厚生労働省は10月21日、介護現場で起きた事故の報告を全国で一つにまとめる「介護現場における事故情報報告システム」を、2027年4月ごろから動かす予定だと示しました。あわせて、事業所が市町村に出す事故報告書の様式の見直し案を公表しています(介護保険最新情報Vol.1548)。
いまは市町村ごとに事故報告の様式や範囲がばらばらで、全国の事故を集めて分析する仕組みがありません。国は報告をそろえて集め、傾向を分析し、現場に返すことを目指しています。
介護の事業所が事故を市町村に報告することは、すでに義務になっています。ただ都道府県や国への報告は任意で、情報は一つに集まっていません。
報告のルールも地域によって違います。どこまでの事故を報告するのか、どの様式を使うのか。厚労省の標準様式を使っている市町村は、6割強にとどまります(介護ニュースJoint、2025年12月)。これでは、全国の傾向を同じ物差しで分析できません。
社会保障審議会の介護保険部会は2025年12月の意見で、全国で事故の情報を集めて分析し、現場に返す必要があると指摘しました。今回の新しいシステムは、その流れを受けたものです。介護サービス情報公表システムの一部として作られます。
新しい様式はシステムが動き出したあとに入力の画面に反映される予定です。主な変更点は次のとおりです。
これまでの様式は自由に書く欄が中心でした。選ぶ形が増えることで、書く手間を減らしつつ、全国で集計しやすくする狙いがあります。
第1報の考え方は変わりません。様式の1から6までの項目をできるだけ書き、事故が起きてから速やかに、遅くとも5日以内をめどに市町村に出します。
ただしこの様式はまだ「現時点の案」です。厚労省は内容を調整中としています。
訪問看護にも事故を報告する義務があります。国の運営基準をもとに各自治体が定める条例では、訪問看護の提供中に事故が起きたときは、速やかに市町村、利用者の家族、ケアマネジャーなどに連絡することになっています。
一方で国が2024年11月に示した事故報告の標準様式は、介護保険施設やグループホーム、有料老人ホームなどが対象でした。訪問看護を含む居宅サービスについては「可能な限り活用」するよう求めるにとどまっています。
今回の通知も新しいシステムで訪問看護などの居宅サービスをどう扱うのかを、はっきりとは書いていません。対象とする事故の範囲は、2025年12月の時点で「専門家による議論の場で詰める」とされていました。
とはいえ見直し案の中身には、訪問看護にもかかわる項目が並んでいます。事故の種別には、誤薬や与薬もれ、チューブが抜けるなどの医療処置に関する事故、車両の事故も入っています。事故を「利用者が日常の動作の中で起こしたもの」と「職員が関わったもの」に分ける考え方も、訪問看護の振り返りに使えそうです。看護師がいない時間に利用者が転んだのか、訪問中に起きたのかで、見直すべき点は変わるからです。
新しいシステムが動き出すまでまだ半年ほどあります。それまでに、次のことを確かめておくとよいでしょう。
新しい様式の考え方は報告のためだけのものではありません。同じ事故を繰り返さないために何を見ればよいかを示した、振り返りの型でもあります。システムが動き出す前から、ステーションの中の記録に取り入れておくこともできます。
※本稿は、厚生労働省「介護現場において事故が発生した際の報告について」(介護保険最新情報Vol.1548、2026年10月21日)と、同「介護保険施設等における事故の報告様式等について」(介護保険最新情報Vol.1332、2024年11月29日)、各社の報道をもとにまとめました。新しいシステムで訪問看護などの居宅サービスがどう扱われるかは、本稿の時点では示されていません。