訪問看護

訪問看護の質を測る物差しがないなかで、ISO9001が使われ始めた——6社18事業所が団体認証

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訪問看護の質を測る物差しがないなかで、ISO9001が使われ始めた——6社18事業所が団体認証

Summary

訪問看護分野で国内初となるISO9001の団体認証が、2025年12月に取得されました。6社18事業所が統一した品質マネジメント体制のもとで一括認証を受けています。日本看護協会の実態調査では、ケアの質の評価方法として「定まった評価指標はない」が41.8%で最多でした。制度が物差しを用意できていないなかで、民間の汎用規格が使われ始めたという構図です。

目次7項目
  1. 016社18事業所の団体認証
  2. 02ISO9001とは何を証明するものか
  3. 03それでも意味がある理由
  4. 04誰が品質を保証するのか
  5. 052027年度改定との関係
  6. 06取るかどうかを判断する材料
  7. 07物差しがないという問題は残る

訪問看護の質を、何で測るか。

この問いに、制度はまだ答えを出していない。日本看護協会の実態調査で、ケアの質の評価方法を聞いた設問の最多回答は「定まった評価指標はない」で41.8%だった。次が自事業所・法人オリジナルの評価指標で25.7%。全国訪問看護事業協会のガイドラインを使っている事業所が14.7%、日本訪問看護財団のガイドが5.5%である。

何らかの質評価を行っている事業所は70.7%ある。ただ、その多くは共通の物差しを持たない。

そこに、別の答えが出てきた。ISO9001である。

6社18事業所の団体認証

日本介護品質管理協会は、2025年12月、訪問看護分野において国内初となるISO9001の団体認証を取得したと発表した。

運営主体は株式会社介護コネクティブ、株式会社ジェネラス、株式会社FOOTAGEの3社。6社18事業所が統一された品質マネジメント体制のもとで認証を受けている。2026年4月から第2期のプロジェクトが始まり、全国展開を目指すとされている。

実施された取り組みとして挙げられているのは、ISO9001に準拠した品質基準の統一、内部監査を年2回と外部監査を年1回実施すること、そして事業所間の相互の仕組みである。

団体認証という形式が特徴だ。個々の事業所がそれぞれ認証を取るのではなく、複数の法人が一つの品質マネジメント体制を共有し、一括で認証を受ける。発表では、個社ごとのばらつきに頼っていた業界構造を、団体単位の品質担保へ変える取り組みだと説明されている。

ISO9001とは何を証明するものか

ここで、規格の性質を確認しておく必要がある。

ISO9001は品質マネジメントシステムの国際規格である。製造業から始まり、あらゆる業種に適用される汎用規格だ。訪問看護のために作られたものではない。

この規格が証明するのは、品質を管理する仕組みがあることであって、提供されるサービスの質そのものではない。手順が文書化され、記録が取られ、問題が起きたときに原因を調べて改善する流れが回っているか。それを第三者が確認する。

言い換えれば、ISO9001を取得した事業所の看護が優れているとは、規格は言っていない。言っているのは、品質を管理する体制が規格の要求を満たしているということである。

この区別は重要だ。当メディアで訪問看護の質の評価を扱ってきたが、制度が求めているのは後者、つまりケアの質そのものの評価である。2026年6月の介護給付費分科会で厚生労働省が示した論点は、より質の高い訪問看護サービスを効果的・効率的に提供する事業所を適切に評価するための方策だった。

それでも意味がある理由

批判的に書いたが、この取り組みに意味がないとは考えていない。

訪問看護の質を測る指標が存在しないなかで、では何もしないのかという問いが残る。全国訪問看護事業協会の事業所自己評価のガイドラインを使っている事業所は14.7%、日本訪問看護財団のガイドは5.5%。合わせても2割である。4割は何も使っていない。

ISO9001は、少なくとも外部監査を年1回受けることを求める。内部監査も年2回。手順を文書化し、記録を残し、監査で確認される。この繰り返しが機能すれば、少なくとも手順が属人的になることは防げる。

当メディアで運営指導を扱った際、確認されるのは計画ではなく記録だと書いた。2026年度改定では、訪問看護記録書に実際の訪問開始時刻と終了時刻を記載することが求められるようになった。記録と監査の仕組みを持つことは、制度が求める方向と一致している。

