訪問看護2万か 所時代の 「4人目が 続かない」。 ジンクスで 終わらせず、 熱意を 仕組みに 置き換えたい

Summary
週刊大阪日日新聞が10月16日に報じた「訪問看護に継続の壁『4人目』が続かない」。開業時の3人は残るが、4人目が定着しないという現場の声です。HokanPressはこれを、創業メンバーの熱意を前提にした仕組みの限界と捉えます。廃止理由の上位が人の問題であることや、オンコールを限られた職員で回している実態も踏まえ、4人目を迎える前に熱意を仕組みに置き換えるべきだと考えます。
目次6項目
「新たに採用する4人目が続かない」。週刊大阪日日新聞が10月16日に配信した記事「訪問看護に継続の壁 『4人目』が続かない 急増の背景で廃業も」は、訪問看護の事業者の間でささやかれるこんな言葉を紹介しています。Yahoo!ニュースにも転載され、多くの人の目に触れました。
開業のときに一緒に立ち上げた3人は残る。けれど、そのあとに採用した4人目が定着しない。だから事業所が大きくならない。記事はこの「ジンクス」を入り口に、訪問看護ステーションが急増する一方で廃業も多い現状を描いています。
HokanPressは、この記事の問題提起に強く同意します。そのうえで、「4人目が続かない」をジンクスで終わらせず、仕組みの問題として捉え直すべきだと考えます。編集部の見解をまとめます。
記事が伝えていること
記事によると、全国訪問看護事業協会の調査で、訪問看護ステーションは2026年4月時点で20,051か所となり、初めて2万か所を超えました。2025年度には2,428か所が新たに開設された一方、960か所が廃止、328か所が休止しています。大阪府は稼働中のステーションが2,456か所と全国で最も多く、2025年度の新規開設は410か所、廃止は137か所でした。
記事は、「4人目が続かない」背景として、取材した経営支援会社や訪問看護の経営者の話から、次のような点を挙げています。
- 立ち上げの時期は、病院やケアマネジャーからの紹介を得るために、24時間365日の対応を掲げることが多い。創業メンバーはその負担を「一緒に背負うもの」と受け止めるが、あとから入った人は同じようには受け止めない
- 求人で「オンコールなし」と聞いていたのに、実際の働き方が違うという食い違い
- 職員が辞める理由を本人の努力不足と考え、自分たちの仕組みを見直さない経営側の姿勢
- 管理者としての経験がないまま開業し、採用、営業、教育、車両、保険、事務までを抱え込んでしまうこと
あわせて、ステーションが廃業したときの影響にも触れています。4人規模のステーションでも利用者は25〜30人ほど、5〜8人規模なら50〜100人ほどになり、閉じれば一人ひとりに新しい事業所を探す調整が必要になる、という指摘です。
対策として紹介されているのは、夜間のオンコールで1人目の看護師を後ろから支える「2番手」を置くこと、利用者の情報を1人に持たせずチームで共有すること、毎週のカンファレンスで難しい事例を話し合うこと、などです。
見解1 「4人目」は、創業の熱意を前提にした仕組みの限界
「4人目が続かない」という現象を、私たちは仕組みの限界だと考えます。
立ち上げの時期のステーションは、創業メンバーの熱意で回っています。夜中の電話も、休日の訪問も、「自分たちの事業所だから」と引き受ける。それ自体は尊いことです。ただ、その働き方は、言葉にされないまま「当たり前」になりがちです。
4人目は、その「当たり前」を知らずに入ってきます。求人票や面接で、そこまで詳しく伝えられていないこともあるでしょう。入ってみて初めて、オンコールの回数や休日の過ごし方が、思っていたのと違うことに気づく。記事が挙げた「オンコールなしと聞いていたのに」という食い違いは、その典型です。
ここで必要なのは、4人目に創業メンバーと同じ熱意を求めることではありません。創業メンバーが熱意で埋めてきた部分を、仕組みに置き換えることです。オンコールの回数と手当、夜間に迷ったときの相談先、休みの取り方。こうしたことを言葉にし、就業の条件として示す。4人目を採用する前にこの作業をしておかなければ、何人採っても同じことが繰り返されます。
見解2 人の問題は、データでもはっきり出ている
「人が続かない」ことがステーションの経営を揺るがすことは、データからも裏づけられます。
全国訪問看護事業協会が2025年3月にまとめた報告書では、ステーションが廃止した理由の1位は「従業員確保が困難」(22.7%)、2位は「管理者が退職した」(17.6%)でした。「利用者が少なく経営維持が困難」は3位です。ステーションを閉じさせる一番の理由は、利用者の数よりも人です。
夜の体制も同じです。日本訪問看護財団が2026年3月にまとめた報告書では、24時間対応体制加算などを届け出ているステーションの86.6%が、「限られた職員(管理者含む)のみでオンコール当番をしている」と答えています。ほかの事業所と負担を分け合っているのは2.5%にすぎません。
