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医療制度

【新設】訪問看護物価対応料とは|2026年6月施行、月60円から令和9年に倍増120円へ

2026年5月21日·約11分で読めます
【新設】訪問看護物価対応料とは|2026年6月施行、月60円から令和9年に倍増120円へ

Summary

2026年6月施行の診療報酬改定で、訪問看護に「訪問看護物価対応料」が新設されます。月初日60円、2日目以降20円(包括型は20円)で、令和9年6月以降は倍増の予定。物価高騰下で運営する訪問看護ステーションを国が制度的に支援する仕組みです。

2026年6月施行の診療報酬改定で、訪問看護に新たな加算「訪問看護物価対応料」が新設されます。月初日60円、2日目以降20円という小さな金額ですが、令和9年6月以降は「初日120円、2日目以降40円」へと倍増する予定で、物価高騰対応として制度化された画期的な仕組みです。

これまで訪問看護ステーションは、ガソリン代、車両維持費、施設賃料、消耗品費といった運営コストの上昇を、診療報酬上で正面から評価される枠組みがありませんでした。今回の物価対応料の新設は、訪問看護経営における「コストプッシュ型の経営難」への国の応答とも言える制度設計です。

HokanPress編集部では、この新設加算の概要と、経営者・管理者が押さえておくべきポイントを整理しました。

訪問看護物価対応料の概要

まず制度の基本情報を確認します。

加算額(2026年6月から)

医療保険上の訪問看護療養費における新設加算として、以下の点数が設定される見通しです。

訪問看護物価対応料1(月の初日):

  • 60円(6点)

訪問看護物価対応料1(月の2日目以降):

  • 20円(2点)

訪問看護物価対応料2(包括型の場合):

  • 20円(2点)

令和9年6月以降の倍増スケジュール

物価高騰の継続的な影響を考慮し、本加算は令和9年(2027年)6月以降に倍増される予定です。

訪問看護物価対応料1(月の初日):

  • 60円 → 120円(12点)

訪問看護物価対応料1(月の2日目以降):

  • 20円 → 40円(4点)

訪問看護物価対応料2(包括型の場合):

  • 20円 → 40円(4点)

この倍増は、ベースアップ評価料の倍増スケジュールと同じタイミングで予定されており、訪問看護全体への国の支援強化の流れの一環となります。

算定対象

訪問看護物価対応料は、訪問看護療養費(医療保険)を算定する全ての利用者について算定可能となる見通しです。

特別な要件(機能強化型であること、ICT環境を整備していること等)は設定されておらず、医療保険による訪問看護を提供している全てのステーションが算定対象となります。

なぜ「物価対応料」が新設されたのか

訪問看護ステーションの経営において、物価高騰の影響は深刻な経営圧迫要因となっています。背景を整理します。

訪問看護の運営コスト構造

訪問看護ステーションの運営コストには、近年急上昇している項目が多く含まれます。

ガソリン代・車両維持費:

  • 訪問看護はステーションから利用者宅への移動が必須
  • 1台あたり年間ガソリン代20〜40万円が標準

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  • 車両のリース費用、メンテナンス費用も上昇傾向
  • 施設賃料:

    • 都市部では特に上昇圧力が大きい
    • 月10〜30万円のステーション賃料が一般的

    医療材料費・消耗品費:

    • ガーゼ、手袋、マスク、消毒薬等
    • 円安と原材料費上昇の影響を直接受ける

    ICT・通信費:

    • タブレット、スマートフォン、業務システム
    • 月数万円〜十数万円のICT投資

    これらは介護報酬・診療報酬が公定価格であるため、コスト上昇分を利用者に請求することができません。コストプッシュ型の経営圧迫が、訪問看護業界の構造的課題となっていました。

    訪問介護で先行した物価対応の流れ

    実は、物価対応の評価は介護報酬側で訪問介護等にも導入される流れがあり、今回の改定で訪問看護にも適用される形となります。

    国全体として、医療・介護分野の「公定価格事業」が物価高騰の影響を吸収できる仕組みを整える方向性が明確化されつつあります。

    中小ステーションへの影響緩和

    特に小規模ステーションでは、固定費の上昇圧力が経営を直撃しやすい構造があります。東京商工リサーチの発表によれば、2025年の介護事業者倒産は176件で2年連続の過去最多。中でも訪問介護は91件で3年連続最多更新となっており、物価高騰の影響が業界全体の経営難を加速させてきました。

    物価対応料の新設は、中小ステーションを含めた業界全体への経営支援の意味合いが強い制度設計です。

    加算額の試算

    実際の経営インパクトを試算します。

    ケースA: 利用者30名・医療保険分中心のステーション

    医療保険利用者数: 月30名 月初日訪問: 30回 × 60円 = 1,800円 2日目以降の訪問: 平均月8回/利用者 × 20円 × 30名 = 4,800円 月間加算額: 6,600円 年間加算額: 79,200円

