厚生労働省は10月26日の介護報酬改定検証・研究委員会で、離島・中山間地域・豪雪地帯などにある介護事業所の調査結果(速報値)を示しました。特別地域加算などの地域の加算が、いまの形でよいかを考えるための調査で、訪問看護も対象に入っています。
訪問看護では、1事業所あたりの職員が全国より少なく、職員1人あたりの訪問も少ないという結果でした。地域の加算については、特別地域加算は対象の事業所の8〜9割が算定していた一方、小規模事業所加算は約半数にとどまっていました。
対象は、3つの加算(特別地域加算、中山間地域等における小規模事業所加算、中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算)の対象地域にある事業所です。離島振興法、山村振興法、豪雪地帯対策特別措置法、半島振興法、過疎地域などの法律で指定された地域を指します。比べるために、対象地域の外にあって、対象地域に住む利用者へのサービス提供加算を算定している事業所(近接地域)も調べています。
調査の時点は2026年7月1日で、郵送とウェブで回答を集めました。居宅療養管理指導を除く14のサービスで対象地域の事業所25,772か所に調査票を送り、8,297か所が答えています(回収率32.2%)。2026年7月の熊本地震の影響を考え、熊本県は対象から外されました。
全国の値には、別の調査(令和7年度介護事業経営概況調査)の数字が使われています。調査が違うので、全国との比較は目安として見る必要があります。
| 訪問看護 | 中山間地域等 | 近接地域 | (参考)全国 |
|---|---|---|---|
| 1事業所あたりの職員(常勤換算) | 6.5人 | 10.7人 | 8.6人 |
| 職員1人あたりの月の訪問 | 40.7件 | 47.9件 | 48.8件 |
| 職員1人あたりの訪問(勤務8時間あたり) | 2.0件 | 2.4件 | ― |
| 回答した事業所 | 389か所 | 40か所 | 254か所 |
中山間地域等の訪問看護は、1事業所あたりの職員が6.5人で、全国の8.6人より約24%少なくなっています。職員1人あたりの月の訪問は40.7件で、全国の48.8件より約17%少ない数字です。勤務8時間あたりで見ても、中山間地域等は2.0件で、近接地域の2.4件を下回りました。
訪問の件数は介護保険の訪問だけを数えていて、医療保険の訪問は入っていません。医療保険の利用者が多い事業所ほど、件数が少なく出ることには注意が必要です。
移動に時間がかかる地域ほど、1日に回れる件数は減ります。調査は訪問介護について移動時間を分析していて、平均の移動時間が短い事業所ほど、勤務8時間あたりの訪問が多い傾向が出ました。訪問看護については、この分析は示されていません。
中山間地域等の訪問看護の人件費率は86.6%(132か所)でした。近接地域は86.2%、全国は70.1%です。厚労省はまとめで、人件費率は全体に中山間地域等のほうが高く、とくに訪問介護と訪問看護で差が大きいとしています。
ただ、この人件費率は、介護保険の収入に対する人件費の割合です。訪問看護は医療保険の訪問も行うので、医療保険の分の人件費が混ざっていれば、実際より高く出ます。次の収支差率について、厚労省はまさにこの点を理由に「参考値」としています。人件費率には同じ注記がありませんが、同じ影響を受けている可能性があると編集部は考えています。
厚労省は訪問看護の収支差率を、地域ごとの分布で示しました。マイナス20%を下回る事業所は、どの地域でも3〜4割を占めています。全国では5.1%です。
| 地域 | 回答 | マイナス20%未満 | マイナスの事業所の合計 |
|---|---|---|---|
| 山村振興法の地域 | 23か所 | 43.5% | 65.2% |
| 豪雪地帯 | 48か所 | 41.7% | 66.7% |
| 半島振興法の地域 | 31か所 | 35.5% | 67.8% |
| 特定農山村地域 | 73か所 | 37.0% | 61.6% |
| 過疎地域 | 88か所 | 35.2% | 62.5% |
| (参考)全国 | 254か所 | 5.1% | 38.2% |
厚労省は、マイナスの事業所の割合が高かったのは、半島振興法の地域、豪雪地帯、山村振興法の地域の順だったとしています。離島(4か所)など回答が10か所未満の地域は、比較から外されています。全国の訪問看護の収支差率(2024年度決算の平均)は10.3%です。
