の 約半数が、 暴力や セクハラを 経験している ——密室で 起きる カスタマーハラスメントと、 看護師を 守る 仕組み|我慢は 美徳ではない、 複数名訪問・補助制度・相談先まで

Summary
利用者さんの家という密室で、一人でケアを行う訪問看護。その現場で、精神的暴力を経験した訪問看護師は52.7%、セクシュアルハラスメントは48.4%、身体的暴力は45.1%にのぼります。約半数が、何らかの被害を経験しているのです。我慢するしかないと思われがちなこの問題に、いま国や自治体、業界団体が動き始めています。カスハラの実態と、看護師を守る仕組みについて、現場の視点でお伝えします。
この仕事をしていて、いちばん言葉にしにくいことを、今日は書こうと思います。利用者さんやご家族から受ける、暴力やハラスメントのことです。
訪問看護は、利用者さんの家という密室で、基本的に一人でケアを行います。そこで何が起きても、外からは見えません。そして残念ながら、その見えない場所で、傷ついている看護師が確かにいます。
きれいごとでは済まない実態と、それでも看護師を守るために動き始めた仕組みについて、お伝えさせてください。
数字が示す実態 ── 約半数が経験している
全国訪問看護事業協会が実施した全国調査があります。訪問看護師3,245人が回答したこの調査で、明らかになった数字は衝撃的でした。
暴言などの精神的暴力を経験した訪問看護師は52.7%。セクシュアルハラスメントは48.4%。身体的暴力は45.1%。いずれも半数前後です。過去1年間に限っても、28.8%から36.1%の訪問看護師が、何らかの暴力被害を受けていました。
新聞報道でも、訪問看護の現場の6割でカスハラがあると伝えられています。血糖値を測ろうと手を取った瞬間に怒鳴られ、殴りかかられ、はだしのまま外へ逃げた看護師の体験も報じられました。2025年4月には、大阪市西成区で20代の訪問看護師が利用者に包丁で切りつけられる事件も起きています。
決して、ごく一部の特殊な話ではありません。私たちの仕事のすぐ隣にある現実です。
なぜ、訪問看護で起こりやすいのか
ハラスメントは、どの職場でも起こりえます。それでも訪問看護には、被害が生まれやすく、そして表に出にくい条件が重なっています。
第一に、密室であることです。利用者さんの自宅に、一人で入ります。目撃者はいません。病院のように、すぐ隣に同僚がいる環境ではないのです。
第二に、身体への接触が多い対人サービスであり、働き手に女性が多いことです。ケアの性質上、体に触れる場面は避けられません。
第三に、サービスを簡単に中止できないことです。訪問看護は利用者さんの健康と生活に直結します。「嫌なことをされたから行かない」と、簡単には言えない。その責任感が、我慢を生みます。
そして第四に、本人が申告しなければ発覚しないことです。「自分の対応が悪かったのかもしれない」「これくらいで騒ぐのは大げさかもしれない」。そう思って飲み込んでしまう看護師が、少なくありません。
背景には、利用者さんの疾患や障害、置かれた環境が関わっていることもあります。認知症や精神疾患の症状として現れる場合もあり、単純に責められない難しさも確かにあります。それでも、だからといって、看護師が傷ついてよい理由にはなりません。


