訪問看護

訪問看護師と病院看護師、どっちが楽で、どっちが大変?——両方を経験した私が、正直に比較します|夜勤かオンコールか、チームか一人か

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訪問看護師と病院看護師、どっちが楽で、どっちが大変?——両方を経験した私が、正直に比較します|夜勤かオンコールか、チームか一人か

Summary

「訪問看護と病院、どっちが楽なの?」「どっちが大変?」。看護師の方から、よくこう聞かれます。私は急性期の病院で数年働いたあと、訪問看護に移ったので、両方の現場を自分の体で知っています。先に結論を言えば、「どちらが楽」とは簡単には言えません。両方に、違う種類の大変さと、違う種類の魅力があるからです。勤務時間、仕事の内容、身体と心の負担、給料、教育、やりがい。両方を経験した立場から、正直に比較します。

目次8項目
  1. 01勤務時間と働き方 ── 夜勤か、オンコールか
  2. 02仕事の内容 ── チームの一員か、一人の判断か
  3. 03身体の負担 ── 立ち仕事か、移動か
  4. 04心の負担 ── 急変か、孤独か
  5. 05お給料 ── 夜勤手当か、オンコール手当か
  6. 06教育とスキル ── 学べる環境か、自分で学ぶか
  7. 07やりがい ── どこに喜びを感じるか
  8. 08結局、どっちが楽で、どっちが大変?

「訪問看護と病院、どっちが楽なの?」「どっちが大変?」。看護師の方から、よくこう聞かれます。

私は、急性期の病院で数年間働いたあと、訪問看護の世界に移りました。だから、両方の現場を、自分の体で知っています。今日は、この問いに、両方を経験した立場から、できるだけ正直にお答えしたいと思います。

先に結論をお伝えします。「どちらが楽」という問いには、実は、答えがありません。病院には病院の大変さがあり、訪問には訪問の大変さがある。楽さの種類も、大変さの種類も、まるで違うのです。だからこそ、大切なのは「どちらが楽か」ではなく、「自分にとって、どちらの大変さなら引き受けられるか」だと思います。順に、比べていきましょう。

まずは、全体像を一覧で示します。

比較の項目訪問看護師病院看護師
勤務時間日勤中心・夜勤なし(直行直帰も)交代制・夜勤あり・不規則
夜間/休日オンコール(自宅待機・当番制)夜勤で対応
働く単位基本は一人で訪問チームで対応・医師が常駐
判断その場で自律的に判断医師にすぐ相談できる
スピード感じっくり関われる急性期はスピード重視
身体の負担移動(運転・自転車)・天候夜勤・立ち仕事・多忙
心の負担一人の判断責任・オンコール急変対応・大所帯の人間関係
給料の目安約549万円(オンコール手当)約576万円(夜勤手当)
教育・研修事業所により差・自分で学ぶ院内研修が充実
やりがい生活に長く寄り添う専門技術・チームの達成感

一覧だけでは伝わらないところを、一つずつ、丁寧に見ていきます。

勤務時間と働き方 ── 夜勤か、オンコールか

まず、いちばん気になるであろう、働く時間の話です。

病院は、交代制で、夜勤があります。日勤と夜勤が入れ替わる生活は、どうしても不規則になりがちです。夜勤明けの独特の疲れを、経験した方も多いでしょう。

訪問看護は、日勤が中心で、夜勤がありません。私の場合、基本は日中の勤務です。事業所によっては、事務所に寄らず、自宅から直接訪問先へ向かう直行直帰もできます。生活のリズムが整いやすく、休日の予定も立てやすい。ワークライフバランスという点では、訪問のほうが保ちやすいと、実感しています。

