HokanPress

訪問看護専門メディア

ログイン無料登録
TOP看護訪問看護医療制度医療一般特集インタビュー編集部
キャリア診断給与診断求人
ニュースレター

訪問看護の“変化”を、毎朝メールで。

診療報酬・経営・現場の新着を編集部が厳選。開業・経営判断に効く情報を、無料でメールにお届けします。いつでも解除OK。

登録すると確認メールが届きます。いつでも配信解除できます。

HokanPress

訪問看護師・経営者のための専門情報メディア。経営・現場・制度の実践情報を発信します。

カテゴリ

  • 看護
  • 訪問看護
  • 医療制度
  • 医療一般
  • 編集部
  • キャリア診断
  • 給与診断
  • タグ一覧

サイト情報

  • サイトについて
  • お問い合わせ
  • 広告掲載

法的情報

  • 利用規約
  • プライバシーポリシー

© 2026 HokanPress. All rights reserved.

HokanPress

精神科訪問看護の始め方 2026|参入要件・機能強化型Type 4への道筋・参入リスクを実運営者目線で整理

HokanPress編集部 · 2026年7月23日
精神科訪問看護への参入を2026年の規制強化局面を踏まえて解説。市場規模(公費800億円超)と適正化の流れ、参入に必要な従事者・指示書の要件、既存ステーションへの上乗せか特化型かの選択、機能強化型Type 4、参入リスクまで。

精神科訪問看護は、いま二つの顔を持っている。

一つは、拡大する市場という顔だ。精神通院医療における訪問看護の公費負担額は、2024年に800億円を超えた。訪問看護全体の中でも、無視できない規模に育っている。

もう一つは、規制が強まる市場という顔である。急拡大の裏側で不正請求の問題が表面化し、制度は適正化へと舵を切った。2026年6月の改定では、20分ルールの明文化、精神科に特化した機能強化型区分の新設、特化型事業所への評価の見直しが、まとめて行われている。

伸びている市場であり、同時に、締まっていく市場でもある。この両面を踏まえたうえで、いま参入すべきなのか。参入するなら、どの順路をとるべきか。実際に運営する立場から、整理したい。

2026年6月改定が閉じたもの、開いたもの

まず、制度が何を閉じ、何を開いたのかを、正確に押さえる必要がある。

閉じられたのは、短時間の訪問を数多く積み上げて収益を作る、という入口である。改定では、20分を下回る訪問の扱いが整理され、特に同一建物の居住者に対する訪問については、20分未満は算定できないものとされた。あわせて、訪問の開始時刻と終了時刻を記録することが義務化されている。訪問時間は、事業所の自己申告ではなく、記録によって裏づけられるものになった。

つまり、「短く、多く」という設計で採算を合わせるモデルは、制度的に成立しなくなった。これから参入するのであれば、実質的な訪問時間を前提とした収支計画以外に、選択肢はない。

一方で、開かれたものもある。機能強化型訪問看護管理療養費4——通称Type 4の新設だ。これは、精神科訪問看護において支援の必要度が高い利用者を受け入れ、24時間の対応体制と地域の関係機関との連携体制を整えているステーションを評価する区分である。月の初日の訪問につき、9,030円(903点)が算定できる。

この二つは、同じ方向を向いている。安易な参入を閉じ、体制を備えた事業所を評価する。制度が示しているのは、そういう選別である。まともに取り組む事業者にとって、いい加減な事業者が退場していく局面は、悪い話ではない。

参入の第一関門 — 従事者要件

では、参入には何が必要か。最大のボトルネックは、人である。

精神科訪問看護基本療養費を算定するには、精神疾患を有する者への看護について相当の経験を持つ保健師、看護師、准看護師、または作業療法士が、訪問看護を行う必要がある。この「相当の経験」は、次の四つのいずれかに該当することで満たされる。

一つ目は、精神科を標榜する保険医療機関において、精神病棟または精神科外来に勤務した経験を1年以上有すること。二つ目は、精神疾患を有する者に対する訪問看護の経験を1年以上有すること。三つ目は、精神保健福祉センターまたは保健所等における精神保健に関する業務の経験を1年以上有すること。そして四つ目が、国、都道府県または医療関係団体等が主催する精神科訪問看護に関する研修を修了していることである。

ここで注目すべきは、四つ目の選択肢だ。精神科の実務経験がないスタッフでも、指定された研修を修了すれば、要件を満たせる。中途採用で精神科経験者を奪い合う必要は、必ずしもない。

研修の負担も、現実的な範囲にある。たとえば日本訪問看護財団が実施しているオンデマンド研修は、受講時間が約21時間(テストを含む)、受講可能期間は90日間とされている。この間は繰り返し受講できる。都道府県の訪問看護ステーション協会などでも、算定要件を満たす研修が開催されている。

つまり、参入の現実的な道筋は、精神科経験者を採用することではなく、既存のスタッフに研修を受けさせて従事者を育てることにある。ここを外して、採用市場だけを見ていると、参入の入口で止まる。

なお、算定にあたっては、地方厚生(支)局へ「精神科訪問看護基本療養費に係る届出書」を提出する必要がある。届出書には、精神科訪問看護を行う職員の氏名、職種、経験の内容を記載する。月末までに提出すれば翌月から算定でき、月の最初の開庁日に提出して受理されれば、その月の1日から算定が可能となる。届出のタイミングは、収益の立ち上がりに直結する。

