限度額を 超えて 訪問した 事業所が 12.1%——回数を 増やしたい ときに 確認する 順番

Summary
日本看護協会の調査で、介護保険の限度額を超えて、利用者の自己負担か事業所の持ち出しで訪問した事業所が12.1%ありました。651事業所のうち79です。訪問の回数を増やしたいとき、限度額の残りがないと言われることがあります。そのときに確認する順番を整理します。
訪問の回数を増やしたいと思ってケアマネジャーに相談すると、今月は限度額の残りがありません、と言われることがあります。
介護保険には、要介護度ごとに1か月で使えるサービスの上限があります。区分支給限度基準額といいます。訪問看護も訪問介護もデイサービスも、同じ枠の中に入ります。枠を超えた分は保険から出ず、利用者さんが全額を負担します。1割でも3割でもなく、全額です。
訪問看護を増やせば、ヘルパーやデイサービスを減らすことになります。どこを削るかは生活全体を見て決めることなので、看護の都合だけでは動きません。
この場面で何を確認するか、順番に書きます。
12.1%という数字
日本看護協会が今年公表した実態調査に、関係する数字があります。
2025年7月から9月の3か月間に、介護保険の限度額を超えて頻回または長時間の訪問が必要になり、利用者負担または事業所の持ち出しなどで訪問したケースがあった事業所は12.1%でした。回答した651事業所のうち79です。持ち出しというのは、保険からも利用者さんからも受け取らずに訪問するということです。
利用者さんの状態は、「その他」が63.3%で最も多く、急性増悪が22.8%、難治性皮膚潰瘍が17.7%、がん以外の終末期が15.2%でした。用意された選択肢に当てはまらない理由で限度額を超えた事業所が、6割を占めています。
最初に確認すること
限度額の残りがないと言われたとき、まず確認するのは医療保険に切り替えられないかどうかです。
急性増悪などで頻回の訪問が必要になったとき、主治医が特別訪問看護指示書を出せば、その期間は医療保険の訪問看護になります。介護保険の限度額とは別の枠です。有効期間は14日間で、原則として月に1回。気管カニューレを使っている人や、真皮を越える褥瘡がある人は月に2回まで交付できます。
厚生労働大臣が定める疾病等に該当する人は、そもそも訪問看護が医療保険です。
回数を増やしたい理由が急性増悪にあたるかどうかは、看護師が判断することではありません。その日の様子、前回との違い、何を心配しているかを主治医に伝えて、判断してもらいます。指示書が出ないこともありますが、確認しないまま自費や持ち出しの話に進むのは順番が違います。
14日で足りない場合
医療保険に切り替えても、期間の上限があります。
同じ調査で、特別訪問看護指示書の有効期間である14日間を超えて頻回または長時間の訪問が必要になり、利用者負担または持ち出しで訪問したケースがあった事業所が10.8%ありました。
このときの利用者さんの状態は、急性増悪が35.7%、がん以外の終末期が35.7%、難治性皮膚潰瘍が31.4%です。介護保険側で「その他」が6割だったのに対し、こちらは状態像がはっきりしています。14日では終わらない状態がある、ということです。
判断は事業所で行う
限度額を超えるかどうか、自費にするか持ち出しにするかは、訪問した看護師が単独で決めることではありません。
管理者に報告する。ケアマネジャーに連絡する。主治医に相談する。このどれもしないまま、自分が無償で訪問すると決めてしまう形は避けたほうがいいです。
理由は二つあります。無償で行った訪問が記録に残らなければ、その利用者さんに何が必要だったのかが後から分からなくなります。もう一つは、同じ状況が次に起きたときも、同じ人が同じように背負うことになるからです。
この判断は事業所の方針の問題なので、ふだんから管理者と話しておくと動きやすくなります。
家族に説明するとき
限度額を超える分が全額負担になることを伝えるのは、基本的にケアマネジャーの役割です。ただ、訪問しているのは看護師なので、その場で聞かれることがあります。
伝えるときは、必要性の話と費用の話を分けます。今の状態では週3回の訪問が必要だと考えている、という話と、そのうち1回は保険の枠を超えるので費用がかかる、という話です。この二つを混ぜると、費用がないなら諦めてくださいと言われたように受け取られます。
必要だと考える理由を先に伝えて、そのうえで費用の選択肢を示します。判断するのは家族です。費用を理由に増やさないことになった場合は、その条件でできることを考えます。訪問日をずらす、滞在時間の中身を変える、ヘルパーや家族に担ってもらう部分を整理する。
記録は通常どおり書く
限度額を超えた訪問をしたときも、自費でも持ち出しでも、記録は普通に書きます。
何を見て回数が必要だと判断したか。誰に相談したか。主治医に確認した結果どうなったか。家族にどう説明したか。
持ち出しの訪問は請求しないため、記録がなくても業務上は困らないように見えます。ただ、その利用者さんの経過を後から追うときには必要ですし、運営指導で確認されるのも記録です。記録が残っていれば、事業所としてこういうケースが月に何件あるかも分かります。
数字は調査から出ている
12.1%という数字は、全国の事業所が調査に回答したから出てきたものです。
9月16日の介護給付費分科会で、訪問看護の団体が2027年度の報酬改定に向けた要望を出しました。その中には、特別訪問看護指示書に関わる要件の見直しも含まれています。根拠になっているのは、こうした調査の数字です。
記録も集計もされずに処理されたケースは、どこにも数えられません。
まとめ
限度額が足りないと言われたときの順番です。
医療保険に切り替えられる状態ではないかを確認する。主治医に相談する。ケアマネジャーとサービス全体の組み替えを話す。管理者に上げる。そのうえで、自費にするか、回数を変えずに内容を変えるかを決める。
急いでいるときほど自分で決めたくなりますが、飛ばさないほうが結果的に早く進みます。
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執筆者
看護師・編集長
大学病院 手術室 10年(麻酔科・外科 幅広い手術を担当)
大学病院の手術室で10年、多岐にわたる外科手術に携わる。手術看護認定看護師として後進指導にもあたった後、現在は訪問看護の現場でキャリアチェンジ中。急性期と在宅の両視点から、看護師に寄り添う情報発信を行っています。
保有資格: 看護師免許 / 手術看護認定看護師 / 医療安全管理者 / BLSプロバイダー
※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています


