2026年7月、訪問看護に関わる、一つの見落とせないニュースがありました。
中小企業庁が、経営が厳しい事業者を支える資金繰り支援制度「セーフティネット保証5号」の対象業種に、訪問看護ステーションを含む「看護業」を指定したのです。全国訪問看護事業協会も、この指定を会員に向けて案内しています。
増え続けているはずの訪問看護が、国の資金繰り支援の対象になった。このニュースを、どう受け止めればよいのでしょうか。今回は、何が起きたのか、どのような事業者が対象になるのか、そしてこの制度をどう活かせるのかを、整理してお届けします。
まず、事実関係を確認します。
中小企業庁は、令和8年(2026年)7月1日から同年9月30日までの期間について、セーフティネット保証5号の対象業種を指定しました。その一覧の中に、「8342 看護業」が含まれています。この「看護業」という業種分類には、訪問看護ステーションが含まれます。だからこそ、全国訪問看護事業協会が、この指定を訪問看護の事業者に向けて案内したのです。
そして、今回の指定には、明確な背景があります。中小企業庁は、中東情勢の影響に係る臨時の業況調査を踏まえて、この業種の指定を行いました。あわせて、制度を利用するための事前相談の受付も開始しています。つまり、この指定は、通常の定例的なものというよりも、足元の情勢変化を受けた、臨時の対応という性格を持っています。
では、そもそもセーフティネット保証5号とは、どのような制度なのでしょうか。
これは、全国的に業況が悪化している業種に属する中小企業者を支援するための、経営安定関連の信用保証制度です。ポイントは、「信用保証」という仕組みにあります。
事業者が金融機関からお金を借りるとき、信用保証協会が、その借入を保証します。万が一、事業者が返済できなくなった場合には、信用保証協会が金融機関に対して立て替えて返済する。この保証があることで、経営が厳しく、単独では融資を受けにくい事業者でも、金融機関からお金を借りやすくなるのです。
セーフティネット保証5号の大きな特徴は、この保証が、通常の一般的な保証とは「別枠」で利用できる、という点です。保証の限度額は、一般保証とは別に、普通保証で2億円、無担保保証で8千万円、合わせて最大2億8千万円とされています。すでに一般の保証枠を使っている事業者でも、この別枠を新たに利用できる、ということです。
では、看護業に属する事業者であれば、誰でもこの制度を使えるのでしょうか。そうではありません。いくつかの要件があります。
主な要件は、次のいずれかを満たすことです。一つは、指定業種(看護業)に属する事業を行っており、最近3か月間の売上高等が、前年の同じ時期と比べて5%以上減少していること。もう一つは、原油などの仕入価格が20%以上上昇しているにもかかわらず、それを自らのサービスの価格に転嫁できていないこと。
これらの要件を満たす事業者は、事業所の所在地を管轄する市区町村長の認定(5号認定)を受けたうえで、金融機関または信用保証協会に対して、保証付きの融資を申し込むことになります。
一点、注意しておきたいことがあります。この認定を受けたからといって、融資が確定するわけではない、ということです。認定は、あくまで、この保証制度を利用するための入り口です。実際に融資を受けられるかどうかは、金融機関の審査によります。この点は、あらかじめ理解しておく必要があります。
ここで、一つの疑問が浮かぶかもしれません。訪問看護は、事業所の数が増え続けているはずです。それなのに、なぜ「業況が悪化している業種」として、資金繰り支援の対象になるのでしょうか。
大切なのは、今回の指定が、中東情勢の影響を踏まえた臨時のものである、という点です。これは、訪問看護という産業そのものが、恒久的に衰退していると判定されたわけではありません。足元の情勢変化によって、一時的に業況が悪化した業種を、期間を区切って支援するもの、と捉えるのが正確です。
ただし、その背景に、訪問看護の経営環境の厳しさがあることも、見過ごせません。ガソリン代をはじめとする移動コストの上昇、人件費の上昇。こうした要因は、訪問看護の経営を、じわじわと圧迫しています。事業所の数は増え続けている一方で、廃止となる事業所も過去最高の水準にあることは、別の稿でもお伝えしたとおりです。「増えているけれど、一つひとつの経営は決して楽ではない」。そんな訪問看護の実態の上に、今回の資金繰り支援は重なっています。増加という総数の陰で、個々の事業所が直面している経営の現実が、この指定からも、透けて見えるのです。
では、この制度を、どう活かせばよいのでしょうか。
資金繰りに不安を抱える訪問看護の事業者にとって、これは、一つの選択肢になります。手順を整理すると、まず、自らの事業所が、要件——たとえば、直近3か月の売上高等が前年同期比で5%以上減少している、といった条件を満たしているかを確認します。満たしている場合は、事業所の所在地の市区町村に、5号認定を申請します。認定書を得たうえで、金融機関または信用保証協会に、保証付き融資を申し込む、という流れになります。
すでに事前相談の受付も始まっていますので、まずは相談してみることから始めるのがよいでしょう。
そして、期間についても、押さえておく必要があります。今回の指定期間は、令和8年7月1日から9月30日までです。認定の申請は、原則としてこの期間内に行う必要があります。ただし、期間内に市区町村へ認定申請を行っていれば、その後の金融機関や信用保証協会への保証の申し込みが指定期間を過ぎたとしても、保証の対象になるとされています。制度を利用する意向があるなら、まずは早めに、市区町村への認定申請を検討しておくことが大切です。
訪問看護が、国の資金繰り支援の対象になった。この事実は、裏を返せば、訪問看護の経営が、国が支援を要すると判断するほどの局面に置かれている、ということでもあります。
もちろん、今回の指定は、中東情勢という外的な要因を踏まえた、臨時のものです。それでも、この制度が訪問看護の事業者に届けられたという事実は、この事業が、需要の高まりとは裏腹に、経営の面では決して安泰ではないことを、あらためて示しています。
制度は、それを使う人がいて、初めて意味を持ちます。資金繰りに不安を抱えている事業者は、この機会に、制度の活用を検討してみてください。そして、それと同時に、自らの事業所の経営を、一度、冷静に見つめ直す機会にもしていただければと思います。目の前の資金繰りをしのぐことと、その先も事業を続けていける体制をつくること。その両方が、これからの訪問看護の経営には求められています。