    令和9年6月以降(倍増): 年間加算額: 158,400円

    ケースB: 利用者60名・医療保険分中心のステーション

    医療保険利用者数: 月60名 月初日訪問: 60回 × 60円 = 3,600円 2日目以降の訪問: 平均月8回/利用者 × 20円 × 60名 = 9,600円 月間加算額: 13,200円 年間加算額: 158,400円

    令和9年6月以降(倍増): 年間加算額: 316,800円

    ケースC: 利用者100名・医療依存度高めのステーション

    医療保険利用者数: 月100名 月初日訪問: 100回 × 60円 = 6,000円 2日目以降の訪問: 平均月10回/利用者 × 20円 × 100名 = 20,000円 月間加算額: 26,000円 年間加算額: 312,000円

    令和9年6月以降(倍増): 年間加算額: 624,000円

    試算からの示唆

    物価対応料単体では、決して大きな金額ではありません。しかし、複数の新設加算と組み合わせて考えれば、経営への影響は無視できない規模となります。

    2026年6月以降に算定可能な主な新規制度:

    • 訪問看護物価対応料(本記事)
    • 介護職員等処遇改善加算(加算率1.8%)
    • ベースアップ評価料(I)1,050円(引き上げ)
    • ベースアップ評価料(II)36区分化
    • D to P with N(訪問看護遠隔診療補助料 2,650円/日)
    • 訪問看護医療情報連携加算(1,000円/月)

    これらをすべて取りに行ける事業者と、取りこぼす事業者の差は、年間数百万円規模になります。

    算定にあたって押さえるべきポイント

    物価対応料の算定にあたって、押さえておくべき実務ポイントを整理します。

    ポイント1: 自動算定の可能性が高い

    物価対応料は、訪問看護療養費を算定する全ての利用者について自動的に算定される構造となる見通しです。特別な届出は不要で、6月以降のレセプト請求に自動的に反映される設計が想定されています。

    ただし、レセプトソフトの更新対応が必要となるため、利用しているソフトベンダーの対応状況を確認しておく必要があります。

    ポイント2: 包括型訪問看護療養費との関係

    2026年6月に新設される「包括型訪問看護療養費」を算定する場合は、訪問看護物価対応料2(20円)が適用される見通しです。

    これにより、訪問頻度が極端に多くなりがちな包括型でも、物価高騰の影響を適切に評価する仕組みが整います。

    ポイント3: 介護保険側にも類似制度

    医療保険による訪問看護への物価対応料と並行して、介護保険側でも訪問看護を含む各種介護サービスへの物価対応の制度が整備されています。

    介護保険分(訪問看護費)を算定する場合の物価対応については、別の制度設計となる見通しです。両者の正確な算定ロジックは、告示・通知が出てから確認する必要があります。

    ポイント4: 利用者・ご家族への説明

    訪問看護物価対応料の自己負担額は、医療保険の負担割合(1〜3割)に応じます。

    物価対応料1の月初日60円の場合:

    • 1割負担: 約10円/月
    • 3割負担: 約20円/月

    金額としては微少ですが、レセプトの記載が変わるため、ご家族から「これは何の費用ですか」と質問が来る可能性があります。

    事前にスタッフへの周知を行い、ご家族から質問があった際の説明準備をしておくことが望ましいです。

    経営者・管理者が押さえるべき視点

    物価対応料の新設を、経営者・管理者の視点でどう捉えるべきか整理します。

    視点1: 単独では小さいが、複合的に大きい

    物価対応料単体では、月数千円から数万円規模の加算です。経営インパクトは限定的に見えるかもしれません。

    しかし、2026年6月に新設される複数の加算を組み合わせて考えれば、年間収益への影響は数十万円から数百万円規模になります。「小さい加算だから」と軽視せず、確実に取りに行く姿勢が必要です。

    視点2: 物価高騰への国の応答

    物価対応料の新設は、訪問看護経営における「コストプッシュ型の経営難」に対する国レベルの応答です。

    これまで、ガソリン代の上昇、車両維持費の高騰、施設賃料の上昇など、運営コストの増加は事業者が自社で吸収するしかありませんでした。今回の制度新設により、初めて公定価格としての物価対応が認められた意義は大きいと言えます。

    視点3: レセプトソフトの対応確認

    物価対応料を確実に算定するためには、利用中のレセプトソフトが新加算に対応している必要があります。

    主要な訪問看護ソフトベンダーは、2026年6月施行に向けて対応を進めていますが、自社で利用しているソフトの対応状況を確認しておくことが望ましいです。

    確認項目:

