訪問看護

訪問看護のサービス提案は「押し売り」ではない——現場マネージャーが教える、利用者に必要なケアを届ける伝え方|ニーズを見立て、根拠を示し、選択は委ねる

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訪問看護のサービス提案は「押し売り」ではない——現場マネージャーが教える、利用者に必要なケアを届ける伝え方|ニーズを見立て、根拠を示し、選択は委ねる

Summary

訪問看護の現場で、意外に軽視されがちな力があります。利用者や家族に、必要なサービスを「提案する」力です。利用者の多くは、自分に何が必要かを正確には分かっておらず、遠慮して言わないことも少なくありません。その隠れたニーズを見立て、根拠とともに分かりやすく伝える。提案の巧拙が、利用者の暮らしと、事業所への信頼を左右します。現場マネージャーの視点から、提案の型とスタッフの育て方を、宮木が解説します。

目次7項目
  1. 01提案は「押し売り」ではない ── 出発点を間違えない
  2. 02提案の土台は、アセスメント
  3. 03「なぜ必要か」を、根拠とともに伝える
  4. 04選択肢を示し、決めるのは利用者に委ねる
  5. 05家族の負担も、提案の対象にする
  6. 06提案は、ケアマネジャーを通じて形になる
  7. 07マネージャーが、提案力を育てる

訪問看護の現場で、意外に軽視されがちな力がある。利用者や家族に、必要なサービスを「提案する」力だ。

利用者の多くは、自分に何が必要かを、正確には分かっていない。あるいは、分かっていても、遠慮して口にしない。その隠れたニーズを見立て、適切なサービスを、根拠とともに分かりやすく伝える。提案の巧拙が、利用者の暮らしの質を、そして事業所への信頼を、大きく左右する。

現場のマネージャーとして、スタッフのサービス提案力を、どう育てるか。提案の要点を、順に整理していきたい。

提案は「押し売り」ではない ── 出発点を間違えない

まず、大前提を確認しておく。訪問看護における提案とは、サービスを売り込むことではない。

適正化が進むいま、収益のために必要のないサービスを勧めることは、事業所の信頼を損なうだけでなく、制度の上でも許されない。以前の記事で取り上げた、過剰な訪問への適正化を思い出してほしい。数を増やすための提案は、もはや通用しない時代に入っている。

提案の出発点は、常に利用者の「ニーズ」にある。この人に、いま、何が必要なのか。見立てがあって初めて、提案は意味を持つ。ニーズのない提案は、ただの押し売りだ。スタッフには、この一線を、何よりもまず徹底させなければならない。

提案の土台は、アセスメント

良い提案は、良いアセスメントから生まれる。順序を逆にしてはいけない。

利用者と家族のニーズや状態を、正確に評価する。訪問看護計画も、アセスメントをもとに立てる。見立てが浅ければ、そこから出てくる提案も、当然、的を外す。

難しいのは、利用者本人が、必要なことを口にしないという点だ。遠慮して言わない。あるいは、自分でも気づいていない。だからこそ、表情や、生活のリズム、居室の様子の変化といった、言葉にならないサインを拾う姿勢が欠かせない。以前の記事で論じた「観察」の力が、提案の場面でも、土台として効いてくる。

「なぜ必要か」を、根拠とともに伝える

ニーズを見立てたら、次に問われるのは、伝え方だ。

提案で最も大切なのは、「なぜ、そのサービスが必要なのか」を、根拠とともに示すことにある。「リハビリを増やしましょう」と言うだけでは、相手は動かない。「最近、立ち上がりが不安定になってきました。このままだと転倒の危険があります。だから、リハビリを増やして、足の力を保ちましょう」。利用者の状態と、提案の中身を、はっきり結びつけて語る。

専門用語は、極力避ける。利用者と家族が、自分の言葉で理解できるように話すことが肝心だ。難しい言葉で説明されても、人は自分のこととして判断できない。

スタッフに求めるのは、「何を提案するか」だけではない。「なぜそれが必要かを、相手の言葉で説明できるか」まで求める。そこまでできて、初めて提案と呼べる。

選択肢を示し、決めるのは利用者に委ねる

提案は、あくまで提案でしかない。決めるのは、利用者と家族だ。

良い提案には、共通する形がある。選択肢を示し、それぞれの利点と負担を伝えたうえで、最後の判断を利用者に委ねる。押し付けない。利用者が主体的に意思決定できるよう、支える。この姿勢が、信頼を生む。

