自宅でリハビリを受けたい。そう思ったとき、実は、二つの異なるサービスがあることを、ご存じでしょうか。「訪問看護からのリハビリ」と、「訪問リハビリテーション」です。
どちらも、理学療法士などが自宅を訪れてリハビリを行う点は、同じです。けれど、制度上の位置づけは、まったく異なります。利用者やご家族、そしてケアマネジャーも、しばしば混同する、この二つの違い。今回は、両者が何をどう違えているのか、そして、どう使い分けるべきかを、整理してお届けします。
自宅でリハビリを提供する専門職は、主に二つの事業所に所属しています。訪問リハビリテーション事業所と、訪問看護ステーションです。
訪問リハビリテーション事業所は、病院や診療所、介護老人保健施設、介護医療院が、指定を受けて提供します。「訪問リハビリ」というサービスそのものを提供する事業所です。
一方、訪問看護ステーションは、「訪問看護」というサービスを提供する事業所です。そのため、厳密には、訪問看護サービスの一部として、リハビリを提供することになります。
名前はよく似ていますが、制度上の位置づけは、根本のところで違うのです。
前提として、リハビリを担う三つの専門職についても、簡単に整理しておきます。どちらのサービスでも、この三職種がリハビリを担当します。
理学療法士(PT)は、「立つ」「歩く」「寝返りを打つ」といった、基本的な身体機能の回復や維持を目指し、運動訓練を行います。作業療法士(OT)は、「着替える」「食事をする」「指先を動かす」といった、日常生活に関わる作業の回復や維持を支えます。言語聴覚士(ST)は、うまく話せない、声が出にくい、飲み込みにくいといった障害に対して、訓練や指導を行う専門職です。
担い手となる職種は、共通しています。違うのは、そのリハビリを提供する、枠組みのほうです。
最も大きな違いの一つが、医師の指示の出し方です。どちらも医師の指示が必要ですが、その医師が異なります。
訪問看護からのリハビリの場合、指示を出すのは、かかりつけ医、つまり主治医です。主治医が、訪問看護指示書を交付します。
訪問リハビリテーションの場合は、本体施設である医療機関や老健、介護医療院に所属する医師が、指示を出します。その事業所の医師による診察が、前提になります。
言い換えれば、訪問リハビリテーションは、事業所に医師がいて、その医師とリハビリ職が密に連携する形です。訪問看護からのリハビリは、主治医の指示のもと、ステーションの看護師と連携する形です。
もう一つの大きな違いが、他のケアとの組み合わせです。
訪問看護からのリハビリは、看護師による医療的な処置や管理と、合わせて提供できます。だからこそ、医療への依存度が高い人、重症の人、そしてターミナル期の人にも、対応しやすいという強みがあります。実際、事業所で対応できない利用者の割合は、訪問リハビリテーションのほうが高い傾向にあります。医療的なケアが必要な人には、訪問看護からのリハビリのほうが向いている場面が、多いのです。
一方、訪問リハビリテーションは、医師が事業所にいるぶん、退院した直後の、手厚いリハビリに強みがあります。退院や退所から2週間未満にリハビリが始まるケースが約7割を占め、退院後3ヶ月以内であれば、頻回に実施することができます。医療機関から在宅への移行を、リハビリで手厚く支える仕組みになっています。
では、どう使い分ければよいのでしょうか。目安を整理します。
医療的なケアや管理と、リハビリの両方が必要な場合、あるいは重症で医療依存度が高い場合には、訪問看護からのリハビリが向いています。看護師と一体で支えられるからです。
退院した直後で、集中的なリハビリが必要な場合や、医師と密に連携しながら進めたい場合には、訪問リハビリテーションが向いています。
ただし、どちらを使うかは、利用者が自分で選ぶというより、主治医やケアマネジャーが、その人の状態を見て判断します。どちらがよいか迷ったときは、担当のケアマネジャーに相談するのが確実です。
ここで、経営者や現場が知っておきたい、制度の動きに触れておきます。
近年、訪問看護ステーションで働くリハビリ職は、増えてきました。日本理学療法士協会によれば、2023年3月末の時点で、およそ4,700人の理学療法士が、訪問看護ステーションで勤務しています。
その一方で、国の審議会では、毎回のように、ある議論が繰り返されてきました。訪問看護からのリハビリは、本来の役割を果たしていないのではないか、という議論です。訪問看護は、あくまで看護の一環として、リハビリを提供するのが本来の姿とされます。ところが、看護をほとんど行わず、リハビリだけを提供する、いわゆるリハビリ特化型のステーションが増えたことが、問題視されました。
そこで、2024年度の介護報酬改定で、減算が導入されました。前年度のリハビリ職の訪問回数が、看護職員の訪問回数を上回っている場合、または緊急時訪問看護加算などの一定の加算をいずれも算定していない場合、訪問看護ステーションは、リハビリ職が訪問した際に、1回につき減算されることになりました。訪問看護のリハビリは、あくまで「看護の一環」であるべきだ、という国の考えが、制度にはっきりと反映された形です。
事業所にとっては、リハビリ職の訪問と、看護職員の訪問のバランス、そして加算の算定体制が、経営上、大きな意味を持つようになりました。
「訪問看護からのリハビリ」と「訪問リハビリテーション」。名前は似ていても、指示を出す医師も、組み合わせられるケアも、得意とする場面も、それぞれに異なります。大切なのは、利用者一人ひとりの状態に、どちらが合っているかを見極めることです。医療的なケアと一緒に支えたいのか、それとも退院直後に集中的なリハビリをしたいのか。その判断を、主治医やケアマネジャーとともに行っていく。そして事業所の側から見れば、訪問看護のリハビリは「看護の一環」だという原点に立ち返ることが、これからの制度のなかで、いっそう求められています。利用者にとって最も良いリハビリを、正しい枠組みで届ける。その視点が、利用者にとっても、事業所にとっても、何より大切なのだと思います。