都心と地方で、訪問看護の経営はこう違う——需要・コスト・競合・加算を徹底比較|都心は高需要×高コスト×競合過多、地方は低需要×低コスト×加算あり

Summary
同じ訪問看護ステーションでも、都心で運営するのと地方で運営するのとでは、経営のあり方がまるで違います。都心は利用者が集まりやすい半面、家賃も人件費も高く、競合がひしめく。地方は利用者が少なく移動も長い一方、固定費は軽く、競合も少ない。需要、コスト、競合、人材、そして地域加算などの制度の面から、都心と地方の訪問看護経営の違いを、比較して整理します。開業や経営戦略を考える方に向けた分析です。
同じ訪問看護ステーションでも、都心で運営するのと、地方で運営するのとでは、経営のあり方がまるで違います。都心は利用者が集まりやすい半面、家賃も人件費も高く、競合がひしめきます。地方は利用者が少なく移動も長い一方、固定費は軽く、競合も少ない。立地が変われば、勝ち筋も、つまずき方も変わります。
開業や経営を考えるうえで、両者の違いを正確に押さえておく価値は大きいはずです。都心と地方、それぞれの訪問看護経営の特徴を、需要、コスト、競合、人材、そして制度の面から、比較して整理します。
需要密度が、収益の土台を決める
まず、利用者の数と分布から見ていきます。
都心では、利用者が密集しています。狭い範囲に、多くの在宅療養者が暮らす。訪問先どうしが近く、移動にかかる時間が短い。だから、一日に回れる件数を増やせます。稼働を上げやすい環境です。
地方は、対照的です。利用者がまばらに点在し、訪問先は遠い。一軒から次の一軒へ移るのに、長い時間がかかります。一日に訪問できる件数は、どうしても限られる。稼働を上げにくい構造を抱えています。
訪問看護の収益は、訪問件数と単価の掛け算が土台です。件数を稼ぎやすい都心と、稼ぎにくい地方。収益構造の出発点から、両者は分かれます。
コスト構造は、逆の姿を見せる
売上の土台が逆なら、コストもまた逆になります。
都心は、家賃が高い。看護師の賃金水準も高く、人材を確保するコストがかさみます。地方は、家賃が安く、賃金水準も相対的に低い。固定費が軽く済みます。
介護報酬の仕組みも、この差を織り込んでいます。訪問看護の介護報酬には、1級地からその他までの8つの地域区分があり、都市部ほど1単位あたりの単価が高く設定されている。都市部の高い人件費や賃料を、単価に反映させるための仕組みです。区分は、公務員の地域手当を参考に決められています。なお、医療保険の訪問看護療養費は、基本的に全国一律で、地域による単価の差は、介護保険の側で調整されます。
都心は「高い売上、高いコスト」。地方は「低い売上、低いコスト」。都心が一方的に儲かるわけでも、地方が一方的に不利なわけでもありません。
地方には、地方を支える加算がある
地方の不利を補うため、制度上の手当も用意されています。代表的なものを、三つ挙げます。
一つ目が、特別地域訪問看護加算です。離島や中山間地域など、事業所から利用者宅まで片道1時間以上を要するような地域で、サービス費用の15%を上乗せできます。二つ目が、中山間地域等小規模事業所加算。中山間地域にある小規模な事業所に、10%を加算する仕組みで、月の延べ訪問回数が100回以下といった要件があります。三つ目が、中山間地域等居住者サービス提供加算。中山間地域に住む利用者に、通常の実施地域を超えて訪問した場合に、5%を加算します。
いずれの加算も、移動の距離や、天候、利用者宅の点在、人材確保の難しさといった、都市部にはない負担を評価するものです。地方で事業を営むなら、これらを算定できるかどうかが、採算を大きく左右します。開業の前に、自らのエリアが対象地域に該当するかを確認しておく価値は、非常に高いといえます。


