訪問看護の処遇改善加算は、2026年6月のサービス提供分から算定できるようになりました。加算率は1.8%です。対象になった経緯と制度の全体像は、訪問看護が処遇改善加算の対象になった経緯の記事で整理しました。
本記事は、その次の段階を扱います。算定を始めた事業所が、年度末までに何をしておかなければならないかです。
令和8年度に限り、訪問看護は要件を「誓約」で満たしたことにして、算定を始められます。誓約は「期限までに必ずやる」という約束です。期限は令和9年3月末で、結果は実績報告書で報告します。約束を果たさなければ、算定の要件を満たさないことになります。厚生労働省の通知は、算定要件を満たさない場合、すでに支給した加算の返還や、加算の取消しができると定めています(通知7)。
以下、厚生労働省の通知とQ&Aをもとに、確認することを順に整理します。
訪問看護は、通知の別紙1表1-5に掲げられたサービスです。訪問リハビリテーション、居宅介護支援・介護予防支援と同じ区分で、賃金改善に加えて、次のどちらかの要件を満たす必要があります(通知3⑵)。
| 要件 | 中身 | 令和8年度の扱い |
|---|---|---|
| ①令和8年度特例要件 | ケアプランデータ連携システムを利用している、または法人が社会福祉連携推進法人に所属している | 利用を誓約すれば、申請時点から満たしているものとして扱う |
| ②処遇改善加算Ⅳの取得に準ずる要件 | キャリアパス要件Ⅰ・キャリアパス要件Ⅱ・職場環境等要件の3つをすべて満たす | それぞれ整備を誓約すれば、申請時点から満たしているものとして扱う |
どちらの要件でも、誓約した場合の期限は令和9年3月末です。提出した処遇改善計画書(別紙様式2)を開き、どちらの要件で申請したか、どの項目を誓約したかを確認してください。申請を担当した人と、年度末に報告を書く人が同じとは限りません。誓約の中身は、早めに共有しておくと安心です。
ケアプランデータ連携システムを使う道を選んだ事業所は、次の3点を確認します。
データをやり取りする以上、連携先の居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)側でもシステムを使っている必要があります。導入するかどうかの判断材料は、ケアプランデータ連携システムの記事で整理しています。
こちらを選んだ事業所は、次の3つを令和9年3月末までに整え、実績報告書で報告します(通知3⑵②)。
常時雇用する人が10人未満など、就業規則の作成義務がない事業所は、就業規則の代わりに内規などを整備・周知する形でもかまいません。
職員と意見を交換しながら、資質向上の目標と、次のどちらかに関する具体的な計画を立て、研修を実施するか、研修の機会を確保します。計画は全職員に周知します。
訪問看護であれば、新人の同行訪問(OJT)や外部研修の受講支援を、この計画として書面にしておく形が考えられます。
通知の表4は、職場環境等の取組を28項目・6つの区分に分けています。訪問看護など表1-5のサービスは、次のように実施します。
1法人で1事業所だけを運営するような小規模な法人は、生産性向上の区分のうち、協働化の取組(委員会の共同設置、指針・計画の共同策定、物品の共同購入など。表4の㉔)を行っていれば、この区分の要件を満たすものとされています。
表4には、たとえば次のような項目があります。
すでに行っている取組が当てはまる場合もあります。まず表4と照らし合わせ、実施したことが分かる記録を残しておきます。
どちらの要件で申請した場合も、加算の算定額に相当する賃金改善を実施することが前提です。年度の途中で確認しておきたい点を、通知とQ&Aから挙げます。
職員から賃金改善の内容について問い合わせがあれば、書面などで分かりやすく答えることも求められています(通知8⑴)。
賃金改善額を計算するときの基準(加算を算定しない場合の賃金水準)は、Q&A問1-1で定められています。原則として、初めて処遇改善加算や補助金などを受けた年度の、前年度の賃金水準と比べます。計画書を作ったとき、どの年度を基準にしたかを記録に残しておいてください。
令和8年度の実績報告書の提出期日は、通常の場合、令和9年7月31日です。各年度の最終の加算の支払があった月の翌々月の末日までと定められており、令和9年3月分の加算の支払が令和9年5月になるためです(通知4⑶)。
報告に向けて、次の点を押さえておきます。
6月から算定していない事業所も、年度の途中から始められます。必要な届出は次の2つです(通知4⑴・⑵)。
| 届出 | 期日 |
|---|---|
| 処遇改善計画書 | その年度に初めて算定する月の前々月の末日まで |
| 体制届出(訪問看護などの居宅系サービス) | 算定を始める月の前月15日まで |
たとえば令和9年1月から算定する場合、計画書は令和8年11月末、体制届出は令和8年12月15日が期日になります。ただし通知は、指定権者が計画書の提出期日を延長することを認めているため、実際の期日は事業所の所在地の都道府県・市町村に確認してください。
令和8年度に算定を始めるなら、誓約の仕組みも同じように使えます。ただし誓約の期限は、算定を始めた月にかかわらず令和9年3月末です。
処遇改善加算は、介護報酬の1か月の総単位数に加算率を掛けて算定します(通知2⑴)。医療保険の訪問看護療養費には掛かりません。医療保険側の賃上げの仕組みは、訪問看護ベースアップ評価料です。
ここで見た誓約の扱いは、通知で「令和8年度においては」と定められた取扱いです。令和9年度以降の要件は、2027年度介護報酬改定の議論で決まります。訪問看護に関わる論点は、意見交換会の記事と9月16日の三団体の要望の記事で追っています。
| 時期 | やること | 根拠 |
|---|---|---|
| いま | 計画書で、申請した要件(特例要件か、加算Ⅳに準ずる要件か)と、誓約した項目を確認する | 通知3⑵ |
| 毎月 | 加算額以上の賃金改善を、決めたパターンで支払い、記録する | 通知2⑵、Q&A問1-8-1 |
| 令和9年3月末まで | 誓約した取組を終える(連携システムの利用、またはキャリアパス要件Ⅰ・Ⅱと職場環境等要件の整備) | 通知3⑵ |
| 実績報告の前 | 加算額と賃金改善額の差を計算し、不足があれば一時金での追加配分を検討する | Q&A問1-9 |
| 令和9年7月31日まで(通常の場合) | 実績報告書を提出する(就業規則を改めた場合は変更届出書も) | 通知4⑶・5⑴ |
| 提出後2年間 | 計画書・実績報告書・根拠資料を保存する | 通知4⑵・⑶ |