訪問看護

次に測られるのは「質」だ——厚労省が訪問看護の質評価の検討に着手、2027年度改定の基礎データへ|回数から機能へ、そして質へ。2万件時代の必然

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次に測られるのは「質」だ——厚労省が訪問看護の質評価の検討に着手、2027年度改定の基礎データへ|回数から機能へ、そして質へ。2万件時代の必然

Summary

厚生労働省が、訪問看護の質を評価する仕組みの検討に向けて実態調査を開始しました。2026年度の老人保健健康増進等事業として実施され、2027年度の介護報酬改定の基礎データにもなります。当メディアでは報酬の評価軸が回数から機能へ移りつつあることをお伝えしてきました。次に来るのは質です。稼働ステーションが2万件を超えたいま、何が起きようとしているのかを分析します。

目次6項目
  1. 01なぜ、いま「質」なのか
  2. 02評価軸の変遷 ── 回数から、機能へ、そして質へ
  3. 03質は、どう測られうるのか
  4. 04質の評価には、危うさもある
  5. 05経営者は、いま何をすべきか
  6. 06質で評価される時代に、備える

厚生労働省が、訪問看護の質を評価する仕組みの検討に着手したと報じられた(CBnews 2026年8月17日)。2026年度の老人保健健康増進等事業として実態調査を開始しており、その結果は2027年度の介護報酬改定の基礎データにもなるとされる。

小さな記事として報じられただけかもしれない。だが私は、この動きを訪問看護の報酬体系にとって最大級の転換点になりうるものだと見ている。

当メディアでは加算の推移を分析し、評価の軸が回数から機能へ移りつつあることをお伝えしてきた。その次に来るのが質だ。今回は、この検討が何を意味するのかを先読みして論じたい。

なぜ、いま「質」なのか

背景から確認する。全国訪問看護事業協会の調査によれば、稼働している訪問看護ステーション数は20,051件に達した。令和8年4月1日現在の数字で、ついに2万の大台を超えたことになる。

1992年の制度創設から30年余り。国は報酬のプラス改定などで訪問看護を後押しし、事業所数は順調に増えてきた。量の拡大という政策目標は、一定の達成を見たといえる。

量が満たされれば、次に問われるのは中身だ。同じ「訪問看護」という名で提供されるサービスの質に、どれほどのばらつきがあるのか。国が実態調査に乗り出したのは、この段階に入ったからだと考えるのが自然だろう。

加えて、当メディアでお伝えしてきた不正請求や過剰な訪問をめぐる問題がある。制度の信頼が問われる局面で、単に回数を減らす適正化だけでなく、良いケアを積極的に評価する方向へ舵を切ろうとしている可能性もある。

評価軸の変遷 ── 回数から、機能へ、そして質へ

ここで、報酬の評価軸がどう変わってきたかを整理する。

第一段階は、回数による評価だ。訪問1回いくらという出来高払いが基本で、訪問を積み重ねるほど収益が増える構造だった。

第二段階が、機能による評価である。機能強化型の管理療養費、重症者の受け入れ実績、24時間対応体制、看取りの実績。事業所がどんな機能を担っているかを評価する仕組みが、改定のたびに厚みを増してきた。2026年度改定で新設された包括型訪問看護療養費は、1日単位の包括評価へ踏み込んだ点で象徴的だった。

そして第三段階として浮上したのが、質による評価だ。何をどれだけやったかでも、どんな体制を持っているかでもなく、提供したケアがどんな結果をもたらしたか。それを測ろうとする発想である。

質は、どう測られうるのか

では、訪問看護の質はどう測られるのか。ここが最も難しく、そして最も注目すべき点だ。

一般に医療の質は、構造、過程、結果の三つの側面から評価される。構造は人員配置や設備、過程は提供したケアの内容、結果はその人の状態がどう変わったかを指す。

現行の報酬は、構造の評価に大きく依存している。機能強化型の要件を見れば分かるとおり、常勤の看護職員が何名いるか、重症者を何名受け入れているか、といった数えられる項目が中心だ。

