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精神科訪問看護の算定要件を総点検——指示書・GAF・従事者・週3日、そして「20分ルール」|30分未満の区分は指示書明記が条件、2026年6月改定で厳格化された全要件

2026年8月16日(更新: 2026年8月16日)·約6分で読めます
精神科訪問看護の算定要件を総点検——指示書・GAF・従事者・週3日、そして「20分ルール」|30分未満の区分は指示書明記が条件、2026年6月改定で厳格化された全要件

Summary

精神科訪問看護を提供する、あるいはこれから始めるうえで避けて通れないのが算定要件の理解です。2026年6月の改定では「20分を下回る訪問は算定できない」という規定や精神科特化の機能強化型が導入され、要件の正確な把握はこれまで以上に経営と実務を左右します。精神科訪問看護基本療養費の算定要件を、指示書・GAF・従事者・訪問回数と時間の観点から、通知の文言に基づいて整理します。

精神科訪問看護を提供する、あるいはこれから始めるうえで避けて通れないのが算定要件の理解です。2026年6月の改定では訪問時間に関する「20分を下回るものは算定できない」という規定が設けられ、精神科に特化した機能強化型も新設されました。要件の正確な把握はこれまで以上に経営と実務を左右します。

精神科訪問看護基本療養費の算定要件を、指示書・GAF・従事者・訪問回数と時間の観点から、通知の文言に基づいて整理します。

精神科訪問看護の制度上の位置づけ

精神科訪問看護は原則として医療保険で提供されます。一般の訪問看護が医療保険と介護保険をまたぐのに対し、精神科訪問看護指示書に基づく訪問看護は要介護認定を受けていても医療保険が優先されます。例外は認知症を主傷病とする場合で、こちらは通常の訪問看護として介護保険の対象です。

利用者の多くは自立支援医療(精神通院医療)を併用し、自己負担は原則1割に軽減されます。この公費負担が2024年に800億円を超えたことが、現在の規制強化の背景にあります(詳しくは関連記事をご覧ください)。

算定の3点セット ── 指示書・計画書・報告書

算定の起点は精神科訪問看護指示書です。交付できるのは、精神科を標榜する保険医療機関において精神科を担当する医師に限られます。一般の訪問看護指示書とは別の様式で、主治医がこの要件を満たさない場合は精神科訪問看護基本療養費を算定できません。

指示書の有効期間は6か月が限度です。有効期限切れは実地指導での定番の指摘事項ですから、期限の管理を個人任せにせず体制化しておきたいところです。なお病状の急性増悪時には精神科特別訪問看護指示書があり、交付から14日以内・月1回を限度に頻回の訪問が可能になります。

指示書と対になるのが訪問看護計画書と報告書です。計画書を作成し、主治医へ定期的に報告書を提出する。2026年改定では訪問の開始・終了時刻の記録が算定の前提として明確化されており、記録の整備は必須です。

GAF尺度 ── 月の初日の訪問時の値を、三つの書類に

精神科訪問看護に特有の要件がGAF(機能の全体的評定)尺度です。利用者の心理的・社会的・職業的機能を1〜100で評定するスケールで、数値が大きいほど機能が良好と判定されます。

要件は明確です。精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)または(Ⅲ)を算定する場合、月の初日の訪問看護時におけるGAF尺度により判定した値を、訪問看護記録書・訪問看護報告書・訪問看護療養費明細書に記載しなければなりません。令和2年度の改定で必須化された要件です。

GAFは「なんとなく付ける」ものではありません。2024年度の改定ではGAF40以下の利用者数が管理療養費の要件に組み込まれるなど、評定値そのものが報酬を左右するようになっています。訪問頻度や時間の妥当性を説明する材料にもなるため、評定の根拠を記録に残す運用をおすすめします。

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従事者の要件 ── 届出制であることを忘れない

精神科訪問看護は誰でも提供できるわけではありません。まず事業所として、地方厚生(支)局へ「精神科訪問看護基本療養費に係る届出書」を提出する必要があります。届出書には精神科訪問看護が可能な職員の氏名・職種・経験内容を記載します。月末までに提出した届出はその翌月から算定可能となり、月の最初の開庁日に受理された場合は当該月の1日から算定できます。