費用の不安にも、正直に向き合う。サービスを増やせば、当然、負担も増える。その点を隠さず伝え、利用者が納得して選べるようにする。以前の費用に関する記事で述べたとおり、お金の見通しは、利用者が最も気にすることの一つだ。都合の悪い情報こそ、先に伝える。

そして、信頼が土台になることを忘れてはならない。関係ができていないうちに、あれこれ提案を並べても、警戒されるだけだ。まず信頼を築き、そのうえで提案する。この順序を、スタッフにも意識させたい。

家族の負担も、提案の対象にする

提案の対象は、利用者本人だけではない。ここを見落とすと、在宅療養そのものが揺らぐ。

在宅での療養は、介護する家族の存在なしには成り立たない。その家族が、疲れ果ててはいないか。介護者の身体的・精神的な負担を見立て、支えることも、訪問看護の大切な役割だ。

家族の負担が見えてきたら、レスパイト、つまりショートステイなどで休んでもらうことや、介護者自身が相談できる窓口を、そっと差し出す。「あなたも、休んでいいのですよ」。その一言が、共倒れを防ぐことがある。以前の記事で論じた、家族全体を支えるという視点が、ここでも生きてくる。

提案は、ケアマネジャーを通じて形になる

訪問看護に特有の、重要な点を押さえておきたい。訪問看護のサービスは、ケアマネジャーのケアプランに組み込まれて、初めて提供できる。

言い換えれば、訪問看護がどれほど的確なニーズを見立てても、ケアプランに反映されなければ、その提案は実現しない。だから提案は、利用者と家族に伝えるだけで終わらせず、ケアマネジャーにも、根拠とともに共有する必要がある。

ところが現場では、「ケアマネに電話しづらい」「どこまで相談していいか分からない」といった遠慮が、しばしば連携を妨げる。看護の視点とケアプランの方針が、食い違うこともある。管理者に求められるのは、スタッフがケアマネジャーと臆せず連携できるよう、報告の型や、連携のルールを整えておくことだ。良い提案を、絵に描いた餅で終わらせず、実現へとつなげる。それも、マネジメントの一部である。

マネージャーが、提案力を育てる

最後に、現場のマネージャー自身の役割をまとめておきたい。

サービスの提案力を、個々のスタッフの感覚任せにしてはならない。管理者やリーダーが、スタッフのアセスメントの結果や、立てた看護計画を、定期的に確認し、助言する。見落としているニーズはないか。逆に、必要のない提案をしていないか。両方の側から、目を配る。

そのうえで、提案の型を、事業所全体で共有する。ニーズを見立て、根拠を示し、分かりやすく伝え、選択を委ね、ケアマネジャーにつなぐ。一連の流れを、事業所の標準として持っておく。感覚ではなく、型として提案できる組織をつくる。

提案力の高い事業所は、利用者の暮らしを的確に支え、家族から頼られ、ケアマネジャーからも信頼される。選ばれ続ける事業所は、この地道な力を、確かに備えている。

訪問看護の提案とは、売ることではない。目の前の利用者と家族の、言葉にならないニーズに気づき、その人に本当に必要なものを、根拠とともに、分かりやすく手渡すことだ。見立てる力、伝える力、そして委ねる姿勢。三つがそろったとき、提案は、押し売りではなく、信頼へと変わる。スタッフ一人ひとりが、その力を持てるように育てること。現場のマネージャーに問われているのは、そこにある。良い提案の積み重ねが、利用者の暮らしを支え、事業所を、地域に必要とされる存在へと育てていく。

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執筆者

宮木

訪問看護ステーション経営者・救急看護認定看護師

大学病院 救命救急センター 5年 / 手術室 2年 / 大手訪問看護ステーション 5年 / 訪問看護ステーション設立・代表

小学生の頃から訪問看護師を志し、大学病院の救命救急センター・手術室で急性期医療の現場経験を積む。救急看護認定看護師の資格を取得後、大手訪問看護ステーションでの勤務を経て独立。現場と経営の両視点から、医療従事者に実践的な情報を届けます。

保有資格: 看護師免許 / 救急看護認定看護師 / BLSプロバイダー / ICLSプロバイダー

※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています

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