厚生労働省は10月19日の社会保障審議会介護給付費分科会で、2027年度の介護報酬改定に向けた訪問看護の論点と対応案を示しました。その中に、訪問看護の看護師等が「D to P with N」のオンライン診療を補助した場合の評価を、介護報酬に新しく設ける案が入っています。ICTを使って地域の医療機関と情報連携した場合の評価を設ける案も、あわせて示されました。
医療保険では、2026年6月の診療報酬改定で、訪問看護ステーション側が算定できる訪問看護遠隔診療補助料ができています。介護保険の利用者については、次の介護報酬改定までの間、訪問看護費の「所要時間20分未満」の区分で代わりに算定する扱いになっています。一方、同じ資料の調査では、オンライン診療の補助に前後の対応も含めて平均35.9分かかっていました。
| 論点 | 対応案 |
|---|---|
| D to P with N | 訪問看護事業所の看護師等が、D to P with N によるオンライン診療の補助を行った場合に評価を新設してはどうか |
| ICTによる情報連携 | 訪問看護ステーションが地域の医療機関等とICTを用いて情報連携した場合の評価を設けてはどうか |
資料は論点の中で、D to P with N の補助は「看護師等の所属や定期的な訪問の有無等による違いがあり、医療保険との整理に留意が必要」としています。介護報酬で新しく評価するときも、医療保険でどう分けているかとそろえる必要がある、ということです。単位数や算定の要件は、まだ示されていません。
D to P with N は、患者(Patient)のそばに看護師(Nurse)がいる状態で、医師(Doctor)がオンライン診療を行う形です。看護師は、医師の指示のもとで患者の様子を伝えたり、診療の補助をしたりします。
資料は、2026年度の診療報酬改定での D to P with N の評価の全体像と、介護保険での当面の扱いを示しています。訪問看護ステーションの看護師が補助する場合を整理すると、次のようになります。
| 場面 | 医療保険の訪問看護の利用者 | 介護保険の訪問看護の利用者 |
|---|---|---|
| 定期的な訪問看護の時に、あわせて補助した | 訪問看護療養費を通常どおり算定 | 計画的な訪問看護の時間に補助の時間を合算した区分の訪問看護費を算定 |
| 予定された訪問看護がない日に、補助のために訪問した | ステーションが訪問看護遠隔診療補助料(月1回2,650円)を算定 | 次の介護報酬改定までの間は、訪問看護費の「所要時間20分未満」の区分を算定(月1回) |
医療保険の訪問看護遠隔診療補助料は、主治医の医療機関とステーションがそれぞれ基準に適合し、地方厚生局長等に届け出ていることが前提です。
介護保険の「20分未満」の区分は、指定訪問看護ステーションの場合314単位、病院・診療所の場合266単位です。介護予防訪問看護費では、それぞれ303単位と256単位です。訪問看護指示書の交付を受けていない利用者の場合は、医療機関が訪問看護遠隔診療補助料を算定し、ステーションとは合議で費用を精算します。
医療保険の訪問看護遠隔診療補助料の要件は、9月25日の記事と加算辞典の訪問看護遠隔診療補助料にまとめています。
資料は、令和7年度の老人保健健康増進等事業の調査から、訪問看護事業所の看護師等が D to P with N の補助を行ったときの所要時間を示しています。
| 段階 | 件数 | 平均 | 中央値 |
|---|---|---|---|
| 診察前の情報収集・アセスメント | 78 | 11.2分 | 10分 |
| 通信環境の設置・確認 | 75 | 5.9分 | 5分 |
| 医師の診察・診療の補助 | 82 | 9.7分 | 7分 |
| 医師の診察後の看護師の療養支援、フォロー | 69 | 9.1分 | 10分 |
医師の診察の補助そのものは平均9.7分ですが、前後の対応を含めた平均の合計は35.9分でした。資料は、診察前の準備や診察後の対応にも一定の時間がかかっている実態があるとしています。
いまの介護保険の扱いは、補助のための訪問を「20分未満」の区分で算定するものです。実際にかかっている時間との差をどう評価に反映するかが、新しい評価の単位数を決めるうえでの焦点になりそうです。これは編集部の見方です。
医療保険では、2026年6月の改定で訪問看護医療情報連携加算(月1回1,000円)が新設されました。他の医療機関などの関係職種がICTで記録した利用者の診療情報を活用して、訪問看護の計画的な管理を行った場合の評価です。連携機関が5以上あることや、利用者ごとに情報を時系列で見られるICTを使うことなどが要件です。詳しくは医療情報連携加算の記事にまとめています。
資料は、介護の現場でも訪問看護事業所と患者の情報を共有する医療機関が多く、ICTを使った平時からの連携体制が広がっているとして、介護保険でも評価を設ける案を示しました。根拠として、全国訪問看護事業協会の調査(2024年)が引用されています。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| ICTを他の事業所との連携に使っているステーション | 2018年 41.5% → 2023年 87.8% |
| 地域連携にICTを使う効果(複数回答・n=2,333) | 時間の短縮 75.6%、連絡もれの防止 64.4%、患者のQOL向上 40.3% |
| 他の事業所との連携方法(複数回答・n=2,303) | 電話・対面・郵送・FAX 98.8%、電子メール 71.6%、オンライン会議 57.8%、医療用SNS 52.3% |
ICTを使っていても、電話やFAXとの併用が続いていることがうかがえます。介護保険の新しい評価が、医療保険の医療情報連携加算と同じ要件(連携機関の数やICTの仕様)になるかは、まだ示されていません。
資料には、これまでの分科会で出た訪問看護についての意見がまとめられています。この論点に関係するのは次の2つです。
対応案は、2027年度の介護報酬改定に向けた議論の途中の段階です。単位数や算定の要件は、今後の分科会での議論を経て示されます。
同じ回のほかの論点は、夜間・深夜加算などの論点①の記事と、理学療法士等による訪問看護の評価を扱った論点③の記事にまとめています。回ごとの論点は2027年改定トラッカー、改定の全体は特集「訪問看護の2027年度改定」へ。
※本稿は、第271回介護給付費分科会の資料3をもとにまとめました。対応案は議論の途中のもので、単位数や要件はまだ決まっていません。