24時間対応体制加算などを届け出ている訪問看護ステーションの86.6%が、「限られた職員(管理者を含む)だけでオンコール当番をしている」と答えた。ほかの訪問看護事業所と負担を分け合っているのは2.5%にとどまる。人口規模の小さな自治体の事業所に限ると、分け合っているのは1.6%、人口2万人未満では1.3%だった。
日本訪問看護財団が2026年3月にまとめた報告書「訪問看護サービス提供体制強化に向けた調査研究事業」(厚生労働省の老人保健健康増進等事業)の結果である。報告書は、人口規模の小さな自治体で夜間・休日の対応や看取りをどう続けるかを主な関心にしている。ただ、オンコールの数字を地域別に並べると、別のことが見えてくる。限られた職員で回している割合は、都市でも地方でもほとんど変わらない。違うのは、負担を分け合う相手がいるかどうかだ。
| 区分 | 抽出方法 | 送付数 | 回答数(回収率) |
|---|---|---|---|
| 小さな自治体群 | 全数 | 1,993 | 816(41.0%) |
| 政令市群(中核市・特別区を含む) | 無作為 | 2,504 | 700(28.0%) |
| その他の市町村 | 無作為 | 2,503 | 743(29.7%) |
| 合計 | 7,000 | 2,259(32.3%) |
調査票は2025年9月10日に発送された。報告書は、小さな自治体群を人口2万人未満、2万〜5万人未満、5万人以上の3つに分けて集計している。このほか、人口10万人未満のへき地・過疎地域の884市町村への調査(468市町村が回答、52.9%)と、事業所8か所・自治体2か所へのヒアリングも行っている。
小さな自治体群は全数に送り、ほかの2群は無作為に選んだ一部に送っている。回収率も群によって違う。以下の「全体」の数字は、3群の回答を足し合わせたものとして読んでほしい。
24時間対応体制加算などを届け出ている事業所に、今の体制を聞いた結果(複数回答)が次の表である。
| 選択肢 | 全体 | 小さな自治体群 | うち2万人未満 | 政令市群 | その他 |
|---|---|---|---|---|---|
| (回答数) | 2,004 | 707 | 154 | 631 | 666 |
| 限られた職員(管理者含む)のみでオンコール当番をしている | 86.6% | 87.4% | 88.3% | 85.7% | 86.6% |
| 新たな人材の確保ができなければ体制維持は難しい | 22.1% | 24.6% | 22.1% | 19.5% | 21.9% |
| 電話応対を看護職員以外でも担っている | 9.7% | 10.3% | 9.7% | 10.5% | 8.3% |
| 新たな利用者の確保ができなければ体制維持は難しい | 4.8% | 5.7% | 3.2% | 4.0% | 4.7% |
| 他の訪問看護事業所と負担を分散している | 2.5% | 1.6% | 1.3% | 3.6% | 2.6% |
| 医療機関と負担を分散している | 1.4% | 2.1% | 5.2% | 1.3% | 0.9% |
| 特に当てはまるものはない | 8.9% | 7.6% | 5.8% | 10.1% | 9.2% |
「限られた職員だけで回している」は、政令市群の85.7%から人口2万人未満の88.3%まで、差は3ポイントもない。オンコールを一部の職員に頼っていることは、地方の小さな事業所だけの問題ではない。ほとんどのステーションに共通している。
地域による差が出るのは、負担を分ける相手のほうだ。ほかの訪問看護事業所と分けている割合は、政令市群で3.6%、人口2万人未満で1.3%だった。どちらにしても低い数字だが、近くにほかのステーションが少ない地域ほど、分け合う相手を見つけにくいことがうかがえる。人口2万人未満では、代わりに医療機関と分けている割合が5.2%と、ほかの区分より高い。
24時間対応体制加算などを届け出ていない事業所にも、その理由を聞いている(複数回答)。
| 理由 | 全体(152) | 小さな自治体群(68) | うち2万人未満(27) | 政令市群(37) |