質の評価が本格化すれば、結果の側面が入ってくる可能性がある。褥瘡が治癒したか、入院を回避できたか、在宅での看取りを実現できたか、利用者と家族の満足度はどうか。こうした指標が候補として想定される。

すでに土台は作られ始めている。2026年度改定では、訪問看護記録書に看護目標の達成度とその効果についての評価を記録することが明確化された。単にケアの内容を記すだけでなく、目標に対してどうだったかを書く。評価に基づいて計画を見直すサイクルも重視されている。質を測るためのデータは、日々の記録から集められることになる。

質の評価には、危うさもある

もっとも、質の評価には固有の難しさがあることも指摘しておきたい。

第一に、状態が改善しにくい利用者をどう扱うかという問題だ。進行性の難病、終末期のがん、重度の認知症。訪問看護が支える方の多くは、状態が良くなることを目標にできない。改善という結果だけで質を測れば、こうした方を受け入れる事業所が不利になりかねない。

第二に、測りやすいものだけが評価される危険だ。数値化できる指標に報酬が紐づけば、事業所の行動はその指標に最適化される。当メディアで論じてきた家族への支援、意思決定の支援、そばに居続けること。訪問看護の価値の中には、数字にしにくいものが確実に含まれている。

第三に、記録の負担だ。質を証明するためのデータ入力が増えれば、その分だけ訪問の時間が削られる。効率化のためのICTが、評価のためのデータ収集で相殺される事態も起こりうる。

国の検討がこうした点をどう扱うのか、事業者として注視すべきところだ。

経営者は、いま何をすべきか

とはいえ、方向そのものは動かないと見るべきだろう。回数を積み上げるモデルは評価されにくくなり、質と機能を示せる事業所が評価される。その流れの中で、いま準備できることを三つ挙げたい。

第一に、記録の質を上げることだ。2026年度改定で求められた目標の達成度と効果の評価を、形式的にではなく実質的に書けているか。将来の質評価は、この記録を土台に組み立てられる可能性が高い。書けていない事業所は、質を証明する手段を持たないことになる。

第二に、自事業所の成果を数字で把握しておくことである。入院を回避できた件数、在宅での看取りの件数、褥瘡の治癒率。国が指標を示してから慌てて集め始めるのでは遅い。以前の記事でお伝えした数字で経営する姿勢を、ケアの成果にも広げておきたい。

第三に、調査への参加だ。2026年度改定では、包括型訪問看護療養費の算定要件に厚生労働大臣が実施する調査への適切な参加が含まれている。国が実態を把握する仕組みは、今後さらに広がる。データを求められる側から、データを持つ側へ回っておくことが、これからの経営を有利にする。

質で評価される時代に、備える

2027年度の介護報酬改定に向けた議論は、すでに始まっている。今回の調査は、その基礎データを集める作業だ。

回数から機能へ、そして質へ。評価の軸は、確実に移り変わっている。事業所数が2万を超え、量の時代が終わろうとしているいま、生き残るのは訪問件数を積み上げた事業所ではなく、提供したケアの価値を示せる事業所になる。

当メディアが繰り返し論じてきたことと、この流れは重なっている。重症者を受け入れ、看取りを担い、専門性を磨き、地域と連携する。そして何より、そこで働く人が定着する組織を作る。質の高いケアは、質の高い組織からしか生まれないからだ。

国が質を測ろうとしているという事実は、裏を返せば、良いケアが報酬として報われる可能性が開かれたということでもある。制度の変化を待つのではなく、いまの記録と、いまのケアの中に、その備えを積み上げていきたい。

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執筆者

宮木

訪問看護ステーション経営者・救急看護認定看護師

大学病院 救命救急センター 5年 / 手術室 2年 / 大手訪問看護ステーション 5年 / 訪問看護ステーション設立・代表

小学生の頃から訪問看護師を志し、大学病院の救命救急センター・手術室で急性期医療の現場経験を積む。救急看護認定看護師の資格を取得後、大手訪問看護ステーションでの勤務を経て独立。現場と経営の両視点から、医療従事者に実践的な情報を届けます。

保有資格: 看護師免許 / 救急看護認定看護師 / BLSプロバイダー / ICLSプロバイダー

※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています

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