精神科訪問看護の 2026年6月改定で 変わった こと ——同一建物の 人数区分と 機能強化型4| 「20分ルール」は 精神科の 療養費には 定められていない

Summary
2026年6月の診療報酬改定で、精神科訪問看護に関わる主な変更は、同一建物居住者に対する精神科訪問看護基本療養費(Ⅲ)の人数区分の細分化と、機能強化型訪問看護管理療養費4の新設です。一方、同一建物への訪問看護基本療養費(Ⅱ)に設けられた「20分を下回る訪問は算定できない」という規定は、精神科訪問看護基本療養費には置かれていません。告示と通知に沿って整理します。
目次5項目
【2026年10月 全面改稿】この記事は2026年5月に公開したものを、告示と通知にもとづいて書き直しました。初版では、精神科訪問看護に「20分ルール」が導入された、機能強化型4は精神科特化型の区分である、精神科特化型のステーションに利用者構成のバランスや専門研修が求められるようになった、と書いていましたが、いずれも告示・通知に該当する規定はありませんでした。2025年の出来事として挙げた経緯にも誤りがありました。お詫びして訂正します。
2026年6月1日に施行された診療報酬改定で、精神科訪問看護に関わる主な変更は二つです。同一建物居住者に対する精神科訪問看護基本療養費(Ⅲ)の人数区分が細分化されたことと、機能強化型訪問看護管理療養費4が新設されたことです。
一方で、同じ改定で話題になった「20分ルール」は、精神科訪問看護基本療養費には定められていません。まずこの点から確認します。
「20分ルール」は訪問看護基本療養費(Ⅱ)の規定
「30分以上を標準とし、20分を下回らない」という規定は、告示第67号で訪問看護基本療養費(Ⅱ)(同一建物居住者への訪問看護。ハを除く)に置かれています。留意事項通知でも、同じ内容は訪問看護基本療養費(Ⅱ)の項に書かれています。前回の訪問から2時間未満に20分以上30分未満の訪問をした場合に所要時間を合算するという扱いも、同じ項の規定です。
精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)と(Ⅲ)の項には、この規定はありません。精神科の訪問時間は、従来どおり「30分以上」と「30分未満」の区分で扱います。
ただし、30分未満の区分は無条件では使えません。留意事項通知は、利用者に短時間訪問の必要性があると医師が認め、精神科訪問看護指示書に明記されている場合にのみ算定するとしています。短時間で回ったから30分未満の区分で算定する、という運用はできません。
時間について精神科にも関わる変更は、記録です。訪問看護基本療養費と精神科訪問看護基本療養費の共通事項として、日々の訪問時間(実際の開始時刻と終了時刻)を記録し、保管しておくことが明確化されました。→ 同一建物居住者への20分未満の訪問と2時間未満の再訪問
同一建物の人数区分が5段階に
精神科訪問看護基本療養費(Ⅲ)は、同一建物居住者への精神科訪問看護の評価です。これまでは「同一日に2人」と「3人以上」の2区分でしたが、改定で5区分になりました。10人以上の区分では、週の日数ではなく月の算定日数で単価が分かれます。
保健師・看護師・作業療法士による30分以上の訪問の額は次のとおりです。
| 同一日の人数 | 額 |
|---|---|
| 2人 | 週3日目まで5,550円、週4日目以降6,550円 |
| 3人以上9人以下 | 週3日目まで2,780円、週4日目以降3,280円 |
| 10人以上19人以下 | 月20日目まで2,760円、月21日目以降2,660円 |
| 20人以上49人以下 | 月20日目まで2,710円、月21日目以降2,610円 |
| 50人以上 | 月20日目まで2,610円、月21日目以降2,510円 |
人数の数え方にも注意がいります。留意事項通知は、同一建物居住者の人数を、同一日に訪問看護基本療養費、精神科訪問看護基本療養費、包括型訪問看護療養費を算定する利用者の数を合算した人数としています。月の日数も、精神科訪問看護基本療養費(Ⅲ)、訪問看護基本療養費(Ⅱ)(ハを除く)、包括型訪問看護療養費の合計の算定日数で数えます。精神科の利用者だけを数えるのではありません。→ 精神科訪問看護は同一建物10人以上で「週」から「月」に
加算も同じ考え方になりました。複数名精神科訪問看護加算、夜間・早朝訪問看護加算、深夜訪問看護加算、精神科複数回訪問加算は、同一建物内で対応する加算や包括型訪問看護療養費を算定する利用者の合計人数に応じて、「1人又は2人」から「50人以上」までの区分で額が決まります。たとえば夜間・早朝訪問看護加算は、1人又は2人なら2,100円ですが、3人以上9人以下では月16日目以降1,900円、50人以上では月16日目以降800円になります。複数名精神科訪問看護加算は、30分未満の訪問では算定できません。
