訪問看護ステーションは、2024年度の1年間で全国2,487か所が新しく開設し、886か所が廃止されました。前年度初めの稼働数17,329か所に対して、廃止率は5.1%です。
ただし、この5.1%は全国を平均した数字です。都道府県別に見ると、廃止率が8%を超える県がある一方で、1年間に1か所も廃止がなかった県もあります。開業を考えている人にとっても、今の事業所を続けていく経営者にとっても、自分の県がどちら側なのかは、全国平均より重い情報です。
本記事では、全国訪問看護事業協会の令和7年度調査(2025年4月1日現在)をもとに、都道府県別の廃止率を整理します。47都道府県それぞれの数字は都道府県別データで確認できます。
| 項目 | 令和6年度(2024年4月〜2025年3月) |
|---|---|
| 稼働数 | 17,329か所 → 18,754か所(+1,425・+8.2%) |
| 新規開設 | 2,487か所 |
| 廃止 | 886か所 |
| 休止 | 355か所 |
| 廃止率(廃止÷年度初めの稼働数) | 5.1% |
| 開設した年度のうちに廃止した事業所 | 69か所 |
事業所数は8.2%増えました。しかし、その裏側で886か所が退出しています。前年度(令和5年度)の廃止は701か所だったので、廃止の件数自体も増えています。
「増えているから安泰」ではなく、「増えながら、同時に淘汰が進んでいる」のが今の姿です。
都道府県別の廃止率です。母数が小さいと1〜2か所の廃止で率が大きく振れるため、前年度初めの稼働数が200か所以上の県に絞って並べています。
| 都道府県 | 廃止率 | 廃止 / 前年度初めの稼働数 | 同じ年度の新規開設 |
|---|---|---|---|
| 鹿児島県 | 8.2% | 19 / 232 | 25 |
| 千葉県 | 7.8% | 50 / 640 | 102 |
| 三重県 | 7.4% | 17 / 231 | 37 |
| 沖縄県 | 7.3% | 19 / 261 | 46 |
| 大阪府 | 6.8% | 134 / 1,967 | 321 |
| 愛知県 | 6.8% | 79 / 1,160 | 197 |
| 奈良県 | 6.7% | 14 / 208 | 40 |
| 京都府 | 6.0% | 27 / 448 | 75 |
| 都道府県 | 廃止率 | 廃止 / 前年度初めの稼働数 | 同じ年度の新規開設 |
|---|---|---|---|
| 愛媛県 | 0.0% | 0 / 211 | 17 |
| 熊本県 | 3.1% | 10 / 327 | 49 |
| 群馬県 | 3.1% | 10 / 321 | 58 |
| 長野県 | 3.1% | 7 / 223 | 17 |
| 宮城県 | 3.3% | 7 / 215 | 31 |
| 岐阜県 | 3.3% | 10 / 304 | 44 |
| 神奈川県 | 3.5% | 37 / 1,047 | 150 |
| 茨城県 | 3.8% | 11 / 288 | 36 |
愛媛県は、この1年間の廃止が0か所でした。稼働数211か所に対して新規は17か所と、参入も穏やかです。
対照的に、大阪府は新規321か所・廃止134か所。入れ替わりの量そのものが他県と桁違いです。
新規開設率(新規÷前年度初めの稼働数)と廃止率の関係を、前年度初めの稼働数が100か所以上の42県で調べました。
新規開設率が高い県(佐賀19.8%、奈良19.2%、滋賀18.7%、群馬18.1%、沖縄17.6%)と、低い県(岩手4.9%、青森5.4%、福井6.7%、福島7.0%、長野7.6%)を比べると、傾向は見て取れます。
ただし、これは相関であって因果ではありません。「新規参入が廃止を引き起こしている」とは、このデータだけでは言えません。需要が伸びている県に参入も退出も集まっている、という読み方もできます。群馬県のように、新規開設率18.1%で廃止率3.1%という県もあります。
全国で、開設した年度のうちに廃止した事業所が69か所ありました。前年度は47か所だったので、こちらも増えています。
県別では大阪府15か所、愛知県10か所、福岡県7か所、埼玉県5か所、千葉県4か所、兵庫県4か所の順です。新規開設が多い県に集中しています。
1年もたずに閉じる理由は、このデータからは分かりません。ただ、訪問看護ステーションには看護職員を常勤換算2.5人以上置くという人員基準があり、1人の退職で基準を満たせなくなる規模の事業所が多いことは、廃業の構造として繰り返し指摘されています。
全国では1,425か所増えましたが、稼働数が前年より減った県も3つあります。
| 都道府県 | 稼働数の変化 | 新規 | 廃止 | 休止 |
|---|---|---|---|---|
| 三重県 | 231 → 209(−22) | 37 | 17 | 10 |
| 福井県 | 104 → 103(−1) | 7 | 3 | 5 |
| 佐賀県 | 121 → 120(−1) | 24 | 7 | 6 |
三重県は新規37か所に対して廃止17・休止10で、差し引き22か所の減少です。休止を含めると、退出の規模は廃止の数字だけで見るより大きくなります。
都道府県別データでは、47都道府県それぞれについて次の数字を載せています。開業の判断材料としては、この3つを順に見ることを勧めます。
開業資金と収支の見通しは開業ガイド、廃業に至る構造は倒産・廃業の実態と対策で整理しています。