従事できる職種は保健師・看護師・作業療法士(准看護師は別区分)で、精神疾患を有する者への看護について、精神科での勤務経験、精神科訪問看護の経験、または相当の研修の修了が求められます。研修ルートとしては、日本訪問看護財団のオンデマンド研修(約21時間)などが該当します。精神科経験者の採用が難しい地域では、研修修了で従事者を育てる体制が現実的な選択肢になります。経験・研修の証明書類は、実地指導に備えて必ず保管してください。

訪問回数と時間 ──「20分ルール」の正確な理解

訪問回数の原則は週3日までです。一般の訪問看護基本療養費を算定した日と合算して数えます。例外として、退院日から3か月以内の期間は週5日まで算定できます。退院直後の不安定な時期を頻回に支えるための仕組みです。3か月を超えて週4日以上の訪問が必要な場合は、先述の精神科特別訪問看護指示書が必要になります。

訪問時間には30分以上と30分未満の区分があります。ここに二つの注意点があります。

第一に、30分未満の区分は無条件では使えません。短時間訪問の必要性があると医師が認め、精神科訪問看護指示書に明記されている場合にのみ算定できます。実際の訪問が短かったことを理由に30分未満の区分を選ぶ運用は認められません。

第二に、2026年6月改定のいわゆる「20分ルール」です。厚生労働省の改定説明資料には、訪問看護の時間とは30分以上を標準とし、20分を下回るものは算定できないことが明記され、精神科訪問看護基本療養費についても同様とされました。形式的な短時間訪問で件数を積む運用は、制度上成り立たなくなっています(改定全体の解説は関連記事「精神科訪問看護が2026年6月に大変革」をご覧ください)。

複数名での訪問には複数名精神科訪問看護加算があります。一般の複数名訪問加算とは要件が異なり、同行する職種・同一建物の訪問人数・1日あたりの訪問回数の組み合わせで額が設定され、30分未満の訪問では算定できません。

同一建物への訪問にも注意が必要です。同一日に同じ建物で訪問した人数は、精神科の利用者だけでなく一般の訪問看護や包括型の利用者も合算して判定します。人数の区分によっては日数の数え方が週単位から月単位に変わります。

2026年改定で変わった点(サマリー)

改めて、2026年6月改定のポイントを精神科の視点でまとめます。

訪問時間は30分以上が標準となり、20分を下回る訪問は算定不可になりました。精神科に対応した機能強化型訪問看護管理療養費4が新設され、重症の精神障害のある方を支える体制が評価される一方、精神科に特化した事業所への監視は強まっています。訪問の開始・終了時刻の記録が算定の前提として明確化され、不備は返戻の対象です。そして公費負担の急増を受けたレセプト分析と全国調査が進んでおり、算定の適正性はこれまで以上に見られています。

実務チェックリスト

日々の運用で確認すべき点を挙げます。指示書は精神科標榜医療機関の精神科担当医からの交付か。有効期限は切れていないか。GAFは月の初日の訪問時の値を記録書・報告書・明細書の三つに記載しているか。従事者の届出と、経験または研修修了の証明は保管しているか。30分未満の区分を使う利用者について、指示書に短時間訪問の必要性が明記されているか。すべての訪問で20分以上を確保し、開始・終了時刻を記録しているか。主治医への報告書は定期的に提出しているか。

まとめ

精神科訪問看護の算定は、精神科医の指示書、届出された従事者、GAFの評定、そして適正な時間と記録の掛け算で成立します。2026年改定はそのすべてに厳格化の方向で働いており、要件の理解が浅い事業者から淘汰される局面に入りました。裏を返せば、要件を正確に押さえた運営はそれ自体が競争力になります。地域で精神障害のある方の暮らしを支えるという本来の役割を果たし続けるためにも、算定の足元を固めることから始めてください。

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執筆者

HokanPress編集部

医療・看護・介護の多職種チーム

訪問看護・在宅医療の現場に携わる多職種チーム

HokanPress編集部は、訪問看護・在宅医療の現場に実際に携わる多職種チームで構成されています。看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士、介護支援専門員(ケアマネジャー)が所属。それぞれの専門分野で培った臨床経験と専門知識をもとに、医療・看護・介護従事者の実務に役立つ情報を発信しています。記事は必ず該当分野の有資格者が執筆または監修し、公的統計データや学会発表・厚生労働省の公表資料など、信頼性の高い情報源に基づいて作成しています。

保有資格: 看護師 / 理学療法士 / 作業療法士 / 言語聴覚士 / 医療ソーシャルワーカー / 管理栄養士 / 介護支援専門員

※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています

2026年7月30日