「訪問看護に興味はあるけれど、オンコールが不安で」。転職を考えている看護師さんから、いちばん多く聞かれる声です。
夜中に何度も呼ばれるのではないか。眠れないのではないか。翌日の勤務に響くのではないか。私も訪問看護に移る前、同じことを心配していました。
実際のところ、どうなのか。今日は、オンコールの実態を、公的な調査の数字と、現場の実感の両方からお伝えします。不安をあおるつもりも、きれいごとで塗り固めるつもりもありません。数字を知れば、判断できることがあると思うのです。
まず、仕組みを確認しておきましょう。
オンコールとは、利用者さんの急な状態の変化に備えて、夜間や休日に待機する体制のことです。担当の看護師が専用の携帯電話を持ち、利用者さんやご家族からの連絡に応じます。事業所に泊まり込むわけではなく、自宅で過ごしながら待機します。
電話を受けたら、まず状況を聞き取ります。相談だけで解決することもあれば、必要と判断すれば緊急訪問に向かいます。24時間対応体制加算を算定しているステーションでは、この体制が欠かせません。
いちばん気になるのが、当番の頻度でしょう。
一般的には、月4回から8回程度になることが多いようです。ステーションに所属する看護師の人数によって変わります。スタッフが多ければ、一人あたりの回数は減ります。
事業所によって差は大きく、平均月2回から3回というステーションもあります。1日担当した後に数日空くこともあれば、何日か連続で当番になることもあり、シフトの組み方はまちまちです。
体制も、1人体制のところと、メインとサブの2人体制をとっているところがあります。2人体制なら、自分のほかにもう一人控えているという安心感がありますが、その分だけ当番の日数が増える可能性もあります。
ここからが本題です。当番の日、電話は本当に鳴るのでしょうか。
厚生労働省の資料によれば、平均的な訪問看護ステーションで、緊急訪問の必要がある利用者さんは1割未満です。緊急訪問の回数は、利用者さん1人あたり月に3回ほど。そして緊急訪問が行われる時間帯は、多くが日中で、夜間や深夜のケースは約3割にとどまります。
この数字をもとに試算すると、利用者さんが100人いるステーションで、看護師1人が夜間や深夜に緊急訪問する頻度は、月に0回から2回程度と考えられます。
実際の出動は月0回から2回が約75%を占めるとされ、多くは電話対応だけで解決しています。「夜中に何度も呼び出される」という想像は、実態とかなり違うのです。
もう一つ大切なのが、電話が鳴っても、必ず出動するわけではないという点です。
多くは電話相談だけで済みます。「熱が出た」「眠れない」「機器のアラームが鳴った」といった連絡に対して、状況を聞き取り、対処の方法をお伝えし、翌朝の訪問で様子を見る。そういう対応が、実際にはかなりの割合を占めます。
もちろん、緊急訪問が必要な場面もあります。夜間に「息苦しくて横になれない」という連絡を受け、訪問して血圧の低下やむくみ、冷汗といった所見から心不全の悪化を疑い、救急要請につなげる。そうした判断が求められることも、確かにあります。以前の記事でお伝えした観察の力が、電話越しにも、訪問先でも問われます。
待機に対しては、手当が支払われます。
相場は、待機1日あたり1,000円から3,000円程度。実際に出動した場合は、これとは別に、1回あたり3,000円から5,000円以上が支給されるのが一般的です。事業所によっては、待機手当を1日6,000円としているところもあります。
以前の記事で給料の内訳を扱いましたが、訪問看護の収入は、このオンコール手当と緊急訪問の手当が支えています。夜勤手当がない分を、ここで補う構造になっているわけです。
ここまで数字を見てきて、思ったより鳴らないと感じた方も多いかもしれません。ただ、正直にお伝えしておきたいことがあります。
オンコールの大変さは、実際に鳴る回数だけでは測れません。鳴るかもしれないという緊張が、当番の日はずっと続くからです。眠っていても、どこか浅い眠りになります。お酒は飲めませんし、遠出もできません。
以前の記事で病院との比較をしたときにも触れましたが、夜勤の身体的なつらさとは、種類の違うしんどさがあります。実際に呼ばれなくても、心が完全には休まらない。そこが、オンコールの本質的な負担だと思います。
だからこそ、回数の少なさだけで判断せず、自分がその緊張を引き受けられるかどうかを考えてみてほしいのです。
オンコールの負担は、事業所によって大きく変わります。転職を考えるなら、次の点を確認してみてください。
当番は月に何回まわってくるか。1人体制か、2人体制か。実際に電話が鳴る頻度と、出動につながる頻度はどれくらいか。待機の手当と出動の手当は、それぞれいくらか。夜間に対応した翌日の勤務に、配慮があるか。判断に迷ったときに相談できる相手がいるか。そして、入職してからどれくらいでオンコールを担当することになるか。
最後の点は、意外と見落とされがちです。入社して3、4か月目からオンコールを始めるという事業所もあります。業務にある程度慣れてから始められるかどうかは、安心感が大きく違います。
利用者さんの情報を、夜間でもタブレットなどで確認できる体制があるかどうかも重要です。過去の記録を見ながら判断できれば、電話対応の不安はかなり減ります。以前の記事で述べたICTの活用が、ここでも効いてきます。
私が最も大切だと思うのは、一人で抱え込まなくてよい体制があるかどうかです。
夜中に電話を受けて、判断に迷ったとき。すぐに管理者や先輩に相談できるかどうかで、心の負担はまったく変わります。「困ったら電話していいよ」と言ってもらえているだけで、当番の夜の過ごし方が違ってきます。
オンコールは、訪問看護が24時間、利用者さんの暮らしを支えるための仕組みです。夜中に不安になったとき、電話をかけられる相手がいる。それが、住み慣れた家で療養を続けられる支えになっています。私自身、最初は不安でいっぱいでしたが、いまは、この仕組みがあるからこそ在宅療養が成り立っているのだと感じています。
数字で見れば、実際の出動は月0回から2回が大半で、多くは電話だけで解決します。想像しているほど頻繁に呼ばれるわけではありません。ただし、鳴るかもしれないという緊張は確かにあり、そこは正直な負担です。大切なのは、事業所ごとに実態が大きく違うことを知り、当番の頻度、手当、翌日の配慮、相談できる体制を、面接の場できちんと確認することです。不安なまま飛び込むのではなく、確かめたうえで選ぶ。そうすれば、オンコールは乗り越えられる仕組みになります。