宮崎市に11月2日、「宮崎県訪問看護総合支援センター」が開所した。訪問看護ステーションを経営や人材確保などの面から支える拠点で、宮崎市学園木花台西2丁目の県看護等研修センターの中に置かれた。設置したのは県看護協会だ。日本看護協会によると、宮崎県の設置は全国で27か所目になる(宮崎日日新聞、MRT宮崎放送)。
訪問看護総合支援センターは、日本看護協会が各都道府県に設置を働きかけてきた組織だ。名前は聞いても、何をしてくれるところなのかは知られていない。国の補助事業の調査と、宮崎県の訪問看護の数字から、この拠点ができる意味を読む。
日本看護協会は2019年度から2022年度にかけて、都道府県の看護協会などに委託してセンターの運営を試した。その結果をもとに、2024年3月に「訪問看護総合支援センター 設置・運営の手引き」をまとめている。手引きは、センターの目的を3つ、機能を7つに整理した。
| 目的 | 機能 |
|---|---|
| 経営支援 | 事業所の運営基盤の整備の支援、訪問看護事業所の開設の支援 |
| 人材確保 | 潜在看護師・プラチナナース(定年前後の看護師)などの就業と転職の促進、人材出向の支援、新卒看護師の採用に向けた取り組み |
| 訪問看護の質の向上 | 訪問看護に関する情報の分析、教育・研修の実施体制の組織化 |
手引きは、経営支援が必要な理由として、訪問看護の事業所の多くが小さいことを挙げる。看護職員が5人未満の事業所は全体の57%を占める(第220回社会保障審議会介護給付費分科会の資料)。手引きによれば、小さく始めた事業所では、管理者が日々の訪問に追われて経営や組織の運営に時間をとれず、収益が伸びない悪循環に陥ることがある。そこを、地域の拠点が外から支えるという考え方だ。
日本看護協会は、全都道府県への設置をめざしている。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングが国の補助事業として2025年10月から12月に行った調査は、都道府県の訪問看護総合支援センター26か所を対象にしている。宮崎の開所の前の数で、日本看護協会の「27か所目」と合う。
開設の主体は、都道府県の看護協会が24か所(92.3%)、都道府県の訪問看護ステーション協議会が2か所(7.7%)だった。開設した年は2023年が最も多く(26.9%)、2021年と2022年がそれぞれ15.4%で続く。多くは、ここ数年でできたばかりの組織だ。財源は、都道府県の委託事業が12か所(46.2%)、地域医療介護総合確保基金が7か所(26.9%)だった。
センターが事業所向けにしていることは、次のとおりだ。
| 支援の種類 | 最も多い取り組み | 次に多い取り組み |
|---|---|---|
| 事業所の開設の支援 | 相談窓口の設置・運営 92.3% | 新任の管理者向けの研修 61.5% |
| 事業所の運営基盤の整備の支援 | 相談窓口の設置・運営 100% | 管理者向けのマネジメントの研修 80.8% |
運営の支援では、26か所すべてが相談窓口を置いている。同じ調査で都道府県の行政に聞くと、開設の支援も運営の支援も「特になし」や無回答が多かった。事業所の相談の窓口は、行政よりもセンターが担っている形だ。
宮崎が27か所目ということは、47都道府県のうち、このセンターをまだ持たない都道府県は20ある計算になる。ただし、手引きによると、2023年9月の時点でも、センターか、センターと似た機能を持つ組織がある都道府県は30あった。センターの名前がなくても、似た窓口を持つ県もある。
宮崎県の訪問看護ステーションの数を、全国訪問看護事業協会の調査で見る。
| 項目 | 宮崎県 | 全国 | 宮崎の全国順位 |
|---|---|---|---|
| 稼働しているステーション(2026年4月1日) | 213か所 | 20,051か所 | 29位 |
| 人口10万人あたり | 20.6か所 | 16.2か所 | 6位 |
| 1年の増加率(2025年4月→2026年4月) | 3.9% | 6.9% | 37位 |
| 2025年度中の廃止率 | 2.4% | 5.1% | 低いほうから6番目 |
| 住民1人あたりの訪問看護医療費(2024年度) | 5,712円 | 5,481円 | 12位 |
人口10万人あたりは、宮崎県の総人口(103万3千人、令和6年度国民医療費の統計表)で割って出した。
人口に対するステーションの数は全国で6番目に多い。訪問看護医療費(医療保険の訪問看護の費用)も、住民1人あたりで全国平均を上回る。一方で、増え方は鈍い。2025年度中に新しく18か所が開き、5か所が廃止され、稼働しているステーションは205か所から213か所へ8か所増えた。全国の伸びが6.9%なのに対し、宮崎は3.9%で、47都道府県のなかで37番目だ。廃止率は全国の半分以下と低い。
宮崎県の訪問看護のもう一つの特徴は、地理だ。当サイトの特別地域のデータでは、宮崎県で、振興山村・過疎地域・離島振興対策実施地域などの国の指定を受けた区域を含む市町村は26ある(区域の一部だけのものを含む)。内訳は振興山村が16、過疎地域が16、離島が3などだ。
宮崎県は、訪問看護ステーションを新しく開くときに必要な車両や衛生用品などの費用を補助している。2026年5月27日の宮崎県介護人材確保推進協議会で、県は次のように説明した。
県は、宮崎市以外の市町村を「訪問看護ステーションが少ない」と位置づけている。県全体の数字が全国の上位でも、宮崎市の外では足りていないという認識だ。
開設の費用を県が出し、開設の相談と新任の管理者の研修をセンターが受け持つ。全国のセンターの取り組みに照らすと、宮崎のセンターがこの役を担えば、補助で開いた小さなステーションが、その後も続くかどうかを支える形になる。廃止率が低い宮崎では、閉じることよりも、宮崎市の外で新しく開くことのほうが課題として見えるからだ。ここまでは編集部の見方だ。
全国の調査から見ると、センターに持ち込める相談は、次のようなものになる。
センターの事業は、都道府県ごとに違う。財源も、県の委託だったり基金だったりする。自分の県のセンターが何をしているかは、県看護協会に問い合わせるのが早い。
人口あたりのステーションが多い宮崎県でも、伸びは全国の6割に満たず、県は宮崎市の外を「少ない」と見ている。宮崎のセンターが、宮崎市の外の小さなステーションの相談相手になれるかどうか。27か所目の拠点が試されるのはそこだと、編集部は見ている。
宮崎県の数字は、宮崎県の訪問看護ステーション数と宮崎県の特別地域のページにまとめている。中山間地域の小規模な事業所の評価については、10月27日の記事にまとめている。
※本稿は、報道と、日本看護協会・国の補助事業・宮崎県の資料、全国訪問看護事業協会の調査、国民医療費の統計をもとにまとめた。宮崎のセンターが担う役割と、ステーションのセンターの使い方についての記述は、編集部の見方である。