障害者グループホーム大手だった株式会社恵の問題を振り返る書籍の抜粋記事が、10月28日から集英社オンラインに掲載され、ネットで読まれています。グループホームの指定取消は2024年のことですが、同じ会社が運営していた訪問看護ステーションについては、東海北陸厚生局が2025年7月31日に「指定の取消相当」を公表しています。
この公表文書には、厚生局がどうやって不正を見つけたかが書かれています。決め手の一つは、訪問に使った高速道路の領収書でした。領収書の時刻が、訪問看護記録書に書かれた訪問の時間の中に入っていたのです。記録の時刻と訪問看護指示書の日付は、外の記録と突き合わされうる。このことは、どの訪問看護ステーションにも関係があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 事業所 | 訪問看護ステーションMGK24(愛知県名古屋市緑区。2025年2月28日に廃止) |
| 事業者 | 株式会社恵(東京都港区) |
| 対応 | 指定訪問看護事業者の指定の取消相当 |
| 取消相当の日 | 2025年8月1日 |
| 監査 | 2024年5月31日から2025年2月26日まで計10日間 |
| 不正請求の金額 | 21名・63件・495,817円(監査で使った2021年8月分〜2024年4月分の訪問看護療養費明細書のうち) |
| 再指定 | 原則として、取消相当の日から5年間は再指定を行わない |
事業所はすでに廃止されていたため、指定を取り消す代わりに「取消相当」として扱われました。厚生局の説明では、指定の取消処分と同等の扱いです。
公表文書は、監査に至った経緯を順に書いています。
公表文書は、監査で分かった主な事実として次の3つを挙げています。
| 不正の内容 | 公表文書の説明 |
|---|---|
| 区分の振り替え | 短時間訪問が必要として交付された精神科訪問看護指示書に基づく訪問を、精神科訪問看護基本療養費(Ⅲ)(同一日に3人以上・週3日まで・30分未満)で請求すべきところ、金額の高い訪問看護基本療養費(Ⅱ)で請求していた |
| 夜間・早朝の加算 | 実際には訪問看護を行っていない時間に行ったものとして、夜間・早朝訪問看護加算を請求していた |
| 指示書のない訪問 | 主治医の指示を文書で受けていないのに、受けたものとして訪問し、訪問看護療養費を請求していた |
それぞれの区分の要件は、加算辞典の訪問看護基本療養費、精神科訪問看護基本療養費、夜間・早朝訪問看護加算で確かめられます。
厚生労働省の2024年6月26日の報道発表によると、愛知県と名古屋市は同日、株式会社恵が運営する障害者グループホーム5事業所の指定を取り消しました。理由は、いずれも食材料費の過大徴収と、障害福祉サービス等報酬の不正請求などです。厚労省は、食材料費の過大徴収に本社などの組織的な関与があったとして、同じサービス類型の他の事業所の指定や更新を5年間受けられなくなる、いわゆる連座制を適用しました。
厚生局の訪問看護への対応は、このグループホームの処分とは別の手続き(健康保険法にもとづく指定訪問看護事業者の監査)です。
この事例で使われた突き合わせの材料は、特別なものではありません。どのステーションにも、同じ種類の記録があります。
この事例のきっかけは、元職員からの情報提供でした。記録や請求のやり方に職員が疑問を持ったとき、内部で相談できる窓口があるかどうかも、ステーションを守ることにつながります。これは編集部の考えです。
個別指導から監査に切り替わる流れや、運営指導で確認される項目は、運営指導チェックリストと個別指導の選定基準の記事にまとめています。厚生労働省による訪問看護の全国一斉調査は、こちらの記事で取り上げました。指導・監査の記事は特集「指導・監査と不正請求」にまとめています。
※本稿は、東海北陸厚生局と厚生労働省の公表資料をもとにまとめました。公表資料にない数字や証言は使っていません。