    • 物価対応料の自動算定機能の実装時期
    • 算定ルールの正確性
    • レセプト出力への反映
    • アップデート費用の有無

    視点4: 倍増スケジュールも視野に

    令和9年6月以降の倍増は、すでに告示案として示されています。

    物価対応料1(月の初日): 60円 → 120円 物価対応料1(月の2日目以降): 20円 → 40円 物価対応料2(包括型): 20円 → 40円

    経営計画を立てる際には、令和9年以降の倍増も視野に入れた中長期的な収益予測を行うことが推奨されます。

    2026年改定全体の中での位置づけ

    最後に、訪問看護物価対応料の新設を、2026年6月施行の改定全体の中で位置づけてみます。

    改定の方向性

    楽らくサポートセンターの分析によれば、2026年改定の方向性は「適正化というムチ」と「賃上げ・DX・物価対応というアメ」の組み合わせとされています。

    「ムチ」の側:

    • 包括型訪問看護療養費の新設による頻回訪問の適正化
    • 集合住宅への過剰訪問の制限
    • 不適切請求への監視強化

    「アメ」の側:

    • ベースアップ評価料の引き上げと36区分化
    • 介護職員等処遇改善加算の新設(1.8%)
    • D to P with N(訪問看護遠隔診療補助料)の新設
    • 訪問看護医療情報連携加算の新設
    • 訪問看護物価対応料の新設(本記事)

    物価対応料は明確に「アメ」の側に分類される制度設計で、ICTを活用して多職種と連携し、スタッフの処遇を改善する事業者には、かつてないほど手厚い支援が用意されている流れの一環となっています。

    適切に運営する事業者への支援強化

    2026年改定は、適正運営している中小ステーションにとって、複数の追い風が同時に吹くタイミングとなります。

    物価対応料、処遇改善加算、ベースアップ評価料、D to P with N——これらをすべて確実に取りに行ける事業者と、対応が遅れる事業者では、半年後・1年後の経営状況に大きな差が生まれることになります。

    不適正運営事業者への淘汰圧力

    一方で、これまで頻回訪問・過剰請求で収益を上げてきた事業者にとっては、包括型訪問看護療養費の新設等により、収益機会が構造的に削減される改定となります。

    業界全体の質的向上と、適正運営事業者への評価強化が同時に進む構造です。

    今後の情報フォロー

    訪問看護物価対応料を含む2026年6月施行の改定については、今後さらに詳細な情報が発表される見通しです。

    確認すべき情報源

    厚生労働省:

    • 「令和8年度診療報酬改定について」のページ
    • 中央社会保険医療協議会の議事資料
    • 各種告示・通知

    業界団体:

    • 一般社団法人全国訪問看護事業協会
    • 公益財団法人日本訪問看護財団
    • 公益社団法人日本看護協会

    専門メディア:

    • 訪問看護専門のウェブメディア
    • 業界ソフトベンダーの解説資料
    • 各種セミナー・研修会

    スケジュール感

    5月上旬: 詳細な告示・通知の発出予定 5月中旬: 各レセプトソフトの対応アップデート 5月31日: ベースアップ評価料の届出最終期限 6月1日: 訪問看護物価対応料を含む各種改定施行 6月以降: 新点数での算定開始

    経営者として、5月の間にすべての準備を完了させ、6月施行を確実に迎える体制を整えることが重要となります。

    まとめ

    訪問看護物価対応料の新設は、訪問看護経営におけるコストプッシュ型の経営難に対する国の応答として、画期的な制度設計です。月60円〜という小さな金額ですが、令和9年以降の倍増も視野に入れれば、中長期的な経営支援としての意義は無視できません。

    他の新設加算(介護職員等処遇改善加算、ベースアップ評価料の引き上げ、D to P with N等)と組み合わせて、2026年6月以降の経営計画を立てることが、適正運営事業者にとっての確実な追い風となります。

    訪問看護業界は、2026年改定を機に、新しい段階に入ります。質の高い訪問看護を提供する事業者が、適切に評価される制度設計の方向性は明確です。経営者・管理者として、新制度を正確に理解し、自ステーションの運営に確実に反映させていく姿勢が、これからの経営を左右することになります。

    HokanPress編集部では、2026年改定の最新情報を、引き続き継続的に発信していきます。

    #訪問看護#訪問看護物価対応料#2026年改定#物価高騰対応#新設加算#厚生労働省#経営
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    執筆者

    HokanPress編集部

    医療・看護・介護の多職種チーム

    訪問看護・在宅医療の現場に携わる多職種チーム

    HokanPress編集部は、訪問看護・在宅医療の現場に実際に携わる多職種チームで構成されています。看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士、介護支援専門員(ケアマネジャー)が所属。それぞれの専門分野で培った臨床経験と専門知識をもとに、医療・看護・介護従事者の実務に役立つ情報を発信しています。記事は必ず該当分野の有資格者が執筆または監修し、公的統計データや学会発表・厚生労働省の公表資料など、信頼性の高い情報源に基づいて作成しています。

    保有資格: 看護師 / 理学療法士 / 作業療法士 / 言語聴覚士 / 医療ソーシャルワーカー / 管理栄養士 / 介護支援専門員

    ※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています

    2026年5月31日