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都心と地方で、訪問看護の経営はこう違う——需要・コスト・競合・加算を徹底比較|都心は高需要×高コスト×競合過多、地方は低需要×低コスト×加算あり

HokanPress編集部 · 2026年8月2日
同じ訪問看護ステーションでも、都心で運営するのと地方で運営するのとでは、経営のあり方がまるで違います。都心は利用者が集まりやすい半面、家賃も人件費も高く、競合がひしめく。地方は利用者が少なく移動も長い一方、固定費は軽く、競合も少ない。需要、コスト、競合、人材、そして地域加算などの制度の面から、都心と地方の訪問看護経営の違いを、比較して整理します。開業や経営戦略を考える方に向けた分析です。

同じ訪問看護ステーションでも、都心で運営するのと、地方で運営するのとでは、経営のあり方がまるで違います。都心は利用者が集まりやすい半面、家賃も人件費も高く、競合がひしめきます。地方は利用者が少なく移動も長い一方、固定費は軽く、競合も少ない。立地が変われば、勝ち筋も、つまずき方も変わります。

開業や経営を考えるうえで、両者の違いを正確に押さえておく価値は大きいはずです。都心と地方、それぞれの訪問看護経営の特徴を、需要、コスト、競合、人材、そして制度の面から、比較して整理します。

需要密度が、収益の土台を決める

まず、利用者の数と分布から見ていきます。

都心では、利用者が密集しています。狭い範囲に、多くの在宅療養者が暮らす。訪問先どうしが近く、移動にかかる時間が短い。だから、一日に回れる件数を増やせます。稼働を上げやすい環境です。

地方は、対照的です。利用者がまばらに点在し、訪問先は遠い。一軒から次の一軒へ移るのに、長い時間がかかります。一日に訪問できる件数は、どうしても限られる。稼働を上げにくい構造を抱えています。

訪問看護の収益は、訪問件数と単価の掛け算が土台です。件数を稼ぎやすい都心と、稼ぎにくい地方。収益構造の出発点から、両者は分かれます。

コスト構造は、逆の姿を見せる

売上の土台が逆なら、コストもまた逆になります。

都心は、家賃が高い。看護師の賃金水準も高く、人材を確保するコストがかさみます。地方は、家賃が安く、賃金水準も相対的に低い。固定費が軽く済みます。

介護報酬の仕組みも、この差を織り込んでいます。訪問看護の介護報酬には、1級地からその他までの8つの地域区分があり、都市部ほど1単位あたりの単価が高く設定されている。都市部の高い人件費や賃料を、単価に反映させるための仕組みです。区分は、公務員の地域手当を参考に決められています。なお、医療保険の訪問看護療養費は、基本的に全国一律で、地域による単価の差は、介護保険の側で調整されます。

都心は「高い売上、高いコスト」。地方は「低い売上、低いコスト」。都心が一方的に儲かるわけでも、地方が一方的に不利なわけでもありません。

地方には、地方を支える加算がある

地方の不利を補うため、制度上の手当も用意されています。代表的なものを、三つ挙げます。

一つ目が、特別地域訪問看護加算です。離島や中山間地域など、事業所から利用者宅まで片道1時間以上を要するような地域で、サービス費用の15%を上乗せできます。二つ目が、中山間地域等小規模事業所加算。中山間地域にある小規模な事業所に、10%を加算する仕組みで、月の延べ訪問回数が100回以下といった要件があります。三つ目が、中山間地域等居住者サービス提供加算。中山間地域に住む利用者に、通常の実施地域を超えて訪問した場合に、5%を加算します。

いずれの加算も、移動の距離や、天候、利用者宅の点在、人材確保の難しさといった、都市部にはない負担を評価するものです。地方で事業を営むなら、これらを算定できるかどうかが、採算を大きく左右します。開業の前に、自らのエリアが対象地域に該当するかを確認しておく価値は、非常に高いといえます。

競合の多さが、戦い方を変える

事業所の数にも、都心と地方で大きな差があります。

都心は、事業所が過密です。同じ地域に、いくつものステーションがひしめき合う。利用者の獲得も、人材の獲得も、競争が激しくなります。以前の記事でお伝えしたとおり、紹介元への営業や、専門分野での差別化が、生き残りの条件になります。

地方は、競合が少ない。地域で独占的な立場を築きやすい環境です。ただし、競合が少ない背景には、そもそも需要が少ないという事情もあります。独占できたとしても、その市場自体が小さい。競合の少なさは、必ずしも有利とは限らないのです。

人材確保の難しさが、事業を左右する

人材をめぐる事情も、都心と地方で分かれます。

都心には、看護師が相対的に多くいます。ただし競合も多いため、獲得の競争は激しい。賃金を引き上げなければ、採用は難しくなります。前回取り上げたデータでも、人口比で見ると都市部の看護師はむしろ薄く、増え続ける需要に追いつきにくい実態がありました。

地方は、看護師そのものが少ない地域です。来てもらうこと自体が、簡単ではありません。少人数で運営していると、一人が欠けただけで事業が回らなくなるリスクも大きくなります。限られた人数で、広い地域をどう支えるか。その体制づくりが、地方の経営の要になります。

集合住宅か、戸建てか ── 訪問の形も違う

訪問先の住まいの形にも、都心と地方で違いが出ます。

都心には、集合住宅や高齢者向けの住まいが多い。一つの建物に複数の利用者がいれば、移動なく効率的に訪問できます。ただし、2026年の診療報酬改定で、同一の建物への訪問看護は、評価が大きく見直されました。以前の記事で詳しく取り上げたとおり、効率だけを追う運営は、通用しにくくなっています。

地方は、戸建てが中心です。一軒ごとに訪問し、そのつど移動する。効率は落ちますが、一人ひとりの暮らしに、じっくり関われる面もあります。

立地に応じた戦略を、どう描くか

都心にも地方にも、それぞれの勝ち筋があります。最後に、立地ごとの戦略を整理します。

都心の事業者に求められるのは、高い需要を活かしつつ、激しい競合を勝ち抜く力です。専門性による差別化、業務の効率化、そして人材の確保と定着に、しっかり投資する。集合住宅への対応も、適正化のルールを踏まえ、訪問の必要性を説明できる形で行う。競争のなかで選ばれ続ける工夫が、都心では欠かせません。

地方の事業者に問われるのは、少ない需要と長い移動という制約のなかで、いかに事業を成り立たせるかです。特別地域加算などの制度を最大限に活用し、ICTやサテライトを使って、広い地域を効率的にカバーする。地域で唯一の担い手として、行政や医療機関と連携し、その存在を地域全体で支えてもらう関係を築くことも有効です。

これから開業を考える人にとって、最初の問いは立地です。参入しようとするエリアが、都心の「競合過多」なのか、地方の「需要希薄」なのか。収益の土台も、コストも、競合も、使える加算も、立地によって決まります。感覚ではなく、地域の人口や高齢化率、事業所数といったデータで見極めること。その見極めが、開業の成否を大きく分けます。

訪問看護の経営に、唯一の正解はありません。高い需要と激しい競合の都心か、軽い固定費と少ない需要の地方か。どちらが有利という話ではなく、自らの立地の特性を正確に理解し、それに合った経営を設計できるかどうかが問われます。立地は、あとから変えられない前提です。だからこそ、その前提を正しく読み、強みを活かし、弱みを補っていく。都心なら競合のなかで選ばれる工夫を、地方なら制度と連携で成り立たせる工夫を、それぞれに重ねる。立地の特性を味方につけた事業所こそが、その地域で、長く在宅医療を支え続けられるのだと思います。

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