利用者は3倍に増えたのに、担い手は看護師全体の5%に満たない——10年後、誰が訪問看護を担うのか|必要な13万人に対し現状は約6万人、しかも進む高齢化

Summary
訪問看護には、静かに進行する危機がある。利用者はこの10年で約3倍に増えたのに、それを担う看護師は、看護師全体のわずか5%に満たない。2025年に必要とされる13万人に対し、現状は約6万人。しかも、訪問看護師は40代が7割を占め、高齢化が進んでいる。需要の急増、担い手の不足、そして高齢化。この三重の危機を、宮木が数字で直視する。10年後、誰が訪問看護を担うのか。
訪問看護には、静かに、しかし確実に進行している危機がある。
需要は、爆発的に増えている。それなのに、それを担う看護師が、圧倒的に足りない。しかも、いま現場にいる訪問看護師は、高齢化している。需要の急増、担い手の不足、そして高齢化。この三つが、同時に進んでいる。
これは、精神論で乗り切れる話ではない。数字が、はっきりと危機を示している。本稿では、その数字を直視したい。突きつけられるのは、「10年後、誰が訪問看護を担うのか」という、重い問いである。
利用者は、10年で3倍に増えた
まず、需要の側から見る。
訪問看護のサービスを受けた利用者の数は、急激に増えている。厚生労働省の調査によれば、2011年に約23万人だった利用者は、2021年には約59万人に達した。わずか10年で、およそ3倍である。
背景にあるのは、言うまでもなく、高齢化と在宅医療の推進だ。住み慣れた自宅で療養し、最期を迎えたいという人が増え、それを支える訪問看護の需要が、それに比例して膨らんでいる。
そして、この需要の増加は、まだ途中である。団塊の世代が75歳以上となる2025年を経て、2040年には、その団塊の世代が90歳以上に、さらにその子ども世代も65歳以上になる。少子高齢・多死の時代は、これからピークを迎える。訪問看護に求められる役割は、今後さらに大きくなっていく。需要のグラフは、まだ上を向いている。
だが、担い手は「5%」に満たない
一方で、その需要を担う看護師の数は、どうか。ここに、深刻なギャップがある。
厚生労働省の調査によれば、2020年時点で、訪問看護ステーションに就業している看護師は、約6万人だった。日本には、看護師が全体で128万人ほどいる。そのうち、訪問看護に従事しているのは、約6万人。つまり、看護師全体の、5%にも満たないのである。
これほど需要が伸びているにもかかわらず、看護師の20人に1人しか、訪問看護に携わっていない。この需給のギャップは、危機的と言うほかない。
目標との差も、大きい。訪問看護に関する3つの団体が策定した「訪問看護アクションプラン2025」では、2025年までに、訪問看護師を15万人に増やすことが目標として掲げられていた。また、厚生労働省の試算では、2025年に必要となる訪問看護の職員数は、13万人とされている。いずれの数字に照らしても、現状の約6万人とは、大きな隔たりがある。必要な数を満たすには、今の2倍以上の担い手を、新たに確保しなければならない計算になる。これは、容易な目標ではない。
しかも、担い手は高齢化している
需要と担い手の数のギャップだけでも深刻だが、問題はもう一段深い。いま訪問看護を担っている、その担い手そのものが、高齢化しているのだ。
厚生労働省のデータによれば、訪問看護師は、40代の割合が7割を占めるとされている。別の調査でも、訪問看護師の平均年齢は45歳を超えていた。これは、病院に勤める看護師と比べても、高い水準である。訪問看護の現場は、40代以上のベテランによって、支えられている。
裏を返せば、20代や30代の若手、そして新卒の看護師が、訪問看護には少ない、ということだ。


