住宅型ホームの 登録基準案が 出た ——併設事業所の 利用を 入居条件に する ことが 認められなくなる

Summary
厚生労働省は9月18日の検討会で、住宅型有料老人ホームに導入する登録制の登録基準案を示しました。人員配置は原則として夜間を除き職員を常駐させ、夜間はオンコール体制を義務化する内容です。訪問看護に直接関わるのは囲い込み対策のほうで、併設・隣接する関連法人の事業所の利用を入居の条件とすること、かかりつけ医やケアマネジャーの変更を強要することを認めない案が示されました。年内の政省令公布を目指しています。
目次6項目
住宅型有料老人ホームに導入される登録制について、基準の中身が出てきました。
厚生労働省は2026年9月18日、有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会に、事業者に遵守を求める登録基準の案を提示しています。当メディアでは登録制の導入自体を扱ってきましたが、基準の具体的な内容が示されたのは今回が初めてです。
示された案は二つの柱に分かれます。人員配置と、囲い込み対策です。訪問看護に関わりが深いのは後者ですが、順に見ていきます。
日中は職員常駐、夜間はオンコール
人員配置についての案はこうです。
住宅型ホームは、原則として夜間を除き職員を常駐させる。管理者と生活相談員を1人以上配置する。ただし支障がない場合には、管理者と生活相談員は施設内や他の施設の職務に従事してもよいとされています。
そのうえで、サービスの安定的な提供や入居者の健康管理などに支障が生じないよう、必要な介護職員・看護職員の体制確保を求める、という内容です。
夜間と緊急時については、必要に応じて職員が出向けるオンコール体制の確保を義務付ける案が示されました。
この考え方自体は、現行の国の指導指針をおおむね踏襲したものです。ただ、現在の住宅型ホームは届出制で運営されており、人員配置に法的な拘束力を持った厳格な基準がありません。登録制に移行すると、登録基準を満たさない事業者は原則として住宅型ホームを運営できなくなります。規制の実効性が変わるということです。
厚労省は、夜間のオンコールなど新たに義務を課す基準について、一定の経過措置を設けることも提案しています。
検討会では、要介護者の安心と安全を守る観点から夜間により充実した体制を確保すべきだという意見が出た一方、深刻な人手不足を踏まえ現場の実情に合った柔軟な基準を求める声も上がりました。
併設事業所の利用を入居条件にできなくなる
訪問看護に直接関わるのが、囲い込み対策です。
入居時の契約に関する登録基準として、次のことを認めない案が示されました。
併設・隣接する関連法人の事業所によるサービスの利用を、入居の条件とすること。かかりつけ医やケアマネジャーの変更を強要すること。特定の事業所のサービスを利用した場合に家賃を安くすること。
三つとも、当メディアが追ってきた論点です。ホスピス型住宅をめぐる議論で繰り返し指摘されてきた形が、そのまま列挙されています。
家賃を安くするという項目は具体的です。家賃を相場より低く設定し、その分を併設事業所からの介護報酬や訪問看護療養費で回収するという構造が、これまで指摘されてきました。それを登録基準で禁じる方向です。
ケアマネジャーの独立性を基準に書く
もう一つ、踏み込んだ提案があります。
入居契約とケアマネジメント契約の独立性、そしてケアマネジャーの独立性を担保する措置の実施を、登録基準に明確に位置付けるというものです。
具体的な措置として挙げられたのは四つです。契約締結やケアプラン作成の手順書・ガイドラインを策定すること。その手順書・ガイドラインを重要事項説明で入居希望者に明示すること。施設長・管理者への研修を行うこと。相談担当者を設置すること。
あわせて、近隣の介護サービス事業所の情報を入居者に提供することも求めます。特定の事業者のサービスに限定したり誘導したり、入居者の選択を妨げたりしないことを、登録基準に盛り込む案です。
ケアプランを作るケアマネジャーが同じ法人に属していれば、自法人の訪問看護や訪問介護を組み込みやすくなります。その構造に、手順書と研修と相談窓口という形で歯止めをかけようという内容です。
訪問看護にとって何が変わるか
住宅型ホームに併設する訪問看護ステーションは、少なくありません。日本看護協会の実態調査では、同一法人が医療・介護の施設や事業所を持つ訪問看護事業所が73.7%あり、そのうち同一敷地内または隣接する施設があるのが72.5%でした。掛け合わせると、全体のおよそ半分が同一敷地または隣接する施設を持つ法人に属していることになります。編集部の試算です。
もちろん、そのすべてが住宅型ホームというわけではありません。ただ、併設という形態が広く存在することは確かです。
登録基準が案のとおりに固まれば、入居の時点で併設の訪問看護を使うことを条件にできなくなります。入居者が別のステーションを選ぶことも、これまでより起こりやすくなるはずです。
すでに2026年度の診療報酬改定では、高齢者向け住まいに併設・隣接するステーションを1日単位で評価する包括型訪問看護療養費が新設され、有料職業紹介の禁止も入りました。当メディアで扱ってきたとおり、報酬の側から併設型への対応が進んでいます。今回の登録基準案は、住まいの側からの規制です。
報酬と住まいの両方から、同じ方向の規制が入ることになります。
今後の流れ
厚労省は今秋に検討会の議論をとりまとめる方針です。10月に第10回の検討会を開催し、社会保障審議会の介護保険部会への報告などの手続きを経て、年内の政省令公布を目指すとされています。
法改正により、既存の住宅型ホームの大半が新たな登録制の対象になる見通しです。事業者には登録基準の遵守が法令上求められ、行政による監督は強化されます。
時期が重なる点にも触れておきます。2027年度の介護報酬改定に向けた議論は、10月から12月にかけて個別のサービスごとの具体的な検討に入ります。12月に基本的な考え方がとりまとめられ、12月下旬に改定率が決まる流れです。住宅型ホームの政省令も年内公布を目指しています。同じ時期に、住まいの基準と報酬の両方が固まることになります。
併設している事業所が確認すること
案の段階ですが、確認しておける点はあります。
連携している、あるいは併設している住宅型ホームの入居契約に、自ステーションの利用を前提とする記載がないか。重要事項説明書でどう説明されているか。
入居者が別の訪問看護ステーションやケアマネジャーを選んだ場合に、実際にその選択が通る運用になっているか。
そして、自事業所の利用者のうち、併設ホームの入居者がどれだけの割合を占めるか。登録基準が固まった後に入居者の選択が分散すれば、その割合が高い事業所ほど影響を受けます。
当メディアで訪問看護の収支差率を扱った際、地域や事業形態によって数字が大きく違うことを示しました。併設型に依存した収益構造の事業所は、報酬と住まいの両方の規制を同時に受けます。案がどう固まるかを追っておく必要があります。
関連記事
執筆者
医療・看護・介護の多職種チーム
訪問看護・在宅医療の現場に携わる多職種チーム
HokanPress編集部は、訪問看護・在宅医療の現場に実際に携わる多職種チームで構成されています。看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士、介護支援専門員(ケアマネジャー)が所属。それぞれの専門分野で培った臨床経験と専門知識をもとに、医療・看護・介護従事者の実務に役立つ情報を発信しています。記事は必ず該当分野の有資格者が執筆または監修し、公的統計データや学会発表・厚生労働省の公表資料など、信頼性の高い情報源に基づいて作成しています。
保有資格: 看護師 / 理学療法士 / 作業療法士 / 言語聴覚士 / 医療ソーシャルワーカー / 管理栄養士 / 介護支援専門員
※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています


