厚生労働省は10月19日の社会保障審議会・介護給付費分科会で、2027年度の介護報酬改定に向けて、訪問看護の見直し案を示しました。その一つが、緊急時訪問看護加算を算定している利用者に、その月に初めて夜間に訪問した場合でも、「早朝・夜間加算」や「深夜加算」をつけられるようにするという案です。
いまのルールでは、緊急時の訪問のうち月の1回目には、時間帯の加算がつきません。夜中に駆けつけても、それがその月の最初の呼び出しなら、夜間や深夜の加算は算定できない。訪問看護の関係団体が見直しを求めていた点に、厚労省が手を入れる方向を示した形です。
厚労省の資料は、対応案として次のように書いています。
医療ニーズのある利用者が増えているなか、夜間の訪問看護を提供した際の月初回の訪問時に、緊急時訪問看護加算を算定している場合も「早朝・夜間加算」及び「深夜加算」を算定可能としてはどうか。
資料には、この案の根拠となる調査の結果も載っています。夜間に緊急訪問をした913事業所のうち、570事業所に「初回のため加算を算定できなかった」利用者がいました。訪問看護の2団体(全国訪問看護事業協会、日本訪問看護財団)が2026年に行った調査と同じ数字です。3か月間で、1事業所あたりの加算を算定できなかった利用者は、夜間で1.2人、深夜で0.8人、早朝で0.6人でした。
HokanPressでは10月11日の記事で、この「月の初回の壁」を取り上げました。今回の案が実現すれば、夜間や深夜の最初の緊急訪問にも、時間帯に応じた評価がつくことになります。
厚労省は、訪問看護について4つの論点を示しました。
このうち論点①では、夜間の加算のほかに、次のような対応案が並んでいます。
安全管理の研修 医療保険の運営基準と同じように、事故などが起きたときの安全管理体制についての研修を受けることを、介護保険の運営基準にも「望ましい」こととして加える。
サテライトの設置 サテライト(出張所)の設置数に上限を設けている自治体があるなど、扱いにばらつきがあることを踏まえ、本体との一体的な運営について、より具体的な要件の目安を自治体に示す。資料によると、設置数に上限を設けている自治体は28ありました。
認知症ケア 認知症の利用者への支援など、専門性の高い看護師の役割を踏まえて、専門管理加算の対象を広げる。
ターミナルケアの評価 看護体制強化加算の要件にあるターミナルケア加算について、医療保険と介護保険の利用者が混在する実態を踏まえ、事業所の実態に応じて評価する。資料では、看護体制強化加算を算定できない理由として最も多かったのが、ターミナルケア加算の算定者数の要件(33.6%)でした。
残薬の確認 残薬を確認し、医師や薬剤師に報告することを、運営基準上の要件にする。
難治性皮膚疾患 在宅難治性皮膚疾患処置指導管理を受けている利用者を、特別管理加算Ⅱと長時間訪問看護加算の対象に加える。
資料には、看護小規模多機能型居宅介護についても同じように評価してはどうか、という記載もあります。
資料は、これまでの分科会で出た主な意見もまとめています。処遇改善をさらに進める必要があること、従事者の高齢化などで事業所を続けることが難しくなっていること、入院の前から退院後まで切れ目なく支える体制を評価すべきこと、などです。
訪問看護の中身についての指摘もあります。リハビリの職員の割合が高い事業所があり、訪問看護の本来の姿から離れているのではないか。看護師による訪問と、リハビリの職員による訪問を分けて評価すべきではないか。こうした意見が論点③以降でどう扱われているかは、続報でお伝えします。
関係団体からは、病院の看護職員との賃金の差を縮めること、夜間の緊急訪問の加算の要件を見直すこと、看護サマリーの作成を評価すること、認知症看護を専門管理加算の対象にすることなどが要望されていました。夜間の加算と認知症看護は、今回の対応案に入っています。
今回示されたのは、あくまで厚労省の「案」です。分科会での議論を経て、12月に基本的な考え方がまとまり、改定率が決まったあと、2027年1月ごろに答申が出る見込みです。具体的な単位数や算定の要件は、そこで固まります。
論点④の「住まいの形態に合わせたサービス提供に係る報酬の在り方」は、高齢者向け住まいに住む利用者への訪問の評価にかかわる論点とみられます。有料老人ホームの登録制や、医療保険側の同一建物の評価の見直しとも関係する可能性があり、内容を確認しだいお伝えします。
※本稿は、第271回社会保障審議会介護給付費分科会(2026年10月19日)の資料3「訪問看護」のうち、論点①の部分と、これまでの主な意見をもとにまとめました。論点②〜④の対応案と、当日の委員の発言は、本稿の時点では確認できていません。