|---|---|---|---|---|
| 対応の外部委託ができず、事業所内で対応が可能な人材が不足している | 63.8% | 66.2% | 77.8% | 62.2% |
| 24時間対応が必要な利用者が少ない又はいない | 24.3% | 26.5% | 25.9% | 13.5% |
| 他の訪問看護事業所が24時間対応を担っている | 17.1% | 16.2% | 18.5% | 27.0% |
| 併設する医療機関が24時間対応を担っている | 15.1% | 16.2% | 22.2% | 16.2% |
※括弧内は回答数。回答数が少ないため、区分別の数字は参考値。
届け出ていない理由の6割強は、人が足りないことだった。政令市群では「他の訪問看護事業所が担っている」が27.0%あり、地域の中で役割を分けている様子がうかがえる。
届け出ている事業所の加算の内訳も見ておく。2025年8月の実績で、医療保険の24時間対応体制加算のうち、看護業務の負担軽減の取り組みを行っている「イ」を算定しているのは全体の61.9%、小さな自治体群では56.8%だった。負担軽減の取り組みがない「ロ」は、全体で34.0%、小さな自治体群で37.8%である。小さな自治体ほど、負担軽減の取り組みができていない事業所の割合がやや高い。
オンコールの負担を分ける方法は、制度の中にも用意されている。令和6年度改定のときの24時間対応体制加算の届出書(別紙様式3、地方厚生局)には、次の2つを記入する欄がある。
2つのステーションが連携して24時間対応体制をつくる:届出書には、連携する2つのステーションの所在地と名称を書く欄がある。該当する区分として、「基準告示第3に規定する地域」「医療資源の少ない地域」「地域の相互支援ネットワークへの参画」の3つが挙げられている。連絡や相談を担当する職員の数は、2つのステーションの合計で記入する。
看護師以外の職員が電話を受ける:看護師等以外の職員が利用者や家族からの電話に対応する場合、次の3点が求められている。
アンケートでは、電話応対を看護職員以外でも担っている事業所は9.7%だった。他事業所との分担は2.5%で、どちらの選択肢もまだ使われている割合は低い。なお、令和8年度の改定でこの届出の内容が変わっていないかは、地方厚生局の最新の様式で確認してほしい。
オンコールは、在宅での看取りと切り離せない。過去1年間にターミナルケア加算(療養費)を算定した利用者がいた事業所は、全体で90.1%、小さな自治体群で88.5%と、ほとんど差がない。
差が出るのは課題のほうである。在宅看取りを支えるうえでの課題として「訪問診療を行う医師の確保」を挙げたのは、政令市群で62.7%、小さな自治体群で81.5%だった。「利用者宅への訪問に要する時間」は全体で29.4%、小さな自治体群で31.4%である。在宅で看取りができた理由として「複数の機関による連携体制が構築されていた」を挙げたのは、政令市群の52.7%に対し、小さな自治体群は38.1%だった。
医師がICTを使って行う死亡診断を看護師が補助する仕組みは、医師が足りない地域ほど役に立つはずだ。しかし遠隔死亡診断補助加算を届け出ていない理由として、「研修受講の要件を満たす看護師がいない」が全体で46.7%、小さな自治体群で48.7%を占めた。算定の実績を聞いた設問に答えた小さな自治体群の37事業所のうち、実績があるのは1事業所(2.7%)だった。
報告書は、次の3つを提言としてまとめている。
オンコールを限られた職員に頼る構造は、都市でも地方でも同じだった。違いは、負担を分ける相手が近くにいるかどうかと、看取りを一緒に支える医師がいるかどうかにある。
筆者は、どの地域のステーションでも、次の3つを確認しておく価値があると考える。
※数字は日本訪問看護財団の報告書(2026年3月)による。小さな自治体群は全数調査、ほかの2群は無作為抽出で、回収率も異なる。届け出ていない事業所の区分別の数字は回答数が少ないため参考値。24時間対応体制加算の届出書の内容は令和6年度改定時の様式によるもので、令和8年度改定での変更の有無は確認できていない。