なぜ、訪問看護ステーションは廃業するのか——増え続ける裏で、廃止は過去最高の886件に|看護師2.5人の壁、採用難、利用者不足、資金繰り。潰れる原因を整理する

Summary
訪問看護ステーションは増え続けています。それなのに、廃業する事業所も過去最高の水準です。2024年度の廃止は886件で、前年から約26%増えました。需要は高まっているはずなのに、なぜこれほど潰れるのでしょうか。看護師2.5人という人員基準の壁、採用難と離職の悪循環、利用者が集まらない現実、資金繰りと経営ノウハウの不足——訪問看護が廃業に至る原因を、HokanPress編集部が整理してお届けします。
訪問看護ステーションは、増え続けています。高齢化が進み、在宅で療養する人が増える中で、訪問看護の需要は高まる一方です。新規に開業するステーションの数も、過去最高を更新しています。
ところが、その一方で、廃業する事業所もまた、過去最高の水準になっています。一般社団法人全国訪問看護事業協会の調査によると、2024年度に廃止となった訪問看護ステーションは886か所。前年度の701か所から、およそ26%も増えました。休止したステーションも、355か所にのぼります。
需要が高まっているはずの訪問看護で、なぜ、これほど多くの事業所が廃業に追い込まれるのでしょうか。今回は、その原因を、一つずつ整理してお届けします。
訪問看護の廃業は、他業種よりも多い
まず、訪問看護の廃業が、どのくらいの水準なのかを押さえておきましょう。
訪問看護ステーションの廃業率は、およそ5%台とされています。これは、決して低い数字ではありません。中小企業庁の中小企業白書によれば、2020年における日本の中小企業全体の廃業率は3.3%でした。日本全体の事業と比べても、訪問看護ステーションの廃業率は高いことがわかります。
そして、もう一つ重要な特徴があります。それは、開業して間もない事業所の廃業が多い、という点です。たとえば2021年には、新規に開業した訪問看護ステーションが1,806か所あった一方で、廃止が490か所、休止が242か所ありました。廃止と休止を合わせた数は、その年の新規開業数の、およそ4割に相当します。もちろん、この年に開業した事業所がそのまま4割潰れた、という意味ではありませんが、それだけ多くの事業所が、市場から退出しているのです。
需要は高いのに、開業して間もなく潰れる事業所が多い。この一見矛盾した現実の背景を、ここから探っていきます。
原因① 看護師2.5人という「壁」
訪問看護の廃業を語るうえで、まず押さえておかなければならないのが、人員基準です。
訪問看護ステーションを運営するには、看護職員を、常勤換算で2.5人以上(うち1名は常勤)配置しなければなりません。これは、法律で定められた基準です。この基準を満たせなくなれば、事業を続けることはできません。
そして、多くの小規模なステーションは、この基準ギリギリの人数で運営しています。だからこそ、看護師が一人辞めるだけで、基準を満たせなくなる、という危機に直面するのです。
とりわけ、開業して間もない時期は、脆いものです。開業したばかりの事業所は、経営を安定させるため、採算が見えるラインになるまで、次の看護師の採用を控えることがあります。ところが、その採算ラインに届く前に、既にいる看護師が辞めてしまうと、たちまち人員基準を割り込んでしまう。採用が間に合えばよいのですが、間に合わなければ、廃業を選ばざるをえません。訪問看護の廃業の多くは、突き詰めれば、この「人員基準を維持できるかどうか」という、一点に集約されるのです。
原因② 看護師が採れない、辞めていく
その人員基準を維持するうえで、避けて通れないのが、看護師の採用と定着の問題です。


