訪問診療・往診・訪問看護は、 何が 違う? ——医師が 来る 二つの 仕組みと、 看護師が 支える 日常|月2回の 計画的な 診療、 急変時の 駆けつけ、 週数回の ケア。 三つで 在宅医療は 完成する

Summary
「通院が難しくなってきた。先生に家へ来てほしい」。そう考えたとき、実は医師が自宅に来る仕組みは二つあります。計画的に定期訪問する訪問診療と、急変時に臨時で駆けつける往診です。そして日常の療養を支えるのが、看護師による訪問看護。三つは名前が似ているようで、役割がはっきり分かれています。それぞれの違いと費用の目安、組み合わせ方、利用の始め方を、HokanPress編集部が整理してお届けします。
目次6項目
「通院が難しくなってきた。先生に家へ来てもらえないだろうか」。ご本人やご家族がそう考えたとき、知っておきたいことがあります。医師が自宅に来る仕組みは、実は二つあるのです。
一つが、計画を立てて定期的に訪問する「訪問診療」。もう一つが、急変時に臨時で駆けつける「往診」です。そして医師の訪問と組み合わせて日常の療養を支えるのが、看護師による「訪問看護」になります。
三つは名前が似ているようで、役割がはっきり分かれています。違いと組み合わせ方が分かれば、在宅医療の全体像が見えてきます。順に整理してお届けします。
訪問診療 ── 計画的に、定期的に医師が来る
訪問診療とは、あらかじめ日時を決めて、医師が定期的に自宅や施設を訪れて診療する仕組みです。月2回など、計画に基づいて訪問するのが基本になります。
内容は、外来のかかりつけ医が担うことと重なります。診察と健康管理、薬の処方と調整、在宅での血液検査や点滴、在宅酸素の管理、そして終末期の苦痛を和らげる緩和ケアまで。病状の変化を定期の診察で早めにとらえ、悪化や入院を防ぐ。いわば「家に来てくれる、かかりつけ医」です。
訪問の回数や時間帯は相談して決められるため、生活のリズムを崩さずに医療を受けられます。対象になるのは、通院が困難な方です。寝たきりの方に限らず、足腰が弱って一人での通院が難しくなった方も相談できます。
往診 ── 急変時に、臨時で医師が駆けつける
往診は、急な発熱や痛み、状態の変化があったときに、患者や家族の求めに応じて医師が臨時で駆けつける仕組みです。
計画的な訪問診療に対して、往診は突発的な対応です。在宅医療における救急的な受け皿と考えると分かりやすいでしょう。
大切なのは、両者がセットで機能するという点です。ふだんは訪問診療で計画的に診てもらい、急変したときは同じ医師が往診で駆けつける。24時間の連絡体制を整え、往診や訪問看護に対応できる「在宅療養支援診療所」という仕組みもあります。夜間や休日に連絡できる先があることは、在宅療養の何よりの安心につながります。
訪問看護 ── 日常の療養を、看護師が支える
医師の訪問が月2回だとすれば、その間の日常を支えるのが訪問看護です。
看護師が医師の指示のもとで自宅を訪れ、体調の観察、点滴や褥瘡の処置などの医療的ケア、服薬の支援、ご家族への助言を行います。週1回から数回など、医師より高い頻度で入れることが大きな特徴です。
当メディアで繰り返しお伝えしてきたとおり、訪問看護の核心は観察にあります。医師の診察と診察の間に、専門職の目が定期的に入る。小さな変化を早くとらえて医師へ報告し、悪化を防ぐ。医師の「診断と治療」に対して、看護師は「日常の療養とその見守り」を担うのです。
三つの関係 ── 役割分担と連携で、在宅医療は完成する
ここまでを整理します。
訪問診療は、計画的な診察と治療方針の管理。往診は、急変時の臨時対応。訪問看護は、日常のケアと観察。担い手は医師・医師・看護師で、頻度は月数回・必要時・週数回と分かれます。
三つはどれかを選ぶものではなく、組み合わせて使うものです。訪問看護は医師が交付する訪問看護指示書に基づいて行われ、看護師が観察した情報は医師へ報告されます。医師の診察が月2回でも、看護師の目が週に何度も入れば、変化を見逃しにくくなります。さらにケアマネジャーが介護サービス全体を調整し、薬剤師やリハビリ職、ヘルパーが加わって、在宅の暮らしは総合的に支えられます。以前の記事でお伝えした訪問介護やリハビリとの使い分けも、この全体像の中に収まります。
費用は、どれくらいかかるのか
気になる費用の目安もお伝えします。
訪問診療は医療保険が適用され、1割負担の方で月2回の訪問なら、1か月あたりおよそ7,000円が目安とされます。薬代や検査代は別途かかります。臨時の往診や処置を行った場合は、所定の費用が加わります。
訪問看護の費用は、介護保険か医療保険かで仕組みが変わります。詳しくは以前の費用の記事と、保険の使い分けの記事をご覧ください。
そして医療費が高額になった場合には、高額療養費制度により自己負担に上限が設けられます。以前の記事でお伝えしたとおり、2026年8月からは上限額が見直されていますので、負担が心配な方は限度額適用認定証などの仕組みもあわせて確認してください。
どう始めればよいか
利用を考え始めたら、相談先は三つあります。
まず、いま通っているかかりつけ医です。通院が難しくなってきたことを率直に伝えれば、訪問診療への切り替えや、在宅医の紹介につながります。入院中であれば、病院の退院支援の窓口が調整してくれます。
介護保険を使っている方は、担当のケアマネジャーに相談してください。訪問診療と訪問看護を組み合わせたケアの全体を、一緒に設計してくれます。
どこにも掛かっていない場合は、地域包括支援センターが入口になります。地域の在宅医や訪問看護ステーションの情報を持っています。
在宅医療は、医師だけで完結するものではありません。計画的な訪問診療、急変時の往診、日常を支える訪問看護。三つが役割を分け合い、連携して初めて、住み慣れた家での療養は成り立ちます。「先生に来てほしい」と思ったその日が、相談を始めるよい機会です。仕組みを知り、早めに備えておくこと。それが、通えなくなってからも安心して暮らし続けるための、確かな準備になります。
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執筆者
医療・看護・介護の多職種チーム
訪問看護・在宅医療の現場に携わる多職種チーム
HokanPress編集部は、訪問看護・在宅医療の現場に実際に携わる多職種チームで構成されています。看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士、介護支援専門員(ケアマネジャー)が所属。それぞれの専門分野で培った臨床経験と専門知識をもとに、医療・看護・介護従事者の実務に役立つ情報を発信しています。記事は必ず該当分野の有資格者が執筆または監修し、公的統計データや学会発表・厚生労働省の公表資料など、信頼性の高い情報源に基づいて作成しています。
保有資格: 看護師 / 理学療法士 / 作業療法士 / 言語聴覚士 / 医療ソーシャルワーカー / 管理栄養士 / 介護支援専門員
※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています


