厚生労働省は10月28日の社会保障審議会介護給付費分科会で、2027年度からの介護報酬の「地域区分」の見直し案を示しました。地域区分は、介護報酬の1単位を何円で計算するかを、市町村ごとに決める仕組みです。訪問看護は、地域による1単位の値段の差が最も大きいグループに入っています。
見直し案は、公務員の地域手当に合わせて級地を決める原則を続けつつ、単価が大きく変わるのをやわらげる経過措置を2029年度末まで設けるものです。どの市町村が何級地になるかは、市町村の意向を改めて聞いたうえで決まります。
介護報酬は、サービスごとに決まった単位数に、1単位の値段を掛けて計算します。1円未満は切り捨てです。1単位の値段は、サービスの種類と、事業所がある市町村の級地によって、10円から11.40円まで分かれています。
人件費の地域差を報酬に反映するための仕組みです。訪問看護は、人件費の割合が70%とされるグループに入り、訪問介護、訪問入浴介護、居宅介護支援、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護と同じ値段になります。
| 級地 | 上乗せ割合 | 訪問看護の1単位 | 自治体の数(2024〜2026年度) |
|---|---|---|---|
| 1級地 | 20% | 11.40円 | 23 |
| 2級地 | 16% | 11.12円 | 7 |
| 3級地 | 15% | 11.05円 | 29 |
| 4級地 | 12% | 10.84円 | 24 |
| 5級地 | 10% | 10.70円 | 59 |
| 6級地 | 6% | 10.42円 | 137 |
| 7級地 | 3% | 10.21円 | 170 |
| その他 | 0% | 10円 | 1,292 |
人件費の割合が55%や45%とされるサービスでは、1級地でも11.10円や10.90円です。訪問看護のグループは、級地による差が最も大きくなります。
医療保険の訪問看護療養費には、この地域区分の仕組みはありません。今回の見直しで変わりうるのは、介護保険の分の収入です。離島や中山間地域などの特別地域加算は、地域区分とは別の仕組みです(10月27日の記事)。
訪問看護ステーションの30分以上1時間未満の訪問は823単位です。加算を含めずに、級地ごとの金額を計算すると次のようになります。
| 級地 | 1回あたり | 月100回の場合 | その他の地域との差(月100回) |
|---|---|---|---|
| 1級地 | 9,382円 | 938,220円 | +115,220円 |
| 2級地 | 9,151円 | 915,176円 | +92,176円 |
| 3級地 | 9,094円 | 909,415円 | +86,415円 |
| 4級地 | 8,921円 | 892,132円 | +69,132円 |
| 5級地 | 8,806円 | 880,610円 | +57,610円 |
| 6級地 | 8,575円 | 857,566円 | +34,566円 |
| 7級地 | 8,402円 | 840,283円 | +17,283円 |
| その他 | 8,230円 | 823,000円 | ― |
上の表は、告示の単位数と資料の1単位の値段から編集部が計算しました。
級地が1つ動くだけでも、金額は変わります。たとえば5級地から4級地に上がれば、この例では月100回で11,522円増えます。下がる場合は、同じだけ減ります。利用者の負担額(1〜3割)も、同じ割合で増えたり減ったりします。
ただし、2027年度からの級地がいまと同じ8段階になるかは、資料には書かれていません。下で見るように、もとになる公務員の地域手当が5段階に変わっているためです。
地域区分は、地域の民間の賃金水準を反映している公務員(国家公務員か地方公務員)の地域手当に合わせて決めるのが原則です。
その国家公務員の地域手当が、2024年8月の人事院勧告で見直されました。区分を決める地域の単位を、市町村から都道府県を基本に広げ、区分の段階を7つから5つに減らすものです。2025年度から段階的に、支給割合の引き上げや引き下げが進んでいます。資料の例では、見直し後の地域手当は、1級地の20%から5級地の4%までの5段階で示されています。
地方公務員の地域手当も同じように見直されています。2025年12月の分科会への報告では、特別交付税の減額措置が2025年度から廃止されたため、国家公務員と違う独自の割合を決める自治体が増えることも考えられる、としていました。
前回の地域区分の見直しは、2014年の人事院勧告を受けた2015年度の改定でした。
| 項目 | 案の内容 |
|---|---|
| 原則 | 国家公務員か地方公務員の地域手当に合わせて級地を決める |
| 経過措置 | 市町村が望めば、いまの上乗せ割合と地域手当の割合の範囲で、級地や上乗せ割合を決められる。期限は2029年度末まで。2030年度からは、その年の改定のときに市町村の意見を聞く |
| 隣の市町村との差の特例 | 「5級地差ルール」と「4級地差ルール」をやめ、「3級地差ルール」にする |
| ほかの特例 | 周りを高い(低い)地域に囲まれている場合などの特例は続ける |
| 決め方 | この案を前提に、市町村の意向をもう一度聞いたうえで決める |
いまの経過措置は、2026年度末までとなっています。資料の例では、地域手当が5級地(10%)から3級地(12%)に上がった市町村は、介護の地域区分を10〜12%の範囲で選べます。2025年12月の報告では、3年ごとに段階的に引き上げていく決め方もできるとしていました。
新しい「3級地差ルール」は、3級地以上の差がある地域と隣り合っている場合に、差が2級地になるところまで、級地を上げたり下げたりできるとするものです。地域手当の段階が7つから5つに減るため、いまの「5級地差ルール」に当てはまる自治体がなくなることを理由にしています。
厚労省は2026年2月、全国の市町村に、2027年度からの地域区分についての意向を聞いています。2027年度からの区分を示したうえでの調査ではなく、見直しを考えるための調査です。
| 回答 | 自治体の数 |
|---|---|
| 地域手当に合わせる(いまの上乗せ割合と変わらない) | 1,088(62.5%) |
| 地域手当に合わせる(いまより上乗せ割合が上がる) | 438(25.2%) |
| いまと同じ上乗せ割合を希望(経過措置を希望) | 140(8.0%) |
| その他 | 75(4.3%) |
「その他」には、地域手当と違う割合を望む自治体や、まだ決めていない自治体が含まれます。
資料には、これまでの分科会で出た意見がまとめられています。
関係団体の意見交換会では、全国介護事業者連盟、介護人材政策研究会、全日本病院協会が、引き下げになる地域への配慮や激変緩和を求めていました。介護人材政策研究会は、3年ごとの改定の枠にとらわれない新しい経過措置も求めています。資料に載っている要望の中に、訪問看護の団体のものはありません。
厚労省は、今回の案を前提に市町村の意向をもう一度聞き、2027年度からの地域区分を決めます。2025年12月の分科会への報告では、2026年末ごろに市町村へ2027年度からの地域区分を示す予定とされていました。
2027年度の介護報酬改定のそのほかの論点は、特集「訪問看護の2027年度改定」と、回ごとの論点を並べた2027年改定トラッカーにまとめています。地域による費用の違いは、8月2日の記事でも整理しています。
※本稿は、第272回介護給付費分科会(2026年10月28日)の資料3と、第252回(2025年12月26日)の報告資料をもとにまとめました。2027年度からの各市町村の級地は、まだ示されていません。