団体認証という形式にも、小規模事業所にとっての意味がある。ISO9001の認証取得には、文書体系の構築、内部監査員の養成、審査費用が必要になる。看護職員が平均5.4人という規模の事業所が単独で取り組むのは現実的ではない。複数社で体制を共有すれば、一事業所あたりの負担は下がる。

誰が品質を保証するのか

もう一つ、この取り組みの構造について指摘しておきたい点がある。

日本介護品質管理協会は、参画する事業者の3社が運営主体になっている。認証を受ける側が、認証の仕組みを運営している構造である。

ISO9001の認証そのものは、第三者の審査機関が行う。そこは外部である。ただ、どういう品質基準を統一するか、内部監査をどう設計するかは、運営主体が決めることになる。

当メディアで保険外訪問看護のガイドラインを調べた際にも、業界団体が自主的に基準を作り、第三者評価を組み込む形が出てきていた。制度が物差しを用意しないなかで、業界が自分たちで基準を作る動きが複数ある。

これをどう評価するかは、立場によって変わる。公的な基準ができるのを待つより早い、という見方もできる。基準を作る側と評価される側が重なっていることを問題と見ることもできる。

少なくとも、利用者や家族がこの認証を見たときに、何が保証されているのかが分かる形になっているかは、今後の課題になるだろう。

2027年度改定との関係

時期の問題がある。

2027年度の介護報酬改定に向けた議論は、10月から12月にかけて個別のサービスごとの具体的な検討に入る。質の評価は論点の一つだ。

そこで、何を指標にするかが問われる。LIFEのような国のデータベースを使うのか、第三者評価の受審を評価するのか、アウトカムを測るのか。

介護分野では、福祉サービス第三者評価事業が制度として存在する。訪問看護は介護保険サービスでありながら、医療保険の側面も持つ。どちらの枠組みで質を評価するのかという整理も、まだ定まっていない。

民間の認証が先に動いたことは、制度が追いつけば評価の対象になる可能性もあるし、逆に制度が別の仕組みを作れば、取得した事業所の負担だけが残ることもある。

当メディアで特定行為研修を扱った際、修了者が11,840人で目標の12%にとどまり、専門管理加算があるのに医師の手順書がなければ算定できないという構造を指摘した。質を担保するための取り組みが、報酬に結びつかないまま進むという状況は、訪問看護で繰り返されている。

取るかどうかを判断する材料

自事業所がこうした認証を検討する場合、判断の材料を挙げる。

何のために取るのか。利用者や家族への説明のためか、採用のためか、連携先の医療機関への信頼のためか、業務の標準化のためか。目的によって、必要な取り組みの範囲が変わる。

費用と手間がどれだけかかるか。審査費用、文書作成の工数、監査の対応時間。看護職員が5人前後の事業所で、誰がその作業を担うのか。当メディアで管理者の負担を扱った際、管理者が請求も労務も届出も抱えている構造を書いた。認証の維持は、そこにもう一つ加わる。

そして、取得した後に何が変わるか。訪問の質が上がるのか、職員の離職が減るのか、新規の依頼が増えるのか。6社18事業所の取り組みが2期目に入っている以上、1期目の結果が今後出てくるはずである。

物差しがないという問題は残る

最後に、元の問いに戻る。

訪問看護の質を測る物差しは、まだない。だから41.8%が定まった評価指標を持っていない。ISO9001は、その空白に民間が置いた一つの答えである。品質管理の仕組みがあることは証明するが、ケアの質そのものを測るものではない。

当メディアでイギリスの地域看護師が15年で43%減ったことを扱った際、イギリスには等級という物差しがあったから減少を検知できたが、日本の訪問看護にはそれがないと書いた。離職率にも全国統計がない。質の評価にも共通指標がない。

測られていないものは、議論の材料にならない。民間が先に測り始めたという事実は、制度の遅れを示している。

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執筆者

宮木

訪問看護ステーション経営者・救急看護認定看護師

大学病院 救命救急センター 5年 / 手術室 2年 / 大手訪問看護ステーション 5年 / 訪問看護ステーション設立・代表

小学生の頃から訪問看護師を志し、大学病院の救命救急センター・手術室で急性期医療の現場経験を積む。救急看護認定看護師の資格を取得後、大手訪問看護ステーションでの勤務を経て独立。現場と経営の両視点から、医療従事者に実践的な情報を届けます。

保有資格: 看護師免許 / 救急看護認定看護師 / BLSプロバイダー / ICLSプロバイダー

※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています

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