この図は、厚労省自身が「参考値」としています。介護保険の収入に対して、医療保険の分の費用が混ざっている可能性があるためです。医療保険の分が混ざっていると考えられる事業所は、訪問回数の割合で費用を按分して調整したものの、それ以外の事業所にも混ざっている可能性が残る、と注記しています。数字の大きさそのものより、「全国との差が大きい」という向きを読むのが妥当でしょう。
訪問看護(介護保険)で使える地域の加算は、次の3つです。
| 加算 | 上乗せ | 主な要件 |
|---|---|---|
| 特別地域訪問看護加算 | 所定単位数の15% | 告示で定める地域(離島や振興山村など)にある事業所。届出が必要 |
| 中山間地域等における小規模事業所加算 | 所定単位数の10% | 告示で定める地域にあり、1か月の延べ訪問回数が100回以下の事業所。届出が必要 |
| 中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算 | 所定単位数の5% | 告示で定める地域に住む利用者へ、通常の事業の実施地域を越えて訪問した場合。交通費は受け取れない |
いずれも、所定単位数には緊急時訪問看護加算・特別管理加算・ターミナルケア加算を含めません。
調査では、加算の対象だと答えた事業所のうち、実際に算定している割合を聞いています。
| 地域 | 特別地域加算(対象→算定) | 小規模事業所加算(対象→算定) |
|---|---|---|
| 山村振興法の地域 | 95か所→93.7% | 11か所→36.4% |
| 豪雪地帯 | 89か所→91.0% | 34か所→55.9% |
| 半島振興法の地域 | 29か所→79.3% | 15か所→53.3% |
| 特定農山村地域 | 113か所→85.8% | 42か所→52.4% |
| 過疎地域 | 138か所→87.7% | 57か所→50.9% |
特別地域加算は、対象の事業所の8〜9割が算定していました。これに対して小規模事業所加算は、多くの地域で半分ほどです。同じ地域の訪問介護では、小規模事業所加算の算定は豪雪地帯で76.5%、過疎地域で77.2%などで、訪問看護はこれより低くなっています。
7月23日の分科会の資料(2025年11月審査分)では、訪問看護の請求事業所のうち小規模事業所加算を算定したのは0.7%でした(7月の記事)。全体で見て低いのは、対象の地域にある事業所がもともと少ないためです。今回の調査は、対象の事業所に絞っても、小規模事業所加算は半分ほどしか算定されていないことを示しました。
調査は、訪問看護がこの加算を算定していない理由を聞いていません。届出をしていない、利用者の負担が増えるのを避けている、といった事情が考えられますが、これは編集部の推測です。なお、通所介護について聞いたサービス提供加算の未算定の理由では、「中山間地域に住む利用者はいるが、通常の事業の実施地域の中に住んでいるため」が最も多くなっています。
9月16日の介護給付費分科会の意見交換会で、日本訪問看護財団と全国訪問看護事業協会は、特別地域加算と中山間地域等における小規模事業所加算の加算率の見直しを求めていました(9月17日の記事)。日本看護協会の実態調査でも、地域の加算を算定している事業所はごく一部でした(9月19日の記事)。
今回の速報値は、こうした要望を議論するときの、国の側のデータになります。職員が少なく、移動に時間がかかり、収支も厳しい(参考値)という傾向は、要望の内容と重なっています。一方で、いまある小規模事業所加算が対象の事業所の半分ほどにしか届いていないこともわかりました。加算率を上げるだけでなく、届いていない理由をどう埋めるかも論点になりそうです。
遠い地域に拠点を置く方法としてのサテライトの考え方は、9月22日の記事で整理しています。
速報値は介護給付費分科会に報告され、2027年度の介護報酬改定の議論に使われます。厚労省の予定では、分析はこのあと12月ごろまで続き、2027年2月ごろに委員会が最終的な結果を評価し、3月ごろに分科会で議論します。数字は速報値なので、最終的な結果では変わる可能性があります。
2027年度改定の論点は、特集「訪問看護の2027年度改定」と、回ごとの論点を並べた2027年改定トラッカーにまとめています。
※本稿は、第33回介護報酬改定検証・研究委員会(2026年10月26日)の資料1-2と参考資料3をもとにまとめました。数字はすべて速報値です。全国の値は令和7年度介護事業経営概況調査によるもので、資料に載っている値をそのまま使っています。