第二関門 — 指示書のルートがなければ、始まらない

人材の次に問われるのが、指示書のルートである。

精神科訪問看護の算定には、精神科を担当する医師が交付する精神科訪問看護指示書が必要だ。これがなければ、どれだけ体制を整えても、算定には至らない。

したがって、参入の準備は、地域の精神科クリニックや精神科病院との関係構築から始まる。利用者を紹介される経路を持たないまま、従事者だけを育てても、稼働しない。圏域にどのような精神科医療機関があり、どこと連携できるのか。参入を検討する段階で、ここを先に見ておくべきである。

第三関門 — 24時間対応の設計

三つ目は、24時間の対応体制だ。

精神科の利用者は状態の変動が大きく、夜間の電話対応や緊急の訪問が生じる。その負荷は、身体科とは質が異なる。服薬の中断、症状の悪化、家族との関係の緊張。電話口での対応そのものが、看護の一部になる場面も少なくない。

オンコールの担当をどう回すか、手当をどう設計するか。これを参入前に固めておかないと、体制を整える前に、スタッフが疲弊する。そして後述するとおり、24時間対応体制加算の届出は、Type 4の施設基準にも含まれている。

上乗せ型か、特化型か

参入の形態には、二つある。

一つは、既存の訪問看護ステーションに精神科への対応を追加する「上乗せ型」だ。既存の経営基盤の上に載せられるため、従事者を数名育てれば開始できる。まず小さく始めたい事業者に向く。

もう一つは、精神科を中心としたステーションとして展開する「特化型」である。Type 4の対象になりうる一方で、特化型に対する評価の見直しの影響を、正面から受ける。制度の理解と体制が固まっている事業者向けの選択だ。

2026年の規制環境を踏まえるなら、順路ははっきりしている。まず上乗せ型で始め、実績と体制を作ってから、特化を検討する。これが、最もリスクの低い進み方である。

Type 4への道筋 — 施設基準を直視する

到達点の一つとなるType 4について、施設基準を具体的に見ておく。

まず、常勤の看護師等が4名以上いること。24時間対応体制加算の届出を行っていること。別表第七に規定する疾病等の利用者、または別表第八に掲げる者が、月に3人以上いること。加えて、重点的な支援を要する精神疾患の利用者——1年以上の入院歴を有する者や、入退院を繰り返す者(直近の入院が措置入院、緊急措置入院または医療保護入院であり、その入院日から過去3か月以内にも同様の入院歴がある者に限る)などが、月に7人以上いること。さらに、退院時共同指導の実績も求められる。

ここで、既存の機能強化型との決定的な違いを押さえておきたい。従来の機能強化型訪問看護管理療養費1および2は、ターミナルケアの実績が要件に含まれている。1は前年度のターミナルケアが20件以上、2は15件以上、といった具合だ。看取りの実績がなければ、機能強化型にはたどり着けなかった。

Type 4には、この看取り実績の要件がない。代わりに問われるのは、重い精神疾患を抱えた利用者を地域で支え続けている実績であり、そのための連携体制である。看取りではなく、地域生活の継続支援で評価される道が、初めて開かれたことになる。精神科に取り組んできた事業所にとって、これは実績が正当に評価される仕組みができた、ということだ。

現実的なロードマップは、こうなる。上乗せ型で精神科への対応を開始し、従事者を育て、連携を構築する。精神科の利用者の比率と実績を積む。記録、訪問時間の管理、GAF評定の運用を安定させる。そのうえで、施設基準を満たした時点で届け出る。段階を飛ばして届出だけを狙っても、実績要件は埋まらない。

参入のリスクを、正直に並べる

最後に、リスクを率直に挙げておく。

第一に、規制がさらに強まる可能性だ。厚生労働省によるレセプトの分析が進めば、その結果次第で、追加の適正化措置がありうる。短期での回収を狙う参入は、制度の変更に耐えられない。

第二に、人材のリスクである。従事者の確保と定着に失敗すれば、指示書のルートがあっても稼働できない。研修で育てた人材が離職すれば、届出の内容そのものを維持できなくなる。

第三に、精神科に特有の困難だ。医療の拒否、服薬の中断、家族関係の複雑さ。身体科とは異なる支援の難しさがあり、教育体制のないまま参入すれば、スタッフの疲弊を招く。人を育てる仕組みは、参入の前提条件である。

第四に、評判のリスクがある。業界全体が、不正請求の問題を経て、厳しい目で見られている。記録、訪問時間、GAF評定といった適正運営の証明を怠れば、実地指導で致命傷になりうる。

参入を判断する前に、確認すべき点を整理しておく。圏域に精神科医療機関との連携ルートを作れるか。従事者要件を満たすスタッフを確保・育成できるか。20分以上の実質的な訪問を前提とした収支計画になっているか。夜間・緊急対応の体制を設計したか。記録、GAF、時間管理の運用を、最初から整備できるか。この五つに一つでも答えが出ないなら、参入の時期ではない。

急がば回れが、正攻法である

精神科訪問看護は、市場は拡大し、ルールは厳格化するという局面にある。2026年の改定で、楽な参入モデルは閉じた。だが、適正な運営を前提にするならば、800億円を超える公費が投じられている領域で、長く事業を続けていくことは可能だ。

順路は明確である。連携の構築、従事者の育成、上乗せ型での開始、そして実績を積んだうえでのType 4の検討。この順番を飛ばして得をする局面は、いまの制度環境にはない。

制度が閉じたのは、入口の広さではなく、入口の甘さである。体制を作ってから入る事業者にとって、この市場は、まだ十分に開いている。

HokanPress — 訪問看護の今がわかるメディア