訪問看護のサービス提案は「押し売り」ではない——現場マネージャーが教える、利用者に必要なケアを届ける伝え方|ニーズを見立て、根拠を示し、選択は委ねる

Summary
訪問看護の現場で、意外に軽視されがちな力があります。利用者や家族に、必要なサービスを「提案する」力です。利用者の多くは、自分に何が必要かを正確には分かっておらず、遠慮して言わないことも少なくありません。その隠れたニーズを見立て、根拠とともに分かりやすく伝える。提案の巧拙が、利用者の暮らしと、事業所への信頼を左右します。現場マネージャーの視点から、提案の型とスタッフの育て方を、宮木が解説します。
訪問看護の現場で、意外に軽視されがちな力がある。利用者や家族に、必要なサービスを「提案する」力だ。
利用者の多くは、自分に何が必要かを、正確には分かっていない。あるいは、分かっていても、遠慮して口にしない。その隠れたニーズを見立て、適切なサービスを、根拠とともに分かりやすく伝える。提案の巧拙が、利用者の暮らしの質を、そして事業所への信頼を、大きく左右する。
現場のマネージャーとして、スタッフのサービス提案力を、どう育てるか。提案の要点を、順に整理していきたい。
提案は「押し売り」ではない ── 出発点を間違えない
まず、大前提を確認しておく。訪問看護における提案とは、サービスを売り込むことではない。
適正化が進むいま、収益のために必要のないサービスを勧めることは、事業所の信頼を損なうだけでなく、制度の上でも許されない。以前の記事で取り上げた、過剰な訪問への適正化を思い出してほしい。数を増やすための提案は、もはや通用しない時代に入っている。
提案の出発点は、常に利用者の「ニーズ」にある。この人に、いま、何が必要なのか。見立てがあって初めて、提案は意味を持つ。ニーズのない提案は、ただの押し売りだ。スタッフには、この一線を、何よりもまず徹底させなければならない。
提案の土台は、アセスメント
良い提案は、良いアセスメントから生まれる。順序を逆にしてはいけない。
利用者と家族のニーズや状態を、正確に評価する。訪問看護計画も、アセスメントをもとに立てる。見立てが浅ければ、そこから出てくる提案も、当然、的を外す。
難しいのは、利用者本人が、必要なことを口にしないという点だ。遠慮して言わない。あるいは、自分でも気づいていない。だからこそ、表情や、生活のリズム、居室の様子の変化といった、言葉にならないサインを拾う姿勢が欠かせない。以前の記事で論じた「観察」の力が、提案の場面でも、土台として効いてくる。
「なぜ必要か」を、根拠とともに伝える
ニーズを見立てたら、次に問われるのは、伝え方だ。
提案で最も大切なのは、「なぜ、そのサービスが必要なのか」を、根拠とともに示すことにある。「リハビリを増やしましょう」と言うだけでは、相手は動かない。「最近、立ち上がりが不安定になってきました。このままだと転倒の危険があります。だから、リハビリを増やして、足の力を保ちましょう」。利用者の状態と、提案の中身を、はっきり結びつけて語る。
専門用語は、極力避ける。利用者と家族が、自分の言葉で理解できるように話すことが肝心だ。難しい言葉で説明されても、人は自分のこととして判断できない。
スタッフに求めるのは、「何を提案するか」だけではない。「なぜそれが必要かを、相手の言葉で説明できるか」まで求める。そこまでできて、初めて提案と呼べる。
選択肢を示し、決めるのは利用者に委ねる
提案は、あくまで提案でしかない。決めるのは、利用者と家族だ。
良い提案には、共通する形がある。選択肢を示し、それぞれの利点と負担を伝えたうえで、最後の判断を利用者に委ねる。押し付けない。利用者が主体的に意思決定できるよう、支える。この姿勢が、信頼を生む。


