精神科訪問看護の始め方 2026|参入要件・機能強化型Type 4への道筋・参入リスクを実運営者目線で整理

Summary
精神科訪問看護への参入を2026年の規制強化局面を踏まえて解説。市場規模(公費800億円超)と適正化の流れ、参入に必要な従事者・指示書の要件、既存ステーションへの上乗せか特化型かの選択、機能強化型Type 4、参入リスクまで。
精神科訪問看護は、いま二つの顔を持っている。
一つは、拡大する市場という顔だ。精神通院医療における訪問看護の公費負担額は、2024年に800億円を超えた。訪問看護全体の中でも、無視できない規模に育っている。
もう一つは、規制が強まる市場という顔である。急拡大の裏側で不正請求の問題が表面化し、制度は適正化へと舵を切った。2026年6月の改定では、20分ルールの明文化、精神科に特化した機能強化型区分の新設、特化型事業所への評価の見直しが、まとめて行われている。
伸びている市場であり、同時に、締まっていく市場でもある。この両面を踏まえたうえで、いま参入すべきなのか。参入するなら、どの順路をとるべきか。実際に運営する立場から、整理したい。
2026年6月改定が閉じたもの、開いたもの
まず、制度が何を閉じ、何を開いたのかを、正確に押さえる必要がある。
閉じられたのは、短時間の訪問を数多く積み上げて収益を作る、という入口である。改定では、20分を下回る訪問の扱いが整理され、特に同一建物の居住者に対する訪問については、20分未満は算定できないものとされた。あわせて、訪問の開始時刻と終了時刻を記録することが義務化されている。訪問時間は、事業所の自己申告ではなく、記録によって裏づけられるものになった。
つまり、「短く、多く」という設計で採算を合わせるモデルは、制度的に成立しなくなった。これから参入するのであれば、実質的な訪問時間を前提とした収支計画以外に、選択肢はない。
一方で、開かれたものもある。機能強化型訪問看護管理療養費4——通称Type 4の新設だ。これは、精神科訪問看護において支援の必要度が高い利用者を受け入れ、24時間の対応体制と地域の関係機関との連携体制を整えているステーションを評価する区分である。月の初日の訪問につき、9,030円(903点)が算定できる。
この二つは、同じ方向を向いている。安易な参入を閉じ、体制を備えた事業所を評価する。制度が示しているのは、そういう選別である。まともに取り組む事業者にとって、いい加減な事業者が退場していく局面は、悪い話ではない。
参入の第一関門 — 従事者要件
では、参入には何が必要か。最大のボトルネックは、人である。
精神科訪問看護基本療養費を算定するには、精神疾患を有する者への看護について相当の経験を持つ保健師、看護師、准看護師、または作業療法士が、訪問看護を行う必要がある。この「相当の経験」は、次の四つのいずれかに該当することで満たされる。
一つ目は、精神科を標榜する保険医療機関において、精神病棟または精神科外来に勤務した経験を1年以上有すること。二つ目は、精神疾患を有する者に対する訪問看護の経験を1年以上有すること。三つ目は、精神保健福祉センターまたは保健所等における精神保健に関する業務の経験を1年以上有すること。そして四つ目が、国、都道府県または医療関係団体等が主催する精神科訪問看護に関する研修を修了していることである。
ここで注目すべきは、四つ目の選択肢だ。精神科の実務経験がないスタッフでも、指定された研修を修了すれば、要件を満たせる。中途採用で精神科経験者を奪い合う必要は、必ずしもない。
研修の負担も、現実的な範囲にある。たとえば日本訪問看護財団が実施しているオンデマンド研修は、受講時間が約21時間(テストを含む)、受講可能期間は90日間とされている。この間は繰り返し受講できる。都道府県の訪問看護ステーション協会などでも、算定要件を満たす研修が開催されている。
つまり、参入の現実的な道筋は、精神科経験者を採用することではなく、既存のスタッフに研修を受けさせて従事者を育てることにある。ここを外して、採用市場だけを見ていると、参入の入口で止まる。