ただし、訪問看護には、オンコールがあります。夜間や休日に、専用の携帯電話を持ち帰って自宅で待機し、利用者さんやご家族からの電話に対応する仕組みです。多くの事業所では交代制で、月に数回、当番が回ってきます。呼び出しがなければ自宅でゆっくりできますが、当番の日は、いつ電話が鳴るか分からないという緊張が、静かに続きます。夜勤のように必ず病院にいるわけではないけれど、心が完全には休まらない。オンコールは、訪問看護の、大きな特徴であり、大変さの一つです。当番の頻度や、実際に電話が鳴る回数は、事業所によってかなり違うので、転職を考えるなら、そこは必ず確認したほうがいいと思います。

夜勤の身体的なつらさか、オンコールの心の緊張か。どちらがきついかは、その人の生活や性格によって、感じ方が大きく分かれるところです。

仕事の内容 ── チームの一員か、一人の判断か

次に、仕事そのものの中身です。ここに、両者のいちばん大きな違いがあると、私は思っています。

病院では、多くの患者さんを、チームで看ます。分からないことがあれば、先輩や医師がそばにいて、すぐに相談できます。急性期の現場では、次々と変わる状況に、スピードをもって対応することが求められます。

訪問看護では、利用者さんの家に、基本的に一人で入ります。そして、その場で起きたことに、自分で判断を下さなければなりません。医師は、その場にはいないのです。以前の記事でもお伝えした、「家に上がるからこそ気づける」観察や、その人の生活に合わせた個別性の高いケアこそが、訪問看護の醍醐味です。急性期のようなスピードは求められませんが、一人ひとりと、じっくり向き合って看護ができます。

一方で、家には、病院のような設備は整っていません。病院なら当たり前にある物品が、その場にないことも多い。だからこそ、家にあるもので工夫したり、限られた条件のなかで臨機応変に対応したりする力が、自然と身につきます。

この「一人で判断する」ということは、訪問看護の大きな魅力であると同時に、大きな重圧でもあります。自分の判断が、その人の状態を左右する。その緊張は、病院でチームに支えられていたときとは、明らかに質が違いました。慣れるまでは、一件終えるごとに、どっと疲れたのを覚えています。

身体の負担 ── 立ち仕事か、移動か

体力的な面でも、負担のかかり方が違います。

病院は、夜勤があり、一日中立ちっぱなしで、忙しいときは走り回ります。身体的な負担は、決して小さくありません。

訪問看護には、移動があります。車を運転したり、自転車で地域を回ったり。夏の暑い日も、冬の寒い日も、雨の日も、外を移動します。そして、一人で処置を行うので、体を使う場面もあります。ただ、直行直帰ができれば、通勤の負担そのものは減ります。

つまり、体のきつさは、どちらが上ということではなく、種類が違うのです。病院は院内での多忙さ、訪問は移動と屋外の負担。自分がどちらに耐えやすいかを、考えてみるといいと思います。

心の負担 ── 急変か、孤独か

心にかかる負担も、性質が異なります。

病院では、急変や、お看取りが、日常的にあります。命に向き合う現場の、張りつめた緊張。加えて、大きな組織ならではの、チーム内の人間関係の難しさも、多くの看護師が悩むところです。

訪問看護では、一人で判断する責任が、常に肩にかかります。オンコールの緊張も、そこに加わります。利用者さんやご家族との距離が近いぶん、深く関われる喜びがある一方で、その関係の重さを感じることもあります。人間関係という点では、訪問は少人数で、一人職場に近い働き方です。大きな組織の人間関係とは、悩みの種類が違います。どちらのストレスが自分に合っているかは、本当に人それぞれです。

お給料 ── 夜勤手当か、オンコール手当か

現実的に、気になるのがお給料でしょう。

病院は、夜勤手当がつくぶん、収入が上がりやすい傾向があります。訪問看護には夜勤手当はありませんが、代わりにオンコール手当があります。

意外に思われるかもしれませんが、平均の年収で見ると、訪問看護師と病院看護師のあいだに、大きな差はありません。以前の記事で紹介したデータでも、訪問看護師がおよそ549万円、病院看護師がおよそ576万円と、近い水準でした。しかも、訪問看護は残業が比較的少ないため、実質的な時給で考えると、その差はさらに縮まります。「訪問看護に移ると給料が大きく下がる」というイメージは、必ずしも当たらないのです。