記事が紹介する「2番手」の仕組みは、この「限られた職員だけ」の状態を和らげる具体策の一つです。夜中に1人で判断を迫られる重さは、経験の浅い職員ほど大きい。その重さを1人に背負わせない体制は、4人目を定着させるうえでも欠かせないと考えます。
見解3 「増えた数」より「続いた数」を見たい
ステーションが2万か所を超えたことは、在宅で療養する人の選択肢が増えたという意味で、前向きな面もあります。ただ、私たちは「いくつ増えたか」だけでなく、「いくつ続いているか」をもっと見るべきだと考えます。
記事が指摘するとおり、ステーションが閉じれば、利用者は新しい事業所を探さなければなりません。主治医やケアマネジャーとの調整も、一からやり直しになります。廃止された960か所の向こうには、それぞれの事業所が支えていた利用者と家族がいます。
もっとも、廃止のすべてが悪いわけではありません。法人の中で事業所を統合したり、ほかの法人に事業を引き継いだりする形で閉じる場合もあります。大事なのは、閉じ方を選べる状態をつくっておくことです。管理者が突然いなくなって、選ぶ余地もなく閉じるのが、最も避けたい形です。
開業を支援する側にも、同じ視点が求められます。開業までを手伝うだけでなく、4人目を迎える時期、管理者が交代する時期まで見通した支援があってこそ、ステーションは続きます。
経営者が、4人目を迎える前に
最後に、これから4人目を採用しようとしている経営者に向けて、HokanPressとして提案したいことを挙げます。
- 創業メンバーが当たり前にやってきたこと(夜間の対応、休日の訪問、急な残業)を書き出し、どれを仕組みにし、どれを手当にするかを決める
- 求人票と面接で、オンコールの回数と手当、夜間の相談体制をはっきり伝える
- 夜間に1人で判断しなくてよいよう、相談できる「2番手」を決めておく
- 利用者の情報を、特定の人だけが知っている状態にしない
- 職員が辞めたとき、その理由を本人ではなく、まず自分たちの仕組みの側から振り返る
「4人目が続かない」は、裏返せば「3人までは創業の熱意で回る」ということです。4人目からは、熱意ではなく仕組みで回す。そこに切り替えられるかどうかが、2万か所の中で続いていくステーションと、そうでないステーションを分けるのだと、私たちは考えています。
※本稿は、週刊大阪日日新聞「訪問看護に継続の壁 『4人目』が続かない 急増の背景で廃業も」(2026年10月16日)の内容を紹介したうえで、HokanPress編集部の見解を述べたものです。記事中のステーション数などの数字は、同記事が全国訪問看護事業協会の調査として伝えたものです。
出典
- 週刊大阪日日新聞「訪問看護ステーション急増の裏で廃業も 『4人目が続かない』人材不足と経営の壁」(2026年10月16日) https://weekly-osakanichi2.net/archives/59051
- Yahoo!ニュース「訪問看護に継続の壁 『4人目』が続かない 急増の背景で廃業も(週刊大阪日日新聞)」 https://news.yahoo.co.jp/articles/3299ed3e0e83913f9ffc93ca48aa81848f89985b
- 全国訪問看護事業協会「訪問看護の持続可能なサービス提供のあり方と役割に関する調査研究事業 報告書」(2025年3月) https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/r6-1.pdf
- 日本訪問看護財団「訪問看護サービス提供体制強化に向けた調査研究事業 報告書」(2026年3月) https://files.jvnf.or.jp/files/user/kenkyu/R7/rouken2025report.pdf
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執筆者
医療・看護・介護の多職種チーム
訪問看護・在宅医療の現場に携わる多職種チーム
HokanPress編集部は、訪問看護・在宅医療の現場に実際に携わる多職種チームで構成されています。看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士、介護支援専門員(ケアマネジャー)が所属。それぞれの専門分野で培った臨床経験と専門知識をもとに、医療・看護・介護従事者の実務に役立つ情報を発信しています。記事は必ず該当分野の有資格者が執筆または監修し、公的統計データや学会発表・厚生労働省の公表資料など、信頼性の高い情報源に基づいて作成しています。
保有資格: 看護師 / 理学療法士 / 作業療法士 / 言語聴覚士 / 医療ソーシャルワーカー / 管理栄養士 / 介護支援専門員
※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています



