賃上げの原資は、補助金で作れる——訪問看護が使える「業務改善助成金」、令和8年度は9月1日開始|最大600万円、ただしコースは50・70・90円に再編、一般車両は対象外に

Summary
最低賃金が毎年大きく上がる中、「賃上げの原資が出ない」という声は、訪問看護の現場でも切実です。そんな事業所を支える制度が、業務改善助成金です。賃金を引き上げ、あわせて生産性向上の設備を導入すると、その費用の一部(最大600万円)が助成されます。令和8年度は9月1日申請開始で、コースの再編や一般車両の対象外化など大きな変更がありました。制度の中身と、申請で失敗しないための要点を、HokanPress編集部が整理してお届けします。
最低賃金は、毎年大きく上がっています。全国の加重平均は、令和7年度に1,121円まで上昇しました。地域によっては、さらに高い水準です。
賃金が上がること自体は、働く人にとって望ましいことです。けれど、それを支払う事業所の側からは、「賃上げの原資が出ない」という声が上がります。訪問看護も例外ではありません。看護師の確保と定着のために賃金を上げたい。けれど、報酬は公定価格で決まっており、値上げで原資を作ることはできない。このジレンマは、訪問看護の経営に重くのしかかっています。
この「賃上げの原資」の問題に、正面から応える制度があります。厚生労働省の業務改善助成金です。今回は、この制度の中身と、令和8年度に何が変わったのか、そして申請で失敗しないための要点を、整理してお届けします。
業務改善助成金とは、何か
業務改善助成金は、二つのことを同時に行った中小企業・小規模事業者を助成する制度です。
一つは、事業場内最低賃金を、一定額以上引き上げること。もう一つは、生産性の向上や労働能率の増進に役立つ設備投資などを行うことです。この二つをセットで実施すると、その設備投資などにかかった費用の一部が、助成されます。
助成額は、最大で600万円。助成率は、かかった費用の最大5分の4です。訪問看護のように、賃上げの必要に迫られながら、同時に業務の効率化にも取り組みたい事業所にとって、相性のよい制度だと言えます。
ここで、「事業場内最低賃金」という言葉を押さえておきます。これは、その事業場で最も低い時給のことです。地域別最低賃金が、その地域の全事業所に適用される下限であるのに対し、事業場内最低賃金は、個々の事業所の中で実際に最も低い賃金を指します。業務改善助成金は、この事業場内最低賃金を引き上げることを、助成の条件にしています。
令和8年度、大きく変わった
この業務改善助成金は、令和8年度(2026年度)に、いくつもの重要な変更が加えられました。前年度に申請したことがある事業所も、改めて確認しておく必要があります。
第一に、申請の開始時期です。令和8年度の募集は、9月1日開始とされています。申請の期限は、地域別最低賃金の発効日の前日、または11月末の、早いほうとされています。つまり、受付期間は限られており、この記事が出ている時点では、開始が目前に迫っている、ということになります。
第二に、賃上げのコースが再編されました。従来は、30円、45円、60円、90円の4コースでしたが、令和8年度は、50円、70円、90円の3コースに整理されました。最低でも50円の賃上げが必要になった、ということです。引き上げる額と、引き上げる労働者の人数によって、助成の上限額が変わる仕組みは、これまでと同じです。
第三に、助成率の基準が変わりました。従来は、引き上げ前の事業場内最低賃金が1,000円未満かどうかが境界線でしたが、令和8年度からは、この基準が1,050円に引き上げられました。事業場内最低賃金が1,050円未満であれば助成率は5分の4、1,050円以上であれば4分の3となります。
第四に、対象となる事業所の範囲が広がりました。従来は、事業場内最低賃金が地域別最低賃金との差額50円以内である事業所に限られていましたが、令和8年度はこの制限が廃止されました。改定後の地域別最低賃金額を下回っている事業場内最低賃金であれば、対象になります。これまで「最低賃金より51円以上高く払っているから対象外」だった事業所も、対象に含まれる可能性が出てきました。