教育とスキル ── 学べる環境か、自分で学ぶか

これから成長したい人にとって、教育の環境は、大切な判断材料です。ここは、正直にお伝えします。

病院は、院内の研修が充実していて、最新の医療情報が入ってきやすい環境です。新人教育の体制も整っていて、手術や治療の補佐を通じて、高度な医療スキルを学ぶ機会もあります。

訪問看護は、この点では、病院ほど恵まれていないことが多いです。ステーション内の研修は少なめで、決まった教育プログラムやキャリアの段階が整っていない事業所もあります。最新の医療情報は、自分で外部の研修や勉強会に足を運んで、取りに行く必要があります。

ただし、訪問看護でしか身につかない力も、確かにあります。限られた条件で臨機応変に動く力、多くの職種と連携する力、そして、病気だけでなく生活全体を見る視点です。以前の記事でお伝えしたとおり、新卒を段階的に育てる仕組みも、少しずつ広がってきています。学ぶ環境が整った病院で基礎を固めてから、訪問に移るという道は、私自身が歩んだ道でもあり、おすすめできる選び方の一つです。

やりがい ── どこに喜びを感じるか

最後に、いちばん大切かもしれない、やりがいの話です。

病院のやりがいは、専門的な技術を磨けること。そして、チームで力を合わせて、一人の患者さんの回復を支えたときの達成感。急性期の、命を救う現場ならではの手ごたえがあります。

訪問看護のやりがいは、利用者さんの生活に、深く、そして長く寄り添えることです。「あなたが来てくれて、本当に助かる」という言葉を、直接、受け取れること。その人の人生の、最終章に伴走できること。病院では数日で退院していった患者さんと、訪問看護では、何年もお付き合いすることがあります。

どちらのやりがいに、自分の心が動くか。それが、向き不向きを分ける、いちばん大きなポイントなのかもしれません。

結局、どっちが楽で、どっちが大変?

ここまで比べてきて、はっきりしたことがあります。「どちらが楽か」という問いには、やはり答えがない、ということです。

病院には、夜勤や、多忙さや、大所帯の人間関係という大変さがあります。訪問には、一人で判断する重圧や、オンコールや、移動という大変さがあります。冒頭の比較グラフでも見えたとおり、大変さの「形」そのものが、違うのです。だから、単純にどちらが上とは言えません。

チームで働き、最新の医療を学び、専門的な技術を磨きたい人には、病院が向いています。自律的に判断し、一人ひとりの生活に寄り添い、ワークライフバランスを保ちたい人には、訪問看護が向いています。どちらが優れているという話では、まったくありません。

私自身は、病院での経験があったからこそ、いまの訪問看護で、落ち着いて判断できています。病院で学んだ基礎は、訪問の現場でも、確かに生きています。ですから、もし今あなたが病院で働いていて、訪問看護に興味を持っているなら、これまでの経験は、決して無駄にはなりません。

どちらの道を選んでも、その先には、看護師としての、違う景色が広がっています。「どっちが楽か」ではなく、「自分は、どんな看護がしたいのか」。その問いを、どうか大切にしてほしいと思うのです。

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執筆者

未希

看護師・編集長

大学病院 手術室 10年(麻酔科・外科 幅広い手術を担当)

大学病院の手術室で10年、多岐にわたる外科手術に携わる。手術看護認定看護師として後進指導にもあたった後、現在は訪問看護の現場でキャリアチェンジ中。急性期と在宅の両視点から、看護師に寄り添う情報発信を行っています。

保有資格: 看護師免許 / 手術看護認定看護師 / 医療安全管理者 / BLSプロバイダー

※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています

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