ICTを 入れても、 使う 人が 育っていない ——国が 無料で 養成する 「デジタル中核人材」とは |訪問看護師も 対象、 9月開始、 補助金の 要件にも なる 研修の 中身

Summary
記録ソフト、電子カルテ、データ連携システム。訪問看護のデジタル化を支える道具は、この数年で一気に揃ってきました。それなのに「導入したが使われない」という声が現場から絶えません。失敗の本質は機器ではなく、推進する人の不在にあります。厚生労働省が無料で実施する「デジタル中核人材養成研修」は、その推進役を育てる仕組みです。訪問看護師も対象で、2026年9月から始まります。研修の中身と、事業所としての活かし方を整理します。
記録のソフト、電子カルテ、ケアプランのデータ連携。訪問看護のデジタル化を支える道具は、この数年で一気に揃ってきました。当メディアでも、記録の効率化や電子カルテの義務化、ICTを評価する新しい加算を、繰り返しお伝えしてきたとおりです。
それなのに、現場からはこんな声が絶えません。「システムを入れたのに、結局使われていない」「一部の人しか操作できず、かえって仕事が増えた」。
失敗の本質は、機器ではありません。導入を現場で進める「人」の不在です。厚生労働省は7月31日、その推進役を育てる「デジタル中核人材養成研修」の受講勧奨を通知しました。全国訪問看護事業協会も案内を出しています。無料で、訪問看護師も対象です。研修の中身と、事業所としての活かし方を整理してお届けします。
デジタル中核人材とは、何者か
デジタル中核人材とは、介護テクノロジーの導入や活用を含む業務の変革を通じて、現場の業務効率化とケアの質の向上を実現する人材を指します。厚生労働省が手引きで定義し、養成を進めている存在です。
ポイントは、いわゆる「パソコンに詳しい人」ではないという点にあります。国が示す人材像の中心は、現場と制度の基礎的な理解、テクノロジーとその費用への理解、そして組織を動かす力です。修了者は名簿に登録され、デジタル庁のダッシュボードでは都道府県ごとの養成状況も公開されます。国は、機器の補助と並ぶもう一つの柱として、人の養成を本気で進め始めています。
研修で学ぶのは、ITスキルではない
研修のカリキュラムを見ると、その狙いがよく分かります。習得を目指すのは、三つのスキルです。
一つ目が、課題解決のスキル。現場の課題を捉え、解決への道筋を描き、計画に落とし込む力です。
二つ目が、ファシリテーションとリーダーシップ。チームをまとめ、心理的安全性の高い環境をつくり、変革への合意形成を図る力です。
三つ目が、プロセスマネジメント。取り組みの進捗を管理し、PDCAを回して成果を分析する力です。
お気づきでしょうか。三つとも、ITの技術ではありません。求められているのは、現場の課題を整理し、職員を巻き込んで業務改善を指揮するリーダーシップです。「業者に言われるがまま機器を導入し、現場が混乱する」。そんな失敗を繰り返さないための、組織を動かす技術こそが研修の中身なのです。