機能強化型4は「精神科特化型」ではない
新設の機能強化型訪問看護管理療養費4は、月の初日の訪問で9,030円です。機能強化型3と同じ額で、機能強化型でない場合は7,710円です。改定の説明資料は、支援ニーズの高い精神科訪問看護利用者等を受け入れ、地域の関係機関と連携する体制が整備されている訪問看護ステーションを評価するものとしています。
ただし、精神科の利用者だけで届け出られる区分ではありません。届出手続き通知の主な要件は次のとおりです。
- 常勤の看護職員が4人以上(常勤職員のみで数える)
- 看護師等のうち6割以上が看護職員
- 24時間対応体制加算を届け出ている
- 別表第7の疾病等の利用者または別表第8に掲げる利用者が月に3人以上
- 1年以上の入院歴があるなどの条件を満たし、かつGAF尺度が40以下の利用者、または精神科重症患者支援管理連携加算を算定する利用者が月に7人以上
- 直近3月に、保険医療機関と共同した退院時共同指導加算の算定実績がある
- 保険医療機関、障害福祉サービス事業者、行政の担当部署など地域の連携機関が5以上(うち3種類以上)あり、それぞれと年3回以上面会している
医療観察法による訪問看護の利用者や、ひきこもり状態などで行政の家庭訪問の対象となっている人などが直近1年にいることも、望ましい要件として挙げられています。→ 機能強化型4の要件と1〜3との違い、管理療養費の全区分
算定の基本は従来どおり
改定後も、精神科訪問看護基本療養費の算定の基本は変わっていません。
- 指示書は、精神科を担当する医師から交付された精神科訪問看護指示書に基づく
- 一般の訪問看護基本療養費を算定する日と合わせて週3日まで(退院後3月以内は週5日まで)
- 精神科特別訪問看護指示書が出た場合は、月1回、指示の日から14日を限度に頻回の訪問ができる
- 訪問する職員は、精神科病棟・外来での勤務経験1年以上、精神疾患を有する者への訪問看護の経験1年以上、または20時間以上の研修の修了などが必要で、地方厚生(支)局への届出が要る
- 精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)または(Ⅲ)を算定する場合は、月の初日の訪問時のGAF尺度の値を、訪問看護記録書・訪問看護報告書・訪問看護療養費明細書に記載する
運営基準の見直しは全ステーション共通
改定では、指定訪問看護の事業の運営基準に、経済上の利益の提供による誘引の禁止や、特定の主治医・特定の事業者等への誘導の禁止などが加わりました。精神科に限った規定ではなく、すべての訪問看護ステーションが対象です。→ 利用者誘引規制
精神科訪問看護をめぐっては、厚生労働省がレセプト分析を行う方針を示したと報じられています。適正化の議論が続くなかで、事業所が押さえるべきなのは、どの規定がどの療養費に置かれているかという正確な位置です。
出典: 「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」(告示第67号)区分番号01・01-2・02、留意事項通知(令和8年3月5日保発0305第19号)第2・第3・第4、届出手続き通知(令和8年3月5日保医発0305第9号)、厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【訪問看護ステーション向け】」
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執筆者
医療・看護・介護の多職種チーム
訪問看護・在宅医療の現場に携わる多職種チーム
HokanPress編集部は、訪問看護・在宅医療の現場に実際に携わる多職種チームで構成されています。看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士、介護支援専門員(ケアマネジャー)が所属。それぞれの専門分野で培った臨床経験と専門知識をもとに、医療・看護・介護従事者の実務に役立つ情報を発信しています。記事は必ず該当分野の有資格者が執筆または監修し、公的統計データや学会発表・厚生労働省の公表資料など、信頼性の高い情報源に基づいて作成しています。
保有資格: 看護師 / 理学療法士 / 作業療法士 / 言語聴覚士 / 医療ソーシャルワーカー / 管理栄養士 / 介護支援専